教育実習なしの教員免許

教員免許を取得するには、通常、2~4週間の教育実習に行く必要があります。
しかし、社会人がそれだけの連続した休みを取ることはほぼ不可能で、仕事をやめるしかないというのが現状です。

そこで、確実性は下がりますが、教育実習なしで教員免許をとる方法をまとめます。
なお、限定的な方法ですので、対象が限られ、すべての免許は取得できません。

1.種類別まとめ

単位数は法令上の単位数であり、これまでの卒業大学等における修得単位や、これから修得しようとする大学等の開設科目によって増減します。
誤りの無いように努めていますが、必ず免許を取得しようとする教育委員会や単位を修得しようとする大学等に事前相談してください。

区分 免許状 前提となる資格等 前提となる経験 取得方法 根拠 備考
幼一免 学士及び保育士 保育士等実務3年 大学で8単位 免許法附則18項 H27~R6年度限定
幼二免 保育士 保育士等実務3年 大学で8単位 免許法附則18項 H27~R6年度限定
保育士実務3年 教員資格認定試験 免許法16条の2
小二免 高卒等 (不要) 教員資格認定試験 免許法16条の2
中二免(職業) 第一級総合無線通信士
第一級陸上無線技術士
無線通信の実地3年 申請のみ 施行法2条1項20号の2ロ アマチュア無線局経験不可
三級海技士(航海)
三級海技士(機関)
船舶の実地5年 申請のみ 施行法2条1項20号の4 船橋当直限定/機関当直限定不可
中二免(職業実習) 職業実習に関する学科で学士 その学科に関する実地1年 申請のみ 免許法別表5 職業実習に関する学科=農業/工業/商業/水産/商船に関する学科
大学の職業実習に関する学科に2年在学 その学科に関する実地3年
中二免(音楽/美術) 幼一免/幼二免
小一免/小二免
高一免
(不要) 大学で22単位 免許法別表1
施行規則2条1項の表備考11号
施行規則4条1項の表備考9号
前提の幼一免/幼二免を、別表1により取得した場合で、
単位に加え介護等体験が必要
前提の小一免/小二免を、別表1により取得した場合
前提の高一免を、教育実習を3単位修得した上で別表1により取得した場合で、
単位に加え介護等体験が必要
中一免(音楽/美術) 幼一免
小一免
高一免
(不要) 大学で44単位
中二免(※他の教科) 中二免 (不要) 大学で13単位 免許法別表4 上記のいずれかで中二免を取得した後
中二免(職業) 中二免及び
第一級総合無線通信士
第一級陸上無線技術士
(不要) 申請のみ 免許法別表4
昭和29年改正法附則15項
中二免及び
第二級総合無線通信士
第二級陸上無線技術士
無線通信の実地2年 アマチュア無線局経験不可
中二免及び
三級海技士(航海)
三級海技士(機関)
(不要) 船橋当直限定/機関当直限定不可
中臨免(職業) 第一級総合無線通信士
第一級陸上無線技術士
(不要) 申請のみ 施行法2条1項20号イ
第二級総合無線通信士
第二級陸上無線技術士
無線通信の実地2年 申請のみ 施行法2条1項20号ロ アマチュア無線局経験不可
三級海技士(航海)
三級海技士(機関)
(不要) 申請のみ 施行法2条1項20号の3 船橋当直限定/機関当直限定不可
高一免(工業) 大卒等 (不要) 大学で59+8単位 免許法別表1
施行規則5条1項の表備考6号
第一級総合無線通信士
第一級陸上無線技術士
無線通信の実地3年 申請のみ 施行法2条1項20号の2ロ アマチュア無線局経験不可
第一級総合無線通信士
第一級陸上無線技術士
教育事務の実務5年 大学で45単位 免許法別表3
免許法附則4項
施行法2条1項20号イにより高臨免(工業)取得の上申請必要
単位修得は高臨免(工業)取得後
経験年数は無線免許取得後
施行規則11条1項の表備考3号、施行規則12条により大卒等で3年25単位に低減
免許法別表3備考7号により経験年数で単位の減可(大卒かつ経験6年以上の場合10単位)
高一免(商船) 三級海技士(航海)
三級海技士(機関)
船舶の実地5年 申請のみ 施行法2条1項20号の4 船橋当直限定/機関当直限定不可
高一免(情報) 高卒等? (不要?) 教員資格認定試験 免許法16条の2 R6以降実施予定
高一免(○○実習) ○○実習に関する学科で学士 その学科に関する実地1年 申請のみ 免許法別表5 ○○=看護/家庭/情報/農業/工業/商業/水産/福祉/商船
高一免
(数学/理科/音楽/美術/工芸
/書道/農業/商業/水産/商船)
幼一免
小一免
中一免
(不要) 大学で45単位 免許法別表1
施行規則2条1項の表備考11号
施行規則5条1項の表備考5号
前提の幼一免/小一免/中一免を別表1により取得した場合
高一免(※他の教科) 高一免 (不要) 大学で24単位 免許法別表4 上記のいずれかで高一免を取得した後
高一免(工業) 高一免及び
第一級総合無線通信士
第一級陸上無線技術士
(不要) 大学で6単位 免許法別表4
昭和29年改正法附則16項
高一免及び
第二級総合無線通信士
第二級陸上無線技術士
無線通信の実地2年 アマチュア無線局経験不可
高一免(商船) 高一免及び
三級海技士(航海)
三級海技士(機関)
(不要) 船橋当直限定/機関当直限定不可
高専免(工業/商船) 第一級総合無線通信士
第一級陸上無線技術士
三級海技士(航海)
三級海技士(機関)
無線通信等の実地の後、
教育事務の実務3年
大学で15単位 免許法別表3
免許法附則4項
施行法2条1項20号の2ロ又は20号の4により高一免(工業/商船)取得の上申請必要
単位修得は高一免(工業/商船)取得後
経験年数は無線免許取得後の経験3年経過以後又は海技免状取得後の経験5年経過以後
(つまり無線経験3年の後に教育事務経験3年必要)
高臨免(工業) 第一級総合無線通信士
第一級陸上無線技術士
(不要) 申請のみ 施行法2条1項20号イ
第二級総合無線通信士
第二級陸上無線技術士
無線通信の実地2年 申請のみ 施行法2条1項20号ロ アマチュア無線局経験不可
高臨免(商船) 三級海技士(航海)
三級海技士(機関)
(不要) 申請のみ 施行法2条1項20号の3 船橋当直限定/機関当直限定不可
特支 特支二免 第一級総合無線通信士
第一級陸上無線技術士
三級海技士(航海)
三級海技士(機関)
無線通信等の実地の後、
教育事務の実務3年
大学で6単位 免許法別表7
免許法附則4項
施行法2条1項20号の2ロ又は20号の4により高一免(工業/商船)取得の上申請必要
単位修得は高一免(工業/商船)取得後
経験年数は無線免許取得後の経験3年経過以後又は海技免状取得後の経験5年経過以後
(つまり無線経験3年の後に教育事務経験3年必要)
特支自教一免(理療) 医師免許 (不要) 申請のみ 免許法4条の2-2項
施行規則64条
-
特支自活一免(○○教育) 高卒等 (不要) 教員資格認定試験 免許法16条の2 R6以降当面休止
○○=視覚障害/聴覚障害/肢体不自由/言語障害
養教 養教二免 保健師 (不要) 大学で8単位 免許法別表2
看護師及び養教臨免 (不要) 大学で10単位 免許法別表6
栄教 栄教一免 普免及び管理栄養士等 (不要) 大学で2単位 免許法附則17項の表備考2号 現職の学校栄養職員に限る
栄教二免 普免及び栄養士

注意
幼=幼稚園教諭、小=小学校教諭、中=中学校教諭、高=高等学校教諭、特支=特別支援学校教諭、養教=養護教諭、栄教=栄養教諭、特支自教=特別支援学校自立教科教諭、特支自活=特別支援学校自立活動教諭

普免=専免/一免/二免、専免=専修免許状、一免=一種免許状、二免=二種免許状、臨免=臨時免許状

免許法=教育職員免許法(昭和24年法律第147号)、施行法=教育職員免許法施行法(昭和24年法律第148号)、昭和29年改正法=教育職員免許法の一部を改正する法律(昭和29年法律第158号)、施行規則=教育職員免許法施行規則(昭和29年文部省令第26号)

免許法別表5は都道府県により取扱いが大きく異なります。
臨免は、施行法によるものを除き、普免を有する者を採用することができない場合に限り授与されますが、都道府県により取扱いが大きく異なります(免許法5条6項)。

2.出身大学の学部学科や所持資格から考えた場合の免許状取得の例

2-1.工学系の学部学科の卒業者
出身の学部学科が、高等学校「工業」の課程認定がなされている可能性があります。
その場合、免許法別表1(施行規則5条1項の表備考6号適用)により、
教育実習なしで「高一免(工業)」の免許が取得できます。

そして、「高一免(工業)」の取得後、必要な方は、
免許法別表4により、「数学」「理科」「英語」等の免許状を取得することが可能です。
免許法別表4に必要な単位については、通信大学等により単位を修得します。

出身大学に、「高一免(工業)」の「学力に関する証明書」を請求し、
都道府県教育委員会に相談してみてください。

単位修得の例:
①工業の関係科目55単位、職業指導(工業)4単位、施行規則第66条の6に定める科目8単位
②工業の関係科目27単位、職業指導(工業)2単位、教育の基礎的理解に関する科目等(教育実習・教職実践演習を除く)30単位、施行規則第66条の6に定める科目8単位
という形で、教育実習なしで取得できます。

なお、職業指導(工業)は、出身大学又は近くの大学の科目履修生として集中講義等で、
教育の基礎的理解に関する科目等(教科に関わらず修得可能)は、高校の認定課程のある通信大学で、
施行規則第66条の6に定める科目(日本国憲法、体育、外国語コミュニケーション及び情報機器の操作それぞれ2単位)は、放送大学も含めた各通信大学で、
追加で修得することもできます。
※職業指導(工業)は、「工業」の認定課程における「職業指導」の科目に限られ、「農業」や「商業」等の他の認定課程における「職業指導」の科目では修得したことになりません。


2-2.農学系、工学系、商学系、水産学系、商船学系、看護学系、家政学系、情報学系、福祉学系の学部学科の卒業者

大学卒業後、出身学科に関する企業等で1年以上実地経験があり、当該企業等から技術優秀の証明書の発行が受けられる場合は、
免許法別表5により、教育実習なしで「中二免(職業実習)」又は「高一免(○○実習)」の免許が取得できます。
なお、「中二免(職業実習)」は、教科「職業」に対応する農学系、工学系、商学系、水産学系、商船学系の出身学部学科の場合のみです。
「高一免(○○実習)」の教科「○○実習」は、農学系、工学系、商学系、水産学系、商船学系、看護学系、家政学系、情報学系、福祉学系の出身学部学科に対応し、
それぞれ「農業実習」「工業実習」「商業実習」「水産実習」「商船実習」「看護実習」「家庭実習」「情報実習」「福祉実習」となります。
そして、「中二免(職業実習)」又は「高一免(○○実習)」の取得後、必要な方は、
免許法別表4により、「数学」「理科」等の免許状を取得することが可能です。
免許法別表4に必要な単位については、通信大学等により単位を修得します。

免許法別表5については、都道府県教育委員会により、運用が異なります。
都道府県教育委員会が作成している教員免許取得の手引き等でも「まずは事前相談を」と記載されていますので、
該当しそうな場合は、都道府県教育委員会に相談してみてください。

手引き等の参考:
北海道、岩手県、茨城県、栃木県、群馬県、神奈川県、新潟県、大阪府、鳥取県、岡山県、愛媛県、福岡県、鹿児島県


2-3.無線通信士、海技士等の資格所持者(実地経験あり)
第1級総合無線通信士、第1級陸上無線技術士、3級海技士(航海、機関)の資格を有し、
当該資格に関する実地経験があり、企業等から技術優秀の証明書の発行が受けられる場合は、
施行法2条により、教育実習なしで「中二免(職業)」及び「高一免(工業)」又は「高一免(商船)」の免許が取得できます。
そして、「中二免(職業)」及び「高一免(工業)」又は「高一免(商船)の取得後、必要な方は、
免許法別表4により、「数学」「理科」等の免許状を取得することが可能です。
免許法別表4に必要な単位については、通信大学等により単位を修得します。

施行法2条については、都道府県教育委員会により、運用が異なります。
都道府県教育委員会が作成している教員免許取得の手引き等でも「まずは事前相談を」と記載されていますので、
該当しそうな場合は、都道府県教育委員会に相談してみてください。

手引き等の参考:
茨城県、新潟県、鳥取県、岡山県、愛媛県、鹿児島県


2-4.無線通信士、海技士等の資格所持者(大学等の勤務経験あり)
第1級総合無線通信士、第1級陸上無線技術士、3級海技士(航海、機関)の資格を有している場合は、
施行法2条により、「高臨免(工業)」又は「高臨免(商船)」が取得できます。
その上で、大学等の教育に関係する職での勤務経験がある場合は、
大学等の勤務経験と単位修得によって、免許法別表3により「高一免(工業)」又は「高一免(商船)」を取得できます。
ただし、勤務経験は無線資格又は海技士資格取得以降の経験に限られます。
そして、「高一免(工業)」又は「高一免(商船)」の取得後、必要な方は、
免許法別表4により、「数学」「理科」等の免許状を取得することが可能です。
免許法別表4に必要な単位については、通信大学等により単位を修得します。

施行法2条については、都道府県教育委員会により、運用が異なります。
都道府県教育委員会が作成している教員免許取得の手引き等でも「まずは事前相談を」と記載されていますので、
該当しそうな場合は、都道府県教育委員会に相談してみてください。

なお、施行法2条により、「高臨免(工業)」等と同様、「中臨免(職業)」が取得できますが、
R2年度現在、中学校「職業」の認定課程を受けている大学等が存在しないため、
別表3による「中二免(職業)」のための単位修得が原則できません。

参考:臨時免許状授与実績
免許状 教科 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 R1
中臨免 職業、職業指導、職業実習 3 2 2 0 1 0 0 1
高臨免 工業 194 191 151 178 179 161 146 161
商船、職業指導、○○実習 52 45 37 54 49 32 41 48
※教員免許状授与件数等調査による


2-5.海外の大学出身者等
免許法18条により免許状を取得できる可能性があります。
都道府県教育委員会により、運用が異なります。
都道府県教育委員会が作成している教員免許取得の手引き等でも「まずは事前相談を」と記載されていますので、
該当しそうな場合は、都道府県教育委員会に相談してみてください。

参考:免許法18条による免許状授与実績
H22 H23 H24 H25 H26
普通免許状 51 48 59 34 17
臨時免許状 176 169 182 175 220
特別免許状 0 0 0 0 10
227 217 241 209 247
※教員免許状授与件数等調査による




3.なりたい教員から考えた場合の免許状取得の例

3-1.幼稚園の教諭になりたい場合
教育実習なしでの取得は困難です。
保育士試験https://www.hoyokyo.or.jp/exam/により、「保育士」の免許を取得し、
まずは、保育所や認定こども園での勤務をお勧めします。
保育士試験の受験資格は大卒、短大卒等です。

3-2.小学校の教諭になりたい場合
教員資格認定試験により「小二免」を取得しましょう。
受験資格は20歳以上かつ高卒等です。
詳細は別ページで説明しています。


3-3.中学校の教諭になりたい場合
ア)農学系、工学系、商学系、水産学系、商船学系の学部学科の卒業者で、出身学科に関する企業等で1年以上実地経験がある場合は、
免許法別表5により「中二免(職業実習)」を取得しましょう。
または、
イ)第1級総合無線通信士、第1級陸上無線技術士、3級海技士(航海)、3級海技士(機関)等の資格を有し、当該資格に関する実地経験がある場合は、
施行法2条により「中二免(職業実習)」を取得しましょう。

その上で、通信大学等での単位修得し、免許法別表4により、
「中二免(数学)」や「中二免(理科)」、「中二免(外国語(英語))」など、
自身が教えたい教科の免許状を取得しましょう。

なお、都道府県によっては、教員採用試験の受験資格として、中学校と高等学校両方の免許状を求めるところもあるので、注意してください。

参考:免許法別表5、施行法2条等による「中二免」の免許状授与実績
中二免 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 R1
職業、職業指導、職業実習 40 44 32 35 22 24 27 31
※教員免許状授与件数等調査において、「その他(旧例の学歴資格によるもの、他教科の免許状の取得等)」のうち、「その他」の数


3-4.高等学校の教諭になりたい場合
ア)出身の学部学科が、高等学校「工業」の課程認定がなされていた場合は、
免許法別表1(施行規則5条1項の表備考6号適用)により、「高一免(工業)」を取得しましょう。
または、
イ)農学系、工学系、商学系、水産学系、商船学系、看護学系、家政学系、情報学系、福祉学系の学部学科の卒業者で、出身学科に関する企業等で1年以上実地経験がある場合は、
免許法別表5により「高一免(○○実習)」を取得しましょう。
あるいは、
ウ)第1級総合無線通信士、第1級陸上無線技術士、3級海技士(航海、機関)の資格を有し、当該資格に関する実地経験がある場合は、
施行法2条により「高一免(工業)」又は「高一免(商船)」を取得しましょう。

その上で、通信大学等での単位修得し、免許法別表4により
「高一免(数学)」や「高一免(理科)」、「高一免(公民)」、「高一免(外国語(英語))」など、
自身が教えたい教科の免許状を取得しましょう。

なお、都道府県によっては、教員採用試験の受験資格として、中学校と高等学校両方の免許状を求めるところもあるので、注意してください。

参考:免許法別表5、施行法2条等による「高一免」の免許状授与実績
高一免 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 R1
工業 67 75 51 65 46 52 52 59
商船、職業指導、○○実習 54 57 22 39 35 25 28 41
※教員免許状授与件数等調査において、「その他(旧例の学歴資格によるもの、他教科の免許状の取得等)」のうち、「商船、職業指導、○○実習」は「その他」の数

3-5.特別支援学校の教諭になりたい場合
教育実習なしでの取得は困難です。
ただし、教員採用試験では、相当する学校種・教科の免許があれば受験できる場合がほとんどですので、
受験したい都道府県の教員採用試験の要項を確認の上、
3-2~3-4を参考に、自身が教えたい学部・教科に相当する学校種・教科の免許を取得しましょう。

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最終更新:2023年02月25日 02:14