高校二年――10月学園祭

【高校二年 ―― 10月第四週】

京太郎「(さーて…今日は学園祭だ)」

京太郎「(特に今日は外部からの人も結構やってきてくれて賑やかになっている)」

京太郎「(と言っても…去年のノウハウがあるからな)」

京太郎「(この程度の人数なら十二分に捌ける」

京太郎「(お陰で今年は休憩時間が短くなったり、交代時間が伸びたりしないし)」

京太郎「(やっぱ予定通りに物事が進むって良いよな)」

京太郎「(雑用として色んなところに出入りして)」

京太郎「(各所の調整やらやった分、感慨深い)」

京太郎「(…っと、あんまり悦に浸ってはいられないよな)」

京太郎「(こうしてスケジュール通りに進んでいるのは嬉しいけど…)」

京太郎「(色々、見て回ったりしたい所はあるんだから)」

京太郎「(…って、アレは…)」


>>+2
末尾16 しずと憧か?
末尾27 灼とレジェンド?
末尾38 玄の奴じゃないか
末尾49 やえさんと宥さん?
末尾50 ???
































>>玄の奴じゃないか

京太郎「(って玄の奴じゃないか)」

京太郎「(つか…あいつ一人なのか?)」

京太郎「(てっきり友達か宥さんと一緒に回ってると思ったんだけど…)」

玄「あ…」

京太郎「(って見てる間に気づかれたか…)」

京太郎「おう。玄、どうかしたのか?」

玄「あ…あの…えっと…」

京太郎「…ん?」

玄「…お、おねーちゃん見なかった?」

京太郎「宥さん?見てないけど…」

京太郎「もしかして迷子になってるのか?」

玄「あ、違うの。違うんだけど…」

京太郎「…ん?」















玄「えっと…今日はおねーちゃんお友達と一緒に回るって言ってて…」

京太郎「あぁ、やえさんと来てるのか」

京太郎「それなら大丈夫じゃないか?やえさんしっかりしてるし」

京太郎「宥さんも六年通ってる訳だから、構造も把握してるだろうしな」

玄「そ、そうなんだけど…でも…」

京太郎「…ん?」

玄「…ね、京太郎君、おねーちゃん探してあげてくれないかな?」

京太郎「え?どうしてだ?」

京太郎「そもそも宥さんはやえさんと一緒に来てるんだろ?」

京太郎「確かに両方知ってるけれど…でも、わざわざ探す必要なんてないんじゃないか?」

玄「でも…こういうイベントで一緒に回るのって思い出になるだろうし…」

京太郎「やえさんと一緒に回ってるだけでも十分だと思うけど…」

玄「そ、そんな事ないよ!私だったら…!」

京太郎「玄だったら?」

玄「…な、なんでもない…」カァァ
















京太郎「…なぁ、お前、もしかして…」

玄「…っ」ビクッ

京太郎「…やえさんの事嫌いなのか?」

玄「…ううん。嫌いじゃないよ」

玄「寧ろ、おねーちゃんと仲良くしてくれて…凄い感謝してる」

玄「…でも…私はそれ以上に…」グッ

玄「…おねーちゃんと京太郎君に一杯、思い出作って欲しいの」

京太郎「…それは宥さんがそう言ったのか?」

玄「ち、違う…けど…でも…」

京太郎「じゃあ…どうしてそこまでする必要があるんだ?」

京太郎「友達と来てる宥さん探してまでする必要のある事なのか?」

玄「…う…だって…」

京太郎「…だって」

玄「…私がおねーちゃんだったら…そうしたいんだもん…」グスッ

京太郎「…あー…」













玄「本当は…本当は私だって…京太郎君と…」ヒクッ

京太郎「…馬鹿。こんなとこで泣くなよ」

玄「だってぇ…」グスッ

京太郎「だってじゃねぇよ。子どもか」フキフキ

玄「んぅ…」

京太郎「…ま、俺も悪かったよ」

京太郎「良く分からないけど…あんまり突っ込んじゃいけない事なんだよな」

京太郎「少なくとも…怒ってる訳でも、泣かせるつもりでもなかったんだ。ごめんな」

玄「そんな事…ないよ」

玄「ただ…私は…」

京太郎「……」

京太郎「…じゃあさ、一つ提案があるんだけど」

玄「…提案?」

京太郎「あぁ、どうせだし一緒に宥さん探さないか?」












京太郎「これだけ人が多いと人探すだけでも結構、大変だからさ」

京太郎「敷地広いのもあって…そのままじゃ見落としかねないし」

京太郎「だけど、二人一緒に行動すればそうやって見落とす確率はグッと減るだろ」

京太郎「ま、そっちが誰かと一緒に回る予定なら…無理にとは言わないけどさ」

京太郎「玄ももう三年だし、友達とかと一緒に回りたいって言うなら…」

玄「……」

京太郎「玄?」

玄「…卑怯…だよ、京太郎君」

玄「なんでそんなに…私の欲しい言葉をくれるの…?」ポロ

京太郎「…あーもう…また泣くのかよ、この泣き虫」フキフキ

玄「う…ごめんね…」

京太郎「良いよ。どうやら原因は俺にあるみたいだし…」

京太郎「それに…俺は鈍感でバカだけど…」

京太郎「それでもここまでアプローチされたら気づくって」

玄「…え?」カァァ













京太郎「お前も…俺と一緒にいたいんだろ」

玄「そ、そそそそそそそそそれは…あの…えっと」マッカ

京太郎「俺もさ、お前と同じなんだよ」

玄「ふぇぇぇ…!?お…同じって…も、もしかして…」

京太郎「…あぁ。実は…俺も…」

京太郎「…一緒に回る予定だったαとβが…彼女優先してさ」

玄「…え?」

京太郎「ホント…友情なんて儚いもんだよなぁ…」

玄「え…え?え……?」

京太郎「まぁ…あいつらが上手くやるのは嬉しいけど…でも、完全放置ってのも寂しいし」

京太郎「ま、独り身同士寂しく回ろうぜ」

玄「……」

京太郎「あれ?玄」

玄「…むぅぅ」ムッスー

京太郎「あ、あれぇ…?」













玄「…勿論、分かってたのです。えぇ…松実玄にはお見通しだったのです」プクー

京太郎「え、えっと…」

玄「でも、流石にちょっとこの仕打はないんじゃないかと思うのです。残酷なのです」ムッスー

京太郎「わ、悪い。でも…」

玄「…反省してる?」

京太郎「反省してます…」

玄「じゃあ…許してあげる」

京太郎「…ほっ」

玄「…でも、私は…」

京太郎「何か予定あるのか?」

玄「…ううん。ないけど…」

京太郎「じゃ、お詫びついでに何か奢るし…さ」

京太郎「玄さえ良ければついてきてくれないか?」

玄「……うん」ギュッ

玄「…わかった。でも…おねーちゃんが見つかるまでだからね」

京太郎「おう。分かってるよ」












京太郎「(でも、それから玄と色んなところを回ったけれど)」

京太郎「(結局、宥さんは見つからないままだった)」

京太郎「(まぁ…そもそも中高一貫のでかい敷地の中で二人を見つけるってのは至難の業だ)」

京太郎「(もうひと通り見て回って帰ったのかも知れないし…)」

京太郎「(別々の方向に進んでいるのかもしれない)」

京太郎「(勿論、本気で見つけようとするならば、携帯で連絡を取るのが一番だ)」

京太郎「(けれど、それは俺も玄も言い出さないままだった)」

京太郎「(それはきっと…玄も俺と一緒にいたいって言ってくれたそれが嘘じゃないからなんだろう)」

京太郎「(あの時、ポロッとこぼしたその言葉は…こいつの本心なんだ)」

京太郎「(勿論…俺にはそれがどうしてなのかは分からない)」

京太郎「(分かるはずなのに…わかっちゃいけないような気がして)」

京太郎「(思考がそこから先へと進まないんだ)」

京太郎「(だけど…それでも…俺は…)」

京太郎「(俺の横で…子どものように表情を変える玄と一緒に居たかった)」

京太郎「(チャチな作りのお化け屋敷で怖がって)」

京太郎「(学生が作った適当な料理を美味しいと言って)」

京太郎「(軽音楽部のライブ見て目を輝かせ、演劇部の劇で泣いて)」

京太郎「(そんな身体一杯で…学園祭を楽しんでいるこいつと…一緒にいたかったんだ)」



















京太郎「あー…楽しんだ楽しんだ」

玄「えへへ…色んなところ回っちゃったね」

京太郎「そうだなーもう殆どのクラスは制覇したな」

玄「後は…何かあった?」

京太郎「確か校庭で打ち上げって話じゃなかったっけか」

玄「打ち上げかー…去年は何したっけ?」

京太郎「確か生徒会がジュースやら配ってたんじゃなかったっけか」

玄「あー思い出した。それで残った焼きそばとかそういうの全部使って…」

玄「ちょっとしたパーティになったんだよね」

京太郎「あぁ。ま、うちのところはもう出せるものなかったけどな」

玄「凄いよね、全部売り切れたんだっけ?」

京太郎「ま、俺の幼馴染たちが作ってるんだし当然だけどな」

玄「ふふ…まるで惚気みたい」

京太郎「ま、最高売上叩きだしたのは料理の味も無関係じゃないって事だよ」

玄「悔しいなー…私のところも飲食系にしとけばよかった」

京太郎「でも、今回、結構賑わってたじゃないか」

玄「だけど、売り切れまではちょっと無理かなーって…あ」

京太郎「ん…どうし…あ…」


















京太郎「(玄の視線の先には嬉しそうにやえさんと歩く宥さんの姿があった)」

京太郎「(もう日が落ちて学外の人は殆ど帰っていたけれど…)」

京太郎「(でも、宥さんたちはまだ敷地内に居たらしい)」

玄「……」

京太郎「(それを知りながら、俺も玄も声を出せなかった)」

京太郎「(まるで固まったように棒立ちになって人の波に流れていく二人を見送っていく)」

京太郎「(…それはきっとお互いに…もう宥さんたちと出会うなんて考えていなかったからだろう)」

京太郎「(そんな事なんてもう頭の中から消えてしまうくらいに俺と玄は二人で歩く学園祭を楽しんでいたんだから)」

京太郎「(…だけど…いや…だからこそ…俺は…)」スッ

玄「…あ」

京太郎「…行こうぜ、玄」

玄「い、いや…だけど…」

京太郎「俺達は何も見てない。きっとアレは他人の空似だ」

玄「…でもっ」












京太郎「それに…今から宥さんたちと合流しても…あっちももう学園祭殆ど堪能した後だろうし」

京太郎「一緒に回るような時間的余裕もないよ」

玄「…そんなの話しかけてみなきゃ分からないし…」

京太郎「…それにさ」

玄「…え?」

京太郎「それに…俺、お前と別れたくなんかない」

京太郎「今日という日を…最後までお前と一緒に過ごしたいんだ」

玄「…そんなの…」

京太郎「…玄は…違うか?」

京太郎「目的を果たしたからって…俺を簡単に別れられるくらい…楽しくなかったか?」

玄「…楽しかったよ。楽しかった…から」

玄「…だから…私…この気持ちをおねーちゃんにあげようって…」

玄「おねーちゃんだったらもっと楽しくなるからってそう思って…」

京太郎「…それでも俺はお前が良い」ギュッ

京太郎「今は…宥さんじゃなくて…お前を見ていたい」

京太郎「…だから、この手は離さないぞ」











玄「…京太郎君は…酷いよ」

京太郎「…」

玄「私の気持ち全然考えてくれなくて…強引で…」

京太郎「…嫌か?」

玄「…嫌じゃないよ。嫌じゃないから…酷いの」

玄「でも…どうして私なの?」

玄「…私、何時も空回りばっかりで…おねーちゃんほど綺麗でもなくて…」

玄「京太郎君の好きなおもちだって…おねーちゃんの方が大きいのに…」

京太郎「だから俺は別におもち好きって訳じゃ…いや、まぁいっか」

京太郎「…まぁ…そのへんの事だけど…」

京太郎「…正直、俺にも良くわからん」

玄「…え?」













京太郎「でも、ただ、確かな事は…だ」

京太郎「俺がお前のこと気に入ってるって事だよ」

玄「気に入ってる?」

京太郎「…ま、これまでずっと一緒にやってきたのは別に伊達でもなんでもないって事」

京太郎「俺だって暇人じゃないんだ」

京太郎「好きじゃなきゃ…ここまでやらないっての」

玄「…京太郎君…」

京太郎「…お前はどうだ?」

玄「…そんなの…そんなの…決まってるよ」










玄「私なんてだいだい…大好きなんだから…っ!」










京太郎「…そうか」

玄「…えへ…京太郎君、顔赤いよ」

京太郎「うっせ…放っとけよバカ玄」

玄「えへへ…照れ屋さんなんだからもう…」

京太郎「だーくそ…調子に乗りやがって…」


~~~♪


玄「…あ、この音楽…」

京太郎「学園祭も終わりって事だな…」

玄「…ちょっとさびしいね」

京太郎「まぁな。…って後夜祭はダンスかよ」

玄「へー…面白そう」

京太郎「…どうせだし行ってみるか?」

玄「良いの?」

京太郎「ま、これでも俺はダンスやってるからな」

玄「え、初耳…」

京太郎「中学の頃創作ダンスやって部活の打ち上げでフォークダンスやった俺に隙はねぇよ」

玄「え、それだけ?」

京太郎「じゃあ、玄はなにかやってたのか?」

玄「う…ない…」

京太郎「じゃあ、玄は俺以下って事だな」

玄「あう…」

京太郎「…ま、失敗したらリードミスった俺の所為だしさ、気軽に行こうぜ」

玄「…うんっ」ニコッ





















【System】
松実玄の愛情度がLv3になりました
松実玄は後夜祭のフォークダンスを心ゆくまで楽しんだようです






























やえ「…良いのか?」

宥「うん。だって玄ちゃんは最後の学園祭なんだもん」

宥「一杯、思い出作らせてあげないとね」

宥「でも…やえちゃんにまでこっちの我儘に付き合ってもらってごめんね」

やえ「…まったくだ。お陰で京太郎と巡れる学園祭を一回分無駄にしてしまった」

宥「ごめんなさい…」

やえ「…この分はチョコパフェを奢ってもらえるまで覚えておくからな」

宥「ふふ…」

やえ「な、なんだ…?」

宥「やえちゃんは本当に優しいなって」

やえ「べ、別に優しい訳じゃない」

やえ「そもそも…恋敵に塩を送る羽目になって悩んでいるのは事実だし…」

やえ「それでも我慢したのは…宥の顔を立てての事なんだからな」

宥「…うん。ありがとう」

やえ「…にしても…アレだな」

やえ「…アレだけ目立つ事やって気づかれてないと思ってるんだろうか」

宥「ふふ…そういう人を飲み込む雰囲気がきょーくんにはあるから」

宥「…やえちゃんも見に覚えがあるんじゃない?」

やえ「…ノーコメントだ」

やえ「ま…あっちも完全に二人の世界に入っているし…馬に蹴られないうちに退散するか」

宥「そうだね。…今日は本当にありがとう」

やえ「気にするな。私も楽しかったから」
最終更新:2014年01月30日 21:22