石本さんと安藤は、取材のこの日、初めて出会いました。宮城県南三陸で女性支援活動をされている事から、お話は自然に4月に母となりスケーターとして競技
に復帰する安藤と「ワーキングマザーとその環境」の話に発展してその内容は、本取材(対談形式)より抜粋して
8月30日東洋経済WEB に掲載して頂きました。こちらもお読み頂ければと思います。
Reborn
Gardenでは、被災現地で今も支援活動されている方にお話を聞き、お読み頂いた皆様に現地へ関心を持ち続けて頂く事を目的としています。
主な内容を数回に分けてお届けする予定です。
・石本さんの活動のきっかけ
・コミュニティビジネス・スモールビジネス支援のはじまり~これまで
・活動を継続する原動力
・女性支援~女性視点へ
・取材(対談)後の感想
■特定非営利団体ウィメンズアイ 代表理事石本さんの活動のきっかけ
『最初から何かを作ろうとか、NPOを作ろうと思っていなかった。ただ、その時に必要だと思った活動がだんだん形になっていきました。』 石本
----ウィメンズアイさんは、東日本大震災直後から三陸沿岸部で「RQ被災地女性支援センター」として活動を始められ、とても充実した活動をされている皆さん。
きちんと丁寧な現地調査をし、女性視点で何をされるべきか当初から計画を持ってやってこられたという印象があります。
石本:ありがとうございます。そんな立派なことではないんですけどね。震災があった時に私
は東京にいたんです。普通にOLをしていて、金融の会社で働いていました。当時は自分も仕
事をしているし、社内で寄付集めをしたり・・。自分たちで出来る範囲でしていました。ソー
シャルワークに興味も深く、もともとその年に仕事を辞めて、途上国支援をしようと思ってい
ました。そこに震災が日本で起きて、会社が私の意思を受け止めてくれて4月末には退職できま
した。そして5月から「RQ市民災害救援センター」という団体で震災ボランティアをして、そ
こに集まってきた人たちと出会って、今の女性支援の団体というのがだんだん出来て来たんで
すね。最初から何かを作ろうとか、NPOを作ろうと思っていなかった。ただ、その時に必要
だと思った活動がだんだん形になっていったっていう感じですね。勉強しながら、何もわから
なかったから、リサーチをしたというのも私たちが知らないから。知らないのに支援、支援っ
て言っても絶対だめだし。向こうにいるとたとえば、物資を送ることはすごく重要な事なんで
すけど、ちゃんと考えて、準備をしてやらないと逆に迷惑になることがあるんですよ。
私たちはそういったことを現場で自分の目で見てきました。
東京とか離れた場所にいるとわからないことを私たちが発信していかなければと思って。
それが形になってきたという感じです。
■コミュニティビジネスのはじまり
まずは、RQ被災地女性支援センター(ウィメンズアイさんの当初の名前)公式VTRをご覧ください。
『避難所廻りをした時に、昼間に残っているのは高齢の女性たちばかりでした。見知らぬ人としゃべるのが苦手でも、編みものをするという共通の話題の中で仲良くなれる。』石本
-----コミュニティビジネスってどんなふうに始まったんですか?
石本「最初は避難所とか仮設住宅とかの現状から女性のサポートと集う場所づくりをしました。
避難所廻りをした時に昼間に残っているのは高齢の女性たちばかりでした。若い人や男性は外
に出て行っていて、取り残されるのは70代80代の女性たちなんですね。この年代の人たちって
見知らぬ人としゃべるのが難しい人が多い」
安藤「はい。」
石本「ヒアリングして回っていた時に、この年代の方は編み物やお裁縫が好きと口にする方が
多くて、そういう好きな事をやりたいって聞いていて。好きな事なら皆で集まって話をして盛
り上がるかなと思って。で、やってみたら本当にそうで。見知らぬ人でも編み方を教えてもら
ったり。教えたり。作って、”すごいね”ってほめあったり。そういうので共通の話題で仲良くな
れる。で、そういう場づくりが必要だなと思って始めました。その中で、小さい仕事としてや
りたいというグループもいくつか定着しました。」
”めかぶ”を見る安藤(一番気にいったようでした)
石本めぐみさん
塩本美紀さん
(安藤が並べられた商品を見ているのを見て)
石本「それ、めかぶです!」
安藤「めかぶ?可愛い!!」
石本「はい、そういうのを楽しく編んでくださっています。」
安藤「すごく、しっかり出来ていますね!」
塩本(ウィメンズアイ スタッフ)「はい、どんどんうまくなられました。」
石本「最初はけっこう苦労されてた。」
(一同でしばし、編んだもんだらを見て・・・)
安藤「ウィメンズアイさんのフェイスブックを見たときにキャラが増えてる!って思って。」
石本「はい。この子たち(エコたわし”編んだもんだら”)のすごいところは編み物って
若い人たちの方が上手いし、早いのは、そうなんですけれども。でも70代80代の方でも出来る
よっていうのがコンセプトだったんで。本当にどんどんうまく成られて。最高齢は82歳。」
塩本「しかも80の手習いで始められた方も。」
一同「へぇ~~っ。」
安藤「映像見たときにとても皆さん表情が良くって。」
石本「はい。そうなんです。」
-----商品開発は誰がやられたんですか?
石本「立ち上げ当時のメンバーのひとり、足立さんがこういうのが好きで、地元の特産物、た
とえば、志津川ってところは蛸が有名。本吉はマンボウが有名とか。浜ごとで有名なもの
を商品化してみんなで編むっていうアイデアを持っていて。」
塩本「その彼女のゴールがコミュニティビジネスっていうのがあったんですね。ある程度形に
なってきた時点での事業化を目指していた。現在は、”編んだもんだら”は、ウィメンズアイから
独立して足立さんの『さざほさ』という事業の一環で行っています。」
「リーダー育成という思い込みがありました。経験から学んだのは、リーダーではない役割が必要な場合もあること。」石本
■リーダーというよりコーディネーター
----現地の集団の中から、リーダーを作るって大変ではなかったですか?
石 本「最初はリーダー養成をしようとして失敗しました。地元の女性リーダーが育って地元に移管していく枠組みがよいと思い込んでいて、それが大きな間違い
だったんです。グループの中で一歩前に立ってリーダーシップを取ると、思わぬところで足を引っ張られるようなこともあるんです。」
安藤「足を引っ張る人は、賛同されていない方ですか?同じ方向性で動いていない?同じ気持ちを持っている中でそれがあるのですか?」
石 本「両方あるように感じます。みんなで仲良くっていうふうには、いかないこともある。誰かがなんであの人が上に立つの?って言いだすこともある。それから
リーダーシップをとろうとする人が少ないこともある。そういう中で無理やりリーダーを作ろうとするのは現実に沿ってはいなかったんです。」
安 藤「私は、リーダーはいらない派だったんです。アイスショーでもリーダーっていると思うんですけど。この編んだもんだらの活動もみんなで作りあげるものだ
からということで始まったと思うから。リボーンガーデンっていうショーをやったときも仲間に恵まれたのもあってみんなが自分をヘルプしてくれました。アイ
デアは出しましたが、主催者だからトリを取るとかもしなかったし、リーダーってなんていうのか自然に出来てくるものだと思う。」
石本「そうなんです!本当の意味でのリーダーって別に上に立つだけではなくて皆とおんなじ位置にいることもある。お世話係っていうかコーディネーターっていうか。みんなが動きやすいように調整をする人。そこが本当に必要な人なんだと思いました。」
安藤「全体を見る意識は必要ですけど、上からっていうのではなく、そういう役割行動をする人がいるから皆が同じ方向を向いてくれるのかなっていうのは、その経験の中から学びました。」
石本「そうですね。コーディネーターとか取りまとめをする人は必要。だからそういう人が動きやすいものを私たちは作っていきたいです。」
■女性支援から女性視点へ
-----これからのウィンメンズアイさんの活動は?期限は決めていますか?
石本「女
性支援の段階から女性視点への段階へ移行しています。ヒエラルキーのない、柔らかくててしばりのない活動。復興の中でも私たちの生活の中でももっと作って
行きたいと思っています。それは防災を考える時もそうだし、やらされるのではなく、日常的に楽しいものを作り上げて行くというのが、”女性ならではの視点
のよさ”かなって思っています。」
塩本「そういう意味で期限は決めていないんですよ。活動の場所はどうなるかわからないけれど。」
石本「必要な事をその場でやっていくということです。私たちがここまでって決めることでもないし。」
安藤「大変な事だと思いますが、そういう風に出来る人って少ないから良いなぁって思います。」
----今日の感想は
石本「本当に話たいと思っていた大切なことを模索しながら話すことが出来て良かったです。なんか褒めて頂いたような気もして。」
----本当に素晴らしい活動だと思います。
石本「私たちは言いたいことを言いながら活動していて、それなりにぶつかることもある。
で
も、ぶつかること=けんかではない。人を否定するわけでもないし。今日、話をしていて私たちが変だなとか難しいなと思って活動していた事って、私たちだけ
が思っていたのではなかった。感覚的に活動をしてきて、私たちは拓いてきたつもりなんですけどもここにも安藤美姫さんっていう、拓いている人がいるなぁっ
て思いました。」
安藤「女性の立場が良くなっていく第一歩だと思います。」
石本「そう。それをやって行く人たちがいなくてはいけないし。大きな視野から見れば美姫さんが仰ったようにアメリカとか世界に行けばそうでない見方ってすごくたくさんある。」
安藤「力不足で・・。」
石本「そんなことないですよ。お互い頑張りましょうって思いました。」