高校一年――初詣

【高校一年 ―― 1月第一週】

京太郎「う…うーん…」

京太郎「(…俺、クリスマスの日に…何やってたっけ…?)」

京太郎「(憧としずと遊ぶ約束をしたのは覚えてるんだけど…)」

京太郎「(その日に何があったのか完全に吹っ飛んでる…)」

京太郎「(しずたちと待ち合わせをしてから…分かれてこの部屋に来るまで…)」

京太郎「(その間が…まったく記憶にない…)」

京太郎「(…だけど…)」スッ

京太郎「(…その間…俺の意識は間違いなくあった)」

京太郎「(…その日何があったのかを紙に書き残しているんだから)」

京太郎「(だけど…【前の俺】は随分と用心深かったらしい)」

京太郎「(明らかに暗号めいたアトモスフィアがメモには込められている)」

京太郎「(こんなもの書いた記憶はないけど…でも、明らかに書かれているのは俺の筆跡で…)」

京太郎「(なんで暗号で書いてるのか分からないけど…でも、これ…解読しないとダメだよな…)」ブルル

京太郎「(ん…?アレ電話か…?)」

京太郎「(誰からだろう…)」


>>+2
末尾16 憧しずから
末尾27 灼から
末尾38 松実姉妹から
末尾49 やえさんから
末尾50 レジェンドから
































>>やえさんから

京太郎「あ、やえさん。明けましておめでとう」

やえ「うん。明けましておめでとう。今年もよろしくね」

京太郎「えぇ。是非とも」

やえ「ふふ…こっちも是非ともよろしくね」

やえ「それで…今年も初詣…どうかな?」

京太郎「あぁ。良いよ。場所は何時もと同じところで良いか?」

やえ「あ、それなんだけど…」

京太郎「ん?」

やえ「今年はお互い高校生になったし…ちょっと遠出してみない?」

京太郎「遠出…ですか?」

やえ「うん。何時も同じ神社じゃ味気ないでしょ」

やえ「…それにあそこだと京太郎君の事でおまいりしても聞いて貰えそうにないし」


















京太郎「え?」

やえ「ううん。何でもない。それより…どうかな?」

京太郎「俺はどうせ暇してるし構わないよ」

やえ「やった…!じゃあ、準備するから一時間後くらいに…」

京太郎「あぁ。迎えに行くよ。今年も振り袖着てくれるんだろ?」

やえ「あう…そ、そういうのは…分かってても聞くべきじゃないよ…っ」

京太郎「あはは。ごめんごめん」

京太郎「でも、振り袖であんまり長い距離歩いてもらうのは心配だからさ」

京太郎「それに振り袖姿のやえさんがナンパでもされたら大変だし」

やえ「…されると思う?」

京太郎「勿論。だからこそ、こうして言ってる訳だし」

やえ「…えへ…えへへへ…」

京太郎「…あれ?やえさん?」

やえ「あ…ご、ごめん…っ!じゃあ、一時間後に…ね」

やえ「一杯、おめかししていくから…期待してて」

京太郎「あぁ。期待してるよ」









京太郎「(よし…約束の時間の10分前に到着…っと)」

京太郎「(後はやえさんに到着を伝えるメールして…うん。これでよし)」

京太郎「(にしても…今日は寒いなー…)」

京太郎「(俺はまだコートとかで厚着できてるから大丈夫だけど…)」

京太郎「(この寒さの中振り袖だけのやえさんはかなりきついんじゃないだろうか)」

京太郎「(…うん。行き先は知らないし、ルートがどうなるかはわからないけど…)」

京太郎「(出来るだけ公共交通機関使って寒くないようにしてあげよう)」

京太郎「(後は寒がっていたらコートを貸してあげて…それで…)」

やえ「…お、お待たせ…っ」

京太郎「あ…そんな待ってないから大丈夫だよ。それより…」

やえ「そ、それより…?」

京太郎「…今年も綺麗だ。似合ってるよ」

やえ「ほ、ホント…?去年と同じだから…目新しさがないとか…」

京太郎「大丈夫だって。綺麗なものは幾ら見ても飽きないし」

京太郎「それにやえさんは去年よりずっと可愛くなってるからまったく同じじゃないしさ」

やえ「はぅ…っ♪」カァァ











やえ「そ、それって…口説いてくれてる…のかな…?」モジモジ

京太郎「…まったくそういう気持ちがないとは言わないかな」

やえ「え…?あ、じゃ…じゃあ…!」

京太郎「でも、それ以上にやえさんが綺麗だとか可愛いってのは強くて…なんていうのかな」

京太郎「別に恋人になりたいから褒めてるとか仲良くなりたいから褒めてるって訳じゃなくて…」

京太郎「本心からそう思ってるから出てきた言葉っていうか…邪は気持ちはあるけどそれだけじゃないっていうか」

やえ「…ふぅ」

京太郎「え?」

やえ「…そういう時は、素直にうんってだけで良いんだぞ」スネー

京太郎「あれ…俺…間違えた?」

やえ「…別に間違えてない。嬉しかったのは嬉しかったし」

やえ「ただ、余計な一言があって肩透かしを食らったって事」ビシッ

京太郎「ご、ごめん…」









やえ「…罰として…今日は…」スッ

京太郎「ん…?」

やえ「…このまま腕を組んで私に付き合う事」カァ

京太郎「…そんな事で良いのか?」

やえ「そんな事で良いんだよ」

やえ「…わ、私は…その…君と一緒というだけで…簡単に嬉しくなれるタイプの人間なんだから」

やえ「後は小さなフォローだけしてくれれば…それだけで幸せになれる…から…」モジモジ

京太郎「…そっか。それじゃ…」ギュッ

やえ「ふぇ…!?」カァァ

京太郎「今日寒いしさ、手をつないで行こうぜ」

やえ「…良い…の?」

京太郎「良いも悪いも…フォローしろって言ったのはやえさんだろ」

京太郎「俺も…それを…いや、やえさんを幸せにしてあげたいと思ってる」

やえ「~~っ♪」ブルッ









やえ「き…京太郎君ってば…いきなり…何を言うの…!」カァァ

京太郎「はは。まぁ、キスとか色々したんで吹っ切れたのかもな」

京太郎「今更、変に硬派ぶるのもおかしい話だし…言いたい事そのまま出たって言うかさ」

やえ「ぇ…?」

京太郎「俺…本当に感謝してるんだぜ」

京太郎「やえさんが居てくれなきゃ…俺はここまで立ち直れなかった」

京太郎「やえさんがいなきゃ…こんなにも前向きにはなれなかった」

やえ「…私は何もしていないよ。京太郎君の事に関しても殆ど蚊帳の外で…」

京太郎「でも、俺が今、麻雀やりたいって思えてるのは…やえさんのお陰なんだぜ」

やえ「…私の…?」

京太郎「あぁ。レジェンドに麻雀すんなって言われた時…」

京太郎「…俺、もう麻雀やめようかって…思ったんだ」

やえ「…え?」









京太郎「…二年前のペア大会の時…俺は麻雀をやってて楽しくないって…そうやえさんに言ったよな」

やえ「…うん」

京太郎「…で、その後…俺なりに一生懸命努力して…頑張って…」

京太郎「ようやく壁を乗り越えられたって…そう思った」

京太郎「でも…それはいけないやり方だったらしくて…レジェンドにもう麻雀はやめろって…止められて」

京太郎「その時…すげー水を掛けられた気がしたんだ」

京太郎「折角、強くなったのに…ようやく壁を超えられたのにどうしてって…さ」

やえ「…京太郎君」

京太郎「だけど…それでも麻雀したいって」

京太郎「また…皆と同じ舞台に出たいってそう思えたのは」

京太郎「俺を倒すって…麻雀の楽しさを思い出させてやるって言ってくれたやえさんのお陰だ」











やえ「…でも、私…何も出来てない…」

やえ「あんな風に大口叩いておいて…何も…」

京太郎「それでもやえさんがそうやって言ってくれなきゃ…俺は麻雀そのものをやめていたかもしれない」

京太郎「多分、それでも雑用はしていただろうけれど…きっと今みたいに情熱を傾ける事は出来なかったと思う」

京太郎「…俺は…そんな情けない奴なんだよ。だから…さ」

京太郎「これからも…見ててくれないか?」

やえ「…え?」

京太郎「えっと…あの…ほら…アレだよ」

京太郎「…俺…やっぱりやえさんの事…結構頼りにしてるんだ」

京太郎「で…その分…やえさんに頼りにされたいと思ってる。だから…」

京太郎「もし…よければ…あの…先輩としてで…良いんだ」

京太郎「これからも…一緒にいてくれないか?」

やえ「…あっ…」













やえ「…ふふ…京太郎君は本当に…仕方のない子だよね」ギュッ

やえ「そんな事…言われるまでもないよ」

やえ「言ったでしょ。私…京太郎君の事絶対に諦めるつもりはないって」

やえ「京太郎君に嫌われるまでは…ずっと…側にいるから」

京太郎「はは。じゃあ、きっとやえさんと俺の関係は一生続いていくな」

やえ「うん…そうだね…そうなると…良いな」ギュッ

京太郎「大丈夫。こうして学校分かれてもこうして会ってるんだからさ」

京太郎「何時までもこの関係は続くって」

やえ「…じゃあ…」

京太郎「うん?」

やえ「…私がプロになって日本中を飛び回るような生活になっても…こうして…一緒にいてくれる?」

京太郎「やえさん?」











やえ「私ね…大学卒業した後は…プロになるつもり」

やえ「一応、幾つか今でもオファー来てるし…実力さえ落とさなければ…きっとなれると思う」

京太郎「…やえさんならきっと大丈夫だよ。プロでもやっていける実力がある」

やえ「うん…でも…私の目標は…それじゃないの」

やえ「プロで一流として戦って…タイトルを争う事じゃない」

京太郎「…じゃあ…何を…?」

やえ「…プロにもペアの大会があるの知ってる?」

京太郎「あぁ。結構、賞金も大きくてそっち狙いでやってく人もいるって聞くけど…」

やえ「…私はそっちに出たい。出来れば…京太郎君と」

京太郎「…俺と?」

やえ「うん。あのペア大会の時…思ったの」

やえ「ずっとこうして京太郎君と麻雀していたいって」

やえ「こんな風に二人で協力しながらずっとやっていきたいって」

やえ「だから…私の夢は…」

やえ「…京太郎君とペアの大会で…世界一位に輝く事」

京太郎「…やえさん…でも、俺…」











やえ「うん。分かってる」

やえ「京太郎君の気持ち無視してるし…そもそもまだ麻雀出来る目処もついてないんでしょ」

京太郎「…あぁ」

やえ「でも、それでも…ね」

やえ「私は…京太郎君と二人で…世界を取りたい」

やえ「最高のペアだって証を二人で取りたいの」

やえ「…だから…」

やえ「京太郎君がどうであれ…私はプロに行くよ」

やえ「そしてそこで実力を磨いてくる」

やえ「京太郎君に勝てるように…京太郎君が麻雀に対する希望を取り戻せるように」

やえ「そして…君が私と一緒に戦いたいってそう思ってくれるように」












やえ「だから…今日は宣戦布告」クスッ

やえ「もう分かってると思うけど…私って結構、重い女だから…覚悟しててね」

京太郎「…やえさんは重くなんかねぇよ」

京太郎「そもそも俺だって…やえさんと一緒に戦いたい気持ちはあるんだ」

京太郎「…だけど…」

やえ「まだ将来の事なんか決められない…でしょ」

京太郎「…あぁ。情けない話だけど…俺…」

やえ「しょうがないよ。そもそも高校入ってまだ一年も経ってないんだし」

やえ「将来の事とか考えるような時期じゃないでしょ」

やえ「でも…もし、京太郎君が三年になって…そのつもりが少しでもあるのなら」

やえ「…少しは真剣に考えて欲しいな」

京太郎「やえさん…」





























【System】
小走やえの愛情度がLv5になりました
小走やえは本気で須賀京太郎とペアで戦っていきたいと思っているようです
最終更新:2014年01月27日 22:29