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アステカの神話Ⅳ

アステカの神話Ⅳ AZTEC MYTHOS IV

by David Schwartz
第五の
太陽を選ぶときがきたとき、神々は篝火を焚き、その周囲に立って次は誰にするべきかを話し合った。どの神も新しい太陽になりたがらなかったため、彼らは不運の神ナナワトルを選んだ。ナナワトルは尻込みしたが、他の神々は彼に対してこう言った。「恐れることはない。もはや、あなたは貧相でも薄弱でもない。あなたは太陽として空を駆け巡るのです。」そうして、ナナワトルは目を閉じて篝火に跳びこんだ。彼の肉体が完全に焼き尽くされると、彼は東の地平線に達するまで地底を旅した。
太陽が地平線の彼方に姿を現したとき、それは大きく眩かったが、すぐに止まってしまった。神々はハヤブサを送って何が起こったのか確かめに行かせた。戻ってくると、ハヤブサは集まっている神々に、太陽は彼らが彼ら自身を生け贄にし、彼らの心臓をこの新たな太陽に捧げるまでは昇ることを拒否しているのだと言った。怒り狂った神々は、恐るべき戦の神、“明けの明星”トラウィスカルパンテクトリを呼び出した。トラウィスカルパンテクトリは彼の弓を手に取り、ナナワトルに向けて矢を射たが、新たなる太陽はそれを上手にかわした。続いてナナワトルが彼自身の弓を手に取り、燃え盛る矢でもって明けの明星を射た。負傷したトラウィスカルパンテクトリは死者の国に落ちた。
神々は抵抗するにはこの太陽が余りに強大であることに気づき、彼ら自身で1人ずつ心臓を生け贄に捧げることにした。とうとう満足したナナワトル―いまやトナティウと呼ばれるようになった―は天空を横切る自らの旅を開始した。
生け贄は、中央アメリカ高地における根源的な要素である。強力ではあっても、神々は全能ではない。世界を作り出そうと努力をし、それが順調に運行し続けるように努力をし続けている。太陽光、雨、そして他のあらゆる神々からの贈り物と引き換えに、人間は彼らに餌食を与えなければならない。生け贄によって与えられる滋養なしでは、神々は衰弱し、耄碌してしまい、宇宙はゆっくりと停止してしまうことになる。
アステカ人は毎日習慣的に動物を生け贄に捧げられており、動物たちはただこの目的のためだけに育てられた。ウズラやハチドリのような鳥は最も一般的であった。元々人間に食べられるために育てられていた犬もまた、神々のために生け贄に捧げられた。他の儀式においては、代わりとして神官たちが陶器を儀式的に破壊したりもした。
同様に、人間の血を捧げる行為も行なわれた。悔悛者はマゲイ(訳注:リュウゼツラン科植物)の棘で彼らの肉を突き刺し、そして血まみれの棘を神々への捧げ物として編んで作った容器で受けるのである。ほとんどあらゆる者が―老いた者も若い者も、一般人も貴族も―一度ならずこの儀式を行なう必要に迫られる。神官たちは特に、彼らの禁欲的な生活スタイルの一部として自傷行為を行なっていた。
もちろん、アステカ人は人間の生け贄を捧げることで最も有名である。中央アメリカの部族すべてがときどきこの儀式を行なっていたが、アステカ人は人間を生け贄に捧げる行為をさらなる堕落の新たなる段階へと引き上げたのである。他の都市国家が神々をなだめるためだけに捕虜を生け贄に捧げたのに対し、テノチティトランにおいては、彼らは政治的な道具として生け贄の儀式を利用したのである。アステカ人は征服した都市国家に対して生け贄の人身御供を提供するよう要求し、彼らの力を見せつけ、彼らの守護神格であるウィツィロポチトリに力を与えるために大量の生け贄の儀式を挙行したのである。(魔法的な触媒としての生け贄のルールについては、成人指定の本である『不浄なる暗黒の書』で言及されている。)

アステカの神格

アステカの神話Ⅰ~Ⅳ

信仰系クラス用記事におけるアステカの神話シリーズはこれで終わりである。創造者ケツァルコアトルと破壊者テスカトリポカは#352に、雨の神トラロックと美の女神チャルチウトリクエは#354に、そして大地の女神シワコアトルとアステカの守護神格ウィツィロポチトリは#356において詳細を紹介している。これらおよびそれ以外のバックナンバーについては次のアドレスにおいて購入できる:paizo.com/backissues
同時に、これら4つの記事はアステカの宇宙観における5つの太陽、あるいはその本質をなぞるものである。暗い影のようなテスカトリポカの薄暗い太陽から、ケツァルコアトルの強奪者の役割、トラロックの終わるのが早すぎた統治時期、雨で水浸しになったチャチウトリクエの時代、そして最後に、トナティウの統治下にある現代までである。

出典:

『Dragon #358』p.88

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最終更新:2022年08月10日 01:48
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