小学六年生1月

【小学6年 ―― 1月】

京太郎「(あんな風にしずには言ったものの…)」

京太郎「(俺のもやもやは結局晴れないままだった)」

京太郎「(でも、こんな事憧に相談する事は出来なくて…)」

京太郎「(しずにだって…言えるはずがないもので…)」

京太郎「(受験っていう期限が迫れば迫るほど…少しだけ気まずくなって)」

京太郎「(忙しさを理由に…ちょっとだけ距離を取っちまった…)」

京太郎「(…おかしいな…この前まで…そんな事ないって…そう思ってたはずなのに…)」

京太郎「(俺達は何時までも一緒だって…そう思ってたはずなのに…)」

京太郎「(なんで…こうなっちまったんだろうな…俺)」ハァ

京太郎「……」

京太郎「……」

京太郎「…~~~っ!!あ~っ!くっそ!!!」ガバッ

京太郎「(部屋の中でウジウジしてても…答えなんか出るはずないだろうが!!)」

京太郎「(…はぁ。とりあえず気晴らしにどっか走ってこよう)」

京太郎「(最近、勉強だなんだってあんまり走れなかったしな)」






【阿知賀女学院】

京太郎「(…って…はは…なんでこっちに来るのかな…)」

京太郎「(まぁ、確かにここの坂は走るのには良い感じだけどさ)」

京太郎「(自然と身体が向かったのは…俺がここに愛着持ってるからなんだろうな)」

京太郎「(二年間…レジェンドに麻雀教えてもらって…玄や鷺森たちと知り合って…)」

京太郎「(色々あった…色々…あったんだよ…な…)」

京太郎「(だけど…今…それはなくて…)」

京太郎「(レジェンドがいなくなって…麻雀教室も消えて…)」

京太郎「(…今から覚えば…あの時からなんだろうな…)」

京太郎「(俺達が…あんまり顔を合わせなくなったのは…)」

京太郎「(勿論…年末だなんだって忙しくて…用事がないと会えなかったってのもあるんだと思う)」

京太郎「(でも…やっぱり俺たちを繋いでたのは…あの麻雀教室だったんだ)」

京太郎「(レジェンドの存在が…俺達を…あんなに仲の良い友だちに…してくれて…)」







京太郎「(…はは。何…落ち込んでるんだろうな)」

京太郎「(ま…折角だし…ちょっと麻雀教室の様子でも見てみるか)」

京太郎「(アレからまだ二ヶ月だけど…もしかしたら埃でも溜まっているかもしれないし…)」

京太郎「(気晴らしついでに掃除の一つでもしておいて…ってあれ?)」

京太郎「(…教室の鍵が外れてる?)」

京太郎「(嘘だろ…あんな立派な鍵つけといたはずなのに…)」

京太郎「(も、もしかして泥棒か!?確か…全自動卓ってすげー高いって聞くし…)」

京太郎「(くそ…!させるかよ…ここは俺にとって思い出の場所なんだ…)」

京太郎「(外からそーっと様子を伺って……うん。中に誰かいるな…)」

京太郎「(後は出入口チェックして…よし。こっちは締まってる)」

京太郎「(最後に武器…は、廊下に出てるロッカーから箒でも借りとくか)」

京太郎「(よし。じゃあ、準備も出来た事だし…いざ…突撃…!!)」



























京太郎「おい!お前、何やってるんだ!」バンッ
玄「ひゃうううぅぅぅ!?」ビックウゥゥ































京太郎「…ってあれ?玄?」

玄「…あれ?京太郎…君」

京太郎「お、おう。つか…お前、どうしてこんなところに?」

玄「えっと…お、お掃除?」

京太郎「掃除ってお前…」

玄「だ、だって…木曜日は私の当番だったし」

京太郎「当番って…あ、麻雀教室のか!?」

玄「うん」ニコッ

京太郎「うん…ってお前…」

玄「ほら、見て。雀卓だって綺麗にしてるしカーテンもお洗濯してるんだよ」

玄「何時だって…またここで麻雀教室を始められるように…」

京太郎「…玄…麻雀教室は…もう…」





玄「…うん。私だって分かってる」

玄「でも…もしかしたら…また皆が集まるかもしれない」

玄「もしかしたら…またここで皆一緒に麻雀出来るかもしれない」

玄「ずっと綺麗にしていたら…皆戻ってきてくれるかもしれない」

玄「そう思うと…どうしても…ね」

京太郎「~~…っ!」

京太郎「そんなの…出来る訳ないだろ…」

京太郎「…来年からは俺も憧も部外者で…ここにはもう来れなくて…」

玄「…うん」

京太郎「しずや鷺森…和は来るかもしれないけど…でも…それでも…部を作るには足りてないだろ」

玄「うん」

京太郎「…それなのに…こんな場所護ってても無駄だろ…!」

玄「…無駄じゃないよ」





玄「今、京太郎くんは来てくれた」

玄「偶然かもしれない。ただの気まぐれなのかもしれない」

玄「でも…そうやって箒を持ってるって事は…麻雀教室を護ろうって…してくれたんだよね?」

京太郎「それは…」

玄「それは…きっと同じ気持ちだと思う」

玄「穏乃ちゃんや憧ちゃん…灼ちゃんだって…」

玄「だから…もしかしたら他の子もまたここに来てくれるかもしれない」

玄「…その時までここを護るのが私の仕事」ニコッ

京太郎「…っ!」






京太郎「…馬鹿だ…」

玄「…うん」

京太郎「分かってんのかお前…そんなの…全部お前の想像に過ぎないんだぞ」

玄「…うん」

京太郎「旅館の仕事だって暇じゃ訳じゃないんだろ、それなのに…」

玄「でも…私…おねーさんだから」

玄「おねーさんで…ナンバーワンで…晴絵さんに皆の事お願いってそう言われたから」

玄「だから…私はずっとここを護るよ」

玄「例え誰も来なくても…誰かが来た時に安心出来るように」

玄「それが…私の役目だと思うから…」

京太郎「~~っ!!!」








京太郎「(結局、俺は玄の奴に何も言えなかった)」

京太郎「(あのまま逃げ帰るようにして教室を後にして…そのまま部屋へと閉じこもった)」

京太郎「(それはきっと…俺とアイツの覚悟の差が…あまりにも大きかったからなんだろう)」

京太郎「(流されるまま進学を決めた俺と自分の意思ではっきりと阿知賀の教室を護ると言った玄)」

京太郎「(今まで俺は…あいつの事を弱い奴だって…馬鹿な奴だってそう思ってた)」

京太郎「(でも…違ったんだな。…あいつは…強い奴だった)」

京太郎「(凄い強くて…ちゃんと筋が通ってて…一人で立てる奴だったんだ)」

京太郎「(それなのに俺…なんて情けないんだろう…)」

京太郎「(こんなので…本当に良いのか?)」

京太郎「(今の状態で…玄やしずの事振り切って…胸を張って阿太中にいけるのか…?)」






プルル

京太郎「(あ…携帯…憧からのメールか…)」


From:憧
Subject:提出期限について
やっほ、ちゃんと勉強してる?
中学からは一気に勉強難しくなるんだからしっかり基礎固めときなさいよ
ま、その時になったらあたしも手伝ってあげるけどさ
でも、小学校までみたいに何もかも面倒を見てあげられるとは限らないんだから
たまにはあたしのことも助けてよね、王子様v
でも、阿太中楽しみだよね
阿知賀ほどじゃないけど校舎も綺麗な感じだったし
麻雀部も見学させて貰ったけれどすっごい熱気!
あんな中で打てたらどんどん上達しそう
前話してた男女でインターミドル優勝も夢じゃないかもね…なーんて♪

あ、そうそう。
明日金曜日で願書の提出期限なんだけどちゃんとやった?
最近あんまり一緒に帰れなくて大変だったけど…出来ませんでしたとかなしだからね!


京太郎「…っ!」








京太郎「(…憧…こんなに嬉しそうにして…)」

京太郎「(…そうだよな…前々から…約束してたもんな)」

京太郎「(阿太中で男女でインターミドル言って…頂点取るって…)」ギュッ

京太郎「(それに…今まで俺の為に色々してくれた憧を裏切れるのか…?)」

京太郎「(突然、進路を変えて…憧だけ置いてけぼりなんて…出来る訳ないだろ…)」

京太郎「(…でも…あんな玄放っておける訳ないし…)」

京太郎「(俺は…俺は…どっちを…選べばいいんだ……)」






>>+10
1阿太中
2阿知賀









































プルル

憧「…はい。もしもし」

京太郎「…」

憧「…あれ?京太郎?」

京太郎「…夜遅くに…ごめんな」

憧「それは良いけど…どうかしたの?」

京太郎「いや…なんか…憧の声が聞きたくて…」

憧「……そっか」

憧「あたし、そっち行った方が良い?側に居てやった方が安心する?」

京太郎「…いや、大丈夫だ」

憧「…遠慮なんてしなくて良いのよ」

京太郎「いや…良いんだ…俺…本当に…」

憧「……そっか」






憧「…で、何があったの?」

京太郎「いや…何でも…」

憧「何でも…なんて事ないでしょ」

憧「今まであたしの事避けてて…いきなり電話してきたんだから」

憧「何か…辛い事あったんでしょ?」

憧「もうそんなのバレちゃってるんだから…話しなさい」

京太郎「辛くなんて…辛くなんて無いんだ…ただ…俺は…」

京太郎「俺…すげぇ弱くて…情けなくて…」

京太郎「自分の道一つ決めるのにも…こんなギリギリまで迷って…」

憧「…うん」

京太郎「でも…俺…決めたから」

京太郎「…憧と一緒に…阿太中行くって…そう…決めたから」

憧「……うん」

京太郎「だから…憧…見ててくれ…」

京太郎「…俺…絶対…強くなるから」

京太郎「男としても…雀士としても…絶対…強くなってみせるから」

京太郎「…だから…」ポロポロ

憧「…分かった」







憧「あたし…傍に居たげるから」

憧「誰よりもずっと…アンタの事見ててあげる」

憧「アンタが強くて格好良い男になるところ…誰よりも近くで見ててあげる」

憧「だから…京太郎も…見ててね」

京太郎「…え?」

憧「…あたしも…そんなアンタに相応しい女になるから」

憧「お化粧覚えて…髪も伸ばして…麻雀も強くて…」

憧「格好良くなるアンタの側にいれるような…凄い女になってみせるから」

憧「だから…安心して強くなりなさい、格好良くなりなさい」

憧「私もそれを支えてあげられるような…良い女になるからさ」

京太郎「…っ!」







京太郎「…ごめんな…俺…こんな…格好悪くて…」

憧「…いいのよ。別に…今に始まった事じゃないし」

憧「それに…良い女って奴はそういう弱音も受け止めてあげるもんでしょ」

憧「…だから、あたしにはそういうの…吐いて良いから」

憧「あたしにだけは弱音を吐いても良いから…ね」

京太郎「…うん…」グスッ

憧「…ほら、そうやって泣いてないで…ついでだし、もっとおしゃべりしよ」

憧「最近、あんまり話してないし…話したい事も色々あるでしょ?」

憧「あんたが寝るくらいまでは付き合ったげるから…ね」

京太郎「…あぁ…ありがとう…な」












【System】
新子憧の愛情度がLV2になりました。
おや…新子憧の様子が…?
最終更新:2013年10月05日 10:36