高校二年――9月EX

【高校二年 ―― 9月EX】

京太郎「(それからレジェンドとの間に会話らしい会話はなかった)」

京太郎「(いや、まぁ、そりゃな…下着見たどころか触っちゃった訳だし)」

京太郎「(恥ずかしいとかそういうレベルじゃないだろ)」

京太郎「(幾らレジェンドのミスだって言っても、縁を切られてもおかしくなかったし…)」

京太郎「(レジェンドがどれだけレジェンドでも…スルーして和やかに会話なんて訳にはいかない)」

京太郎「(…だけどなー…なんつーか…)」

京太郎「(あんな風に慌てるレジェンドなんて見た事なかったから新鮮というかなんていうか)」

京太郎「(…正直、ちょっと可愛いとか思ったりして…)」

京太郎「(…いや、ねぇな)」

京太郎「(だって、相手はあのレジェンドだぜ)」

京太郎「(女子力ないのが特徴みたいな奴が可愛いとかそんなオカルトありえません)」

京太郎「(気の迷いにしてもいきすぎだな、うん)」

京太郎「(…ま、気の迷いはさておいても…今日も無性に気まずいままだったし…)」

京太郎「(逃げるように買い出しに出てきた訳だけど…)」

京太郎「(…ってあれは…)」












玄「うーん…どうしよう」

京太郎「玄、どうかしたのか?」

玄「あ、京太郎君。あのね…」

玄「…実は自転車の鍵なくしちゃって」

京太郎「って結構、大事じゃねぇか。自転車だけか?」

玄「うん…家の鍵はちゃんとあるんだけど」

玄「何処で落としたかも分からなくて…」シュン

京太郎「あー…それじゃ俺が乗っけていってやろうか?」

玄「え?良いの?」

京太郎「あぁ。だって、お前、今日も仕事だろ」

京太郎「急いで帰らないとやばいんじゃないのか?」

玄「…うん。実は…」

京太郎「だったら、ほら、遠慮すんなって」

京太郎「俺も丁度、買い出し行くついでだから、ちゃんと家まで送ってやる」

玄「うん…ごめんね」










キーコキーコ

玄「ね、京太郎君」

京太郎「ん?」

玄「…重くない?」

京太郎「あぁ、ちょっと重いかもな」

玄「う…ごめんね」

京太郎「はは。冗談だって。気にするなよ」

京太郎「そもそも俺は普段、憧とかしずを後ろに乗せてこの坂登ってる訳だし」

京太郎「それに今は下りだから、重くなんかねぇよ」

玄「…本当?」

京太郎「おう。本当本当」

京太郎「…それよりさ」

玄「ん?」









京太郎「…ちょっとくっつく過ぎじゃね?」

玄「え?そうかな?」ギュゥゥ

京太郎「いや…うん。お前が良いんなら良いんだけどさ」

玄「…え?ダメなの?」

京太郎「いや…ダメっていうか…その…」

京太郎「(…まさかおもちが当って意識してます…なんて言えないしなぁ…)

玄「えっと…降りた方が良い?」

京太郎「あぁ。大丈夫。思いって訳じゃないし」

玄「じゃあ、どうして?」ギュゥゥ

京太郎「…お前もしかしてわざとやってねぇか?」

玄「え?」

京太郎「…いや、ねぇか。だって玄だもんな」

玄「んー…良く分かんないけど…でも、くっついた方が安定性あがって京太郎君が漕ぎやすいかなって」

京太郎「あぁ…バランス取りやすいのは確かだし…もう今のまんまで良いよ」

玄「えへへ…じゃあ、一杯、ぎゅってするね」ギュゥゥ

京太郎「お、お手柔らかに頼むな…」











玄「そう言えば…京太郎君ってさ」

京太郎「ん?」

玄「最近…おねーちゃんと仲良いよね」

京太郎「んー…まぁ、以前より仲良くなれたのは確かだな」

玄「やっぱりそうだよね…」

玄「家でもおねーちゃん京太郎君のお話か、お友達のお話しかしないし…」

京太郎「そ、それはそれで恥ずかしいな」

玄「それだけおねーちゃんに好かれてるって事だよ」

京太郎「んで…そこまで聞かされると家でどういう風に話されてるのか気になるんだけど」

玄「うん。大体は二人の事、褒めちぎってるよ」

玄「あんな事されて暖かかったとか、こんな事されて嬉しかったとか…」

玄「あんな風に…嬉しそうなおねーちゃん見るなんて…今まで殆どなかったくらい…」ボソッ

京太郎「…ん?玄?」

玄「あ、ううん。なんでもないの」

玄「とにかく…おねーちゃんは京太郎君の事、すっごい信頼してるんだよ」

京太郎「ま、光栄だって思っておくかな」

玄「そうだよ。あんなに素晴らしいおもちの持ち主なんて滅多に…あ」










京太郎「どうかしたか?」

玄「や…う…え、えっと…」

玄「何でも…ない」シュン

京太郎「そんな落ち込んだ声出してるのに…なんでもないなんて事ないだろ」

京太郎「こうして運んでるんだし…手間賃として説明の一つくらいしろよ」

玄「ぅ…そ、それは…」

玄「…だって…あんまりおもちおもちって言ったら…女の子らしくないし…」

京太郎「…え?」

玄「こ、これでも…治そうとはしてるんだよ?京太郎君に嫌われたくないし…」モジモジ

玄「それに…も、もっと…あの……になって欲しい…から」カァァ

京太郎「え?何になって欲しいって?」

玄「そ、それは…え、えっと…すひゅぅぅ!?」ビクッ

京太郎「っと…大丈夫か?」

玄「ぅ…ごめん…カーブ見えてなかった…」

京太郎「いや、俺もちゃんと言ってやればよかったわ、悪い」










京太郎「…で、さ。まぁ…なんつーか…」

京太郎「…お前は別にありのままで良いと思うぞ」

玄「…え?」

京太郎「…前も言ったけどさ。おもちおもち言ってないお前なんて…もう松実玄じゃねーし」

玄「…でも」

京太郎「つか…お前はすげー女の子だっての」

京太郎「…そんなもの控えなくても…ちゃんと意識してるし」

玄「ふぇ?」キョトン

京太郎「あー…もう…なんでお前ら姉妹はこう…肝心なところで察してくれないかな…」

玄「ど、どういう事?」

京太郎「だから!今もお前のおもちが押し当てられて、意識させられてるんだよ!」

玄「…え?…え?……え?」

玄「えええええぇぇぇ!?」カァァァ











京太郎「くそ…もうなんて羞恥プレイだよ…」

玄「あ…ぅ…あの…き、京太郎君…?」

京太郎「…おう。どうした?」

玄「それって…本当…?」

京太郎「冗談でこんな事言えるほど俺は羞恥心がない訳じゃねぇよ」

玄「だ、だって、私、おねーちゃんに比べたら全然、小さいし…」

京太郎「お前、それ憧の前で言ったら怒られるからな」

京太郎「つか…宥さんがでかいだけで…お前だってあるだろ」

玄「…あるの?」

京太郎「あるんだよ!少し自覚しろバカ玄!!」

玄「ふきゅん…怒られちゃった…」










京太郎「…だから…まぁ、アレだ」

京太郎「無理に取り繕おうとしなくても良いんだぞ」

京太郎「つか…俺、全然気づかなくてごめんな」

京太郎「もう一年くらいお前からそういう話聞かなくなったと思ったら…そういう事だったんだな」

玄「あ、ううん。京太郎君は悪くないから…」

玄「それに…私が勝手にやろうとしてた事だし…」

京太郎「それでも…ちゃんとお前と向き合ってたらそんな無理させなかっただろ」

玄「ううん…向きあおうとしていなかったのは私の方だし…それに」

京太郎「…それに?」

玄「…今、そんなの気にならないくらい…すっごい嬉しいから」ギュッ

京太郎「…ぅ」

玄「…京太郎君も私のおもちでドキドキしてくれてるの?」

京太郎「…分かってるなら押し付けるなよ」

玄「でも、さっき良いって言ってくれたし…」

京太郎「いや、言ったけど…」

玄「…じゃあ、家までこのまま…ね♪」

京太郎「ぐぅ…」













京太郎「ったく…そんな無防備で襲われても知らねぇぞ」

玄「大丈夫だよ。こんな事、京太郎君にしかしないもん」

京太郎「それはそれでちょっと複雑なんだけどな」

玄「京太郎君は私と一緒に帰るの嫌?」

京太郎「そういう意味じゃないって…ほら、曲がるぞ」

玄「右に曲がりまーす」

京太郎「なんだ、それ」

玄「えへへ…一度言ってみたくて」

京太郎「…んじゃ、次は左に曲がるぞ」

玄「はーい。左に曲がりまーす」スイー











玄「ふふ…なんか楽しくなって来ちゃった」

京太郎「楽しいって言っても、送ったりしねぇぞ」

玄「…絶対にダメ?」

京太郎「…まぁ、今日みたいに仕方ない時は足になるけどさ」

玄「えへへ…京太郎君大好き」ギュッ

京太郎「このタイミングで言われてもなぁ…」

玄「じゃあ、どういうタイミングなら良いの?」

京太郎「そうだなぁ…ラブレターで屋上に呼び出ししてそこで告白とか良いんじゃないか?」

玄「…ラブレターかぁ…何枚くらい書けば良いんだろう…」

京太郎「いや、別に好きにすりゃ良いだろ」











玄「でも、一枚だけだと本当に好きか分からなくないかな?」

京太郎「まぁ、告白するシチューション次第じゃないか?」

京太郎「とりあえず呼び出しだけして本当の気持ちは口頭で伝えるって形だと枚数もそんなに要らないだろうし」

玄「ふんふむ…」

京太郎「逆に口下手な奴は枚数書いてでも想いを伝えた方が上手くいきやすいかもしれないけどな」

玄「…京太郎君はどっちの方が良い?」

京太郎「俺?俺か…」

京太郎「まぁ…俺は臆病なタイプだから、色んなタイプのアプローチして欲しいな」

玄「アプローチ?」

京太郎「手紙と告白の両方で真摯に伝えられると多分、弱い」

玄「そっか…えへへ…そっかぁ…♥」ニコー

京太郎「って、なんで俺の話になってるんだよ」

京太郎「つか、お前…まぁ…言いたくないなら言わなくて言いんだけど…」

玄「え?」

京太郎「……誰かに告白したりするつもりなのか?」










玄「んー…」

京太郎「なんだよ…ここまで乗ってやったんだから焦らすなよな」

玄「…気になる?」

京太郎「…う、そりゃ気になると言えば…気になるし…」

京太郎「べ、別に変な意味じゃなくって…あ、アドバイスしたからさ」

玄「…ふふ。大丈夫だよ」

玄「…私にそんな勇気はないから」

京太郎「…でも、告白しないと気持ちは伝わらないぞ」

玄「…一応、それっぽい事はもう何度かやってるんだけどね…」ジトー

京太郎「え?」

玄「…なんでもない。それに…」

玄「私よりも応援してあげたい人が…いるから」

京太郎「それって…」

玄「あ、着いちゃったね」スッ

玄「…今日は送ってくれてありがとう」

京太郎「…いや、構わねぇよ」

京太郎「それより…」











玄「…うん?」

京太郎「…それでお前は良いのか?」

玄「…良いよ」

玄「私は幸せそうな二人を見るだけで…十分だから」

玄「私はそれで十分満たされてるんだよ」

京太郎「…そんなに大事な人なのか?」

玄「…うん。二人共…私にとって最高に大事な人」

玄「だから、私はね。このままで良いの」

玄「私が我儘を言ったら…皆、困っちゃうから」

京太郎「…そうやって何もかもずっと人に譲り続けるつもりかよ」

玄「…違うよ」

京太郎「え?」

玄「私にとってその二人の幸せは何よりも大事な事なの」

玄「私自身よりも…私はその二人の事を祝福してあげたい」

玄「…だから、これは譲るんじゃなくて…私の希望なの」

京太郎「…玄」

玄「じゃ、また明日ね、京太郎君!」

玄「バイト遅れたら拗ねちゃうから!!」

























【System】
松実玄の愛情度がLv2になりました
松実玄は松実宥との仲を後押しするつもりのようです
最終更新:2014年01月30日 21:13