ソチ五輪出場へ安藤美姫に今、必要なもの by 元フィギュアスケーター 中庭健介

ソチ五輪出場へ安藤美姫に今、必要なもの
by 元フィギュアスケーター 中庭健介
http://www.athlete-journal.com/winter/kensukenakaniwa20131015/
http://www.athlete-journal.com/winter/kensukenakaniwa20131015/2/
スクショあり
内復帰第1戦目の印象は、良い意味でも悪い意味でも私の想像通りだった。

まず初日のショートプログラムですが、9月にドイツで行われたネーベルホルン杯と構成内容は変わっていなかった。ジャンプに関しては問題なく、質と高さ は健在で、存在感もあった。さすが世界チャンピオンだと思いました。ただ試合から離れていたので、丁寧に跳ぼうとしていた感じが見て取れ、ダイナミックさ に欠けていましたね。

スピンに関してはちょっと厳しいなと。根本的なレベルが取れていないし、回転も遅いので、出来栄え点のほうでもプラスがもらえない。スピンだけの改善であと3点はもらえていたと思う。

スピンを改善するだけでもっと点数は上がるはず。その中でもレイバックスピンが一番大切。女子の場合、ルール上、必ずレイバックスピンを入れないといけ ないので、必須のスピンです。今回、安藤選手は明確にレベル「4」を狙いにいっていない。最大、「2」から「3」の構成だった。レイバックに関してはきっ ちりやるべき。他のスピンは逃げ道があるが、これだけはありませんから。

世界のトップと比べると、動きのしなやかさはあるが、速さがないのでどうしても単調に見えてしまう。足元だが、ブレードに対する乗りは良かった。だがブレードを深く使うには至っていない。動きに高低がなかったので躍動感に欠けるという印象が残ってしまう。

ショートはまずまずまとめてきた感じがあったが、フリーはまとめようとして、それが出来なかった。積極的に行って失敗したのなら次につながるが、ジャンプを置きにいった感じだった。目に見えて後半に勢いがなかったように見えた。心配のあるフリーだった。
6分間滑走から少し重そうな感じがあって浮きが足りなかったり、回転が足りなかった。自分でも納得のいかないような感じだった。入口2つのジャンプは成功に見えたが、少し回転が足りなかった。これが精神的に影響したのか、しっかりやらなくてはという気持ちが裏目に出た。

ジャンプは確実性を求めたものだった。点数の高いジャンプは当然リスクが高い。内容も難しく失敗する可能性もある。失敗すれば後半、足が止まってしま う。後半は目に見えて止まっていた。スピード感もなく、動きも鈍く動けていない感じだった。本来のキレが見られなかったのは残念だ。後半は印象に強く残る ので、動ききれないと緩んで終わってしまう。そうすると最後の感動が薄れてしまう。

懸念されていたプログラムが出来るのが遅かった。それも要因のひとつ。通常は、6月ぐらいまでにはプログラムが出来上がり、そこから取り組み始める。安 藤選手の場合、プログラムが出来たのが8月。普通の選手よりも2カ月遅い。少ない練習時間で完成度を高めていかなくてはならない。もう少し時間があれば、 展開もまた違ったであろう。

11月の東日本選手権までに2つの課題をクリアする必要がある。フリーの後半に動ききることと、細かいスピンのチェック。フリーの後半に関してはスタミ ナ強化が絶対。そうすれば、うしろの滑りも良くなるし、後半のジャンプの成功率もあがる。足りなかったコンビネーションも補うことが出来る。

安藤選手の実力からいえば、全日本選手権の出場は間違いないだろう。ソチ五輪に出場するためには、全日本選手権で結果を残さなければならない。明確な条件は分からないが、優勝することが条件となれば、厳しいと言わざるをえない。

優勝候補の浅田選手は200点近くを出す。浅田選手に続く鈴木選手、村上選手も世界トップクラス。日本の女子のレベルは世界トップなので、日本で勝つイ コール、世界で勝つということ。日本は他の国と比べものにならないほど代表争いがし烈だ。もちろん、安藤選手もそれは承知の上だろう。

これだけ世間の注目が集まる中での試合にも安藤選手からは緊張や気負いは感じられなかった。もしかしたら重圧に押しつぶされそうになっていたのかもしれ ないが、そんな様子はおくびにも出さなかった。世界チャンピオンとしてのプライドもあるのだろう。常に堂々としていたし、今回の結果を受けて自分なりの分 析もしていた。

出産のため復帰直前の6カ月間は、全くスケートをしていなかったという。そう考えると復帰後すぐに150点近くをたたき出すのは驚異的でもある。ただそ れが代表選考に加味されることはない。安藤選手がソチ五輪の代表をつかみとるには、ただひとつ、この短い期間ではっきり結果を残すことしかない。

中庭健介(なかにわ・けんすけ)1981年10月15日、福岡県福岡市出身。8歳からフィギュアスケートを始める。4回転トウループを武器に2002年全 日本選手権で3位に入り注目を浴びる。2003年ユニバーシアード大会3位。2004年全日本選手権2位。2005年全日本選手権3位。国際大会ではオン ドレイネペラメモリー大会2連覇。2010-2011シーズンを最後に引退。現在は指導者として幅広く活躍。
 

 

最終更新:2013年10月16日 23:43