中学一年――11月(導入)

【中学一年 ―― 11月第一週】

京太郎「(さて…停学も解けて…久しぶりの学校だ)」

京太郎「(憧から聞いた話によると…大体、俺に対して同情的だって言うけど…どうなんだろうな…)」

京太郎「(正直…行くのはちょっと怖い)」

京太郎「(だけど…ここで逃げ出したら…俺だけじゃなく憧まで悪者にされる可能性があるんだ)」

京太郎「(そんな事…出来る訳ないよな)」

京太郎「(憂鬱なのは確かだけど…身体に気合入れて…よし…!)」パン

京太郎「(…行くか)」






京太郎「(結局、クラスの中じゃ腫れ物に近い感じだった)」

京太郎「(ま…当然だよな。幾ら言い訳しても俺が起こしたのは暴力事件なんだし)」

京太郎「(あいつが未だに入院してるって話も聞いたらそりゃ距離を取るのが当然だ)」

京太郎「(クラスの中で憧以外に仲の良い奴がいなかったってのも…関係してるんだろう)」

京太郎「(ま…それはある種、予想通りなんで…別に良い)」

京太郎「(元々、クラスで中が良いのなんて憧だけだったし、憧も俺の側にずっと居てくれたし)」

京太郎「(だから…問題は麻雀部の方なんだよな…)」

京太郎「(お咎めなしだったとは言え…大会前の大事な時期に問題を起こしたのは事実だし…)」

京太郎「(もし、やえ先輩にクラスの連中と同じ目で見られたらちょっときついかもしれない…)」





憧「…大丈夫?今日は辞めとく…?」

京太郎「いや…大丈夫だ」

京太郎「(…まぁ…本音を言えば逃げたいんだけどさ)」

京太郎「(でも、【来週は秋季大会】もあるんだ)」

京太郎「(エースの俺が顔を出さないままじゃ…オーダーだって組めない)」

京太郎「(なにより…ここで逃げたら俺は絶対に麻雀そのものから遠ざかってしまう)」

京太郎「(それに憧がどう思うかって考えたら…逃げられる訳がないよな)」

京太郎「(…やっちまった事はやっちまったんだ)」

京太郎「(仕方ないと受け止めて…今は…)」ガララ

京太郎「…失礼します」






モブα「あ…」

モブβ「…須賀…」

京太郎「お…おう」

モブα「停学…解けたんだな」

京太郎「あぁ…その…ごめん」

モブβ「いや…それは良いんだけどさ…ただ…」

モブC「おう、ちょっと待てや」

京太郎「え?」

モブA「須賀、ちょっと顔貸せよ」

モブB「あぁ、別に…すぐ済む話だからさ」

京太郎「う…」

京太郎「(やっぱ来るよな…この人たち…)」

京太郎「(今まで俺に嫌がらせしてきたこいつらが…俺が問題起こしたタイミングを見逃すはずがない…)」

京太郎「(そう分かってたけど…こうやって目の当たりにすると正直…憂鬱で胃が重い…)」

京太郎「(…だけど…相手は先輩で、次期レギュラー候補なんだ…)」

京太郎「(ついていくしか…ないよな…)」






モブA「ま…ここらで良いか」

モブB「そうだな。この辺なら声抑えときゃ邪魔は入らないだろ」

モブC「せやな」

京太郎「…それで…何の用ですか?」

モブA「そう身構えんなよ。聞きたい事があるだけだ」

京太郎「聞きたい事?」

モブB「お前の停学になった理由だよ」

モブC「女護る為にサッカー部の奴殴って停学になった言うんは本当なんか?」

京太郎「そう…です」

モブA「そうか」

モブB「やっぱりそうだったんだな」ニマァ

モブC「あぁ…これでわいらにも運が向いてきたってもんやなぁ」ニヤァ

京太郎「うっ…」





























モブA「よくやった須賀!!!!」

モブB「あぁ、偉いぞ須賀!!!!」

モブC「わいは信じとったで須賀ぁ!!!!!!!」

京太郎「…はい?」



































モブA「ん?何をキョトンとしてるんだ」

モブB「まさか嫌味言われるとでも思ってたのか?」

京太郎「う…いや…」

モブC「ま、しゃあないしゃあない。今までが今までやし」

モブA「そうだな。それにまぁ…俺達がお前の事嫌いなのは変わってないし」

モブB「目障りなのは目障りだからな。そこんとこ誤解すんなよ」

京太郎「え…?じゃあ…なんで?」

モブA「そんなもんアイツのした事が学校中に知れ渡ってるからに決まってるだろ」

モブB「女を食い物にするなんてゲスの極みだからな」

モブC「わいらは男、特にリア充は嫌いやけど、ゲスはもっと嫌いやからな」

モブA「端的に言えば俺達にしてみれば嫌いな奴がもっと嫌いなやつをぶちのめしてくれた訳だ」

モブB「その事をグチグチ言うほど性格腐ってねぇよ」










京太郎「あ、ありが…」

モブC「阿呆。礼なんか言うんやない」

モブA「今回の件で騒いだりしないってだけで俺たちは相変わらずお前の事が嫌いだ」

モブC「慣れ合うつもりはまったくない」

モブA「…ただ、まぁ…今回はあのいけ好かない王子様ぶちのめしてくれたのもあるしな」

モブB「その事で部の奴らから言われたらAを頼ると良い」

モブC「こんなんでも一応、部長やから睨みくらいは効かせられるやろ」

京太郎「あ、ありがとうございます」

モブA「だから、礼なんて言うんじゃないっての」

モブB「ほら、話は終わったからとっとと行け」

モブC「わいらはイケメンの顔見てると気分がむしゃくしゃするんや!」

京太郎「は、はい…」









憧「…どうだった?大丈夫!?」

京太郎「あぁ…大丈夫」

憧「…ホント?イヤミとか言われてない?」

京太郎「イヤミどころか…褒められた」

憧「え?」

京太郎「…んで…何か言われたらたよれって」

憧「嘘ぉ…」

京太郎「…そうだよな?そう思うよなぁ…」ウーン

京太郎「…ちょっと頬抓ってくれね?」

憧「…うん」ツネッ

京太郎「いへぇ…」

憧「…どう?」

京太郎「…夢じゃないらしい」

京太郎「そっか…あの人たち…ああいう性格ってだけで…心から悪い奴って訳でもないんだな…」
最終更新:2013年10月13日 15:33