高校一年――6月EX

【高校一年 ―― 6月EX】

京太郎「(それから阿知賀の快進撃が始まった)」

京太郎「(元々、阿知賀はギリギリだったとは言え、あの晩成を倒せるほどなんだ)」

京太郎「(実力的に晩成一強とかしている奈良の中で追いつける高校などありはしない)」

京太郎「(その後には玄の対策が不十分だった事もあり、次鋒まででほぼ決着がついているような有り様だった)」

京太郎「(あまりの勝ちっぷりに、初戦敗退した晩成が弱くなったなどと口が裂けても言えないくらいくらいである)」

京太郎「(寧ろ、あの阿知賀と五角に渡り合ったという時点で、賞賛されていた)」

京太郎「(そして、王者晩成を破り、インターハイ出場を決めた阿知賀にはソレ以上に注目されていて…)」

穏乃「わわっ!」

「すみません!一言!一言お願いします!」

宥「あ、あわわ…」カチカチ

憧「あ…き、京太郎…!」ギュッ

京太郎「大丈夫だ。俺がいるからな」ギュッ

晴絵「あ、すみません。うち疲れてるんでまたインタビューとかはまた今度に…」

灼「…わずわらし…」ボソッ

玄「あ、あぅ…動けないよぉ…」

京太郎「(出場を決めた瞬間、この囲まれっぷりである)」

京太郎「(どうやら奈良個人一位のやえさんを取材しに来た人が一気にこっちになだれ込んできたらしい)」

京太郎「(お陰でその人たちに囲まれて数十分ほどこっちの足が止まったくらいである)」

京太郎「(男慣れしてない宥さんや男が未だ怖い憧なんかはずっと俺の手を握っていた)」

京太郎「(それでも割りと外面がしっかりしてる玄やレジェンドの回答で満足したのかその人たちも引き上げていって…)」












晴絵「ふぅ…改めてお疲れ様ー」

憧「ぅぅ…こ、怖かった…」

宥「…あ、あったかくなかった…」プルプル

京太郎「…大丈夫か?二人とも…」

憧「うん…京太郎が側にいてくれたから…」

宥「あ、ありがとうね…須賀君」

京太郎「ま、雑用だしな。これくらいの仕事はしないと」

京太郎「本当は俺が広報担当って事でメディアの前に立てれば良いんだろうけど…」

穏乃「そ、それは駄目!」

京太郎「え?」

灼「…うん。また全国放送で告白とかするから…ダメ」

京太郎「だ、だからアレはそういうんじゃないって…」

京太郎「それにもう麻雀止めたインターミドルチャンプとか相手にされないって」

晴絵「(…寧ろ、京太郎がいたからこそアレだけ囲まれたって可能性もあるんだけど…)」

晴絵「(インターミドル王者が個人戦にも出場していない理由なんて誰もがしりたいだろうし…)」

晴絵「(独占で対談したらそれこそ一つの特集書けるレベルだし…)」

晴絵「(ま…それは言わない方が良いかな。それより…)」

晴絵「…皆、おめでとう。よく頑張ったね」

灼「ハルちゃん…」

穏乃「あはは…まだ実感沸かないけどね」

玄「でも…私達やったんだよね…?」

宥「うん…インターハイ…皆で行けるんだよ…」










晴絵「だから、今日はぱーっとお祝い!私のおごりで焼き肉よ焼き肉!」

穏乃「ウソ!焼き肉!?本当に良いの!?」バッ

憧「ってお祝いが焼き肉なの…?」

玄「あはは…えっと…私も焼き肉はちょっとなぁって…」

宥「焼き肉あったかい…」ホワァ

晴絵「べ、別にいいじゃないの!焼き肉美味しいし!」

灼「私はハルちゃんと行けるなら何でも良い…」

晴絵「灼は偉いなー」ナデナデ

晴絵「灼だけだよ…素直にそういう事言ってくれるの」ギュー

灼「…えへ…」ニコー

穏乃「あ、でも…京ちゃんは…」

晴絵「勿論、一緒よ。京太郎だって阿知賀麻雀部の一員なんだから」

晴絵「個人戦出場決めたαやβたちも誘って今日はぱーっと騒ぎましょ」

京太郎「あー…その…俺は…」









京太郎「(本当はそこで頷いておくべきなのだろう)」

京太郎「(今日は阿知賀麻雀部にとって記念すべき日だ)」

京太郎「(今までの努力が無理だと言われていたインターハイ出場で実ったのだから)」

京太郎「(皆を助け、彼女たちの努力を見てきた俺にとっても感動は一入である)」

京太郎「(けれど…やっぱり…俺は素直にそれを祝えない)」

京太郎「(…そうやって騒いでる裏で…きっと我慢しているであろう人を知っているから…)」

京太郎「(素直に…こいつらの事を…祝ってやる事が出来ない)」

京太郎「(…だから…俺は…)」

京太郎「…ごめん。俺、行かなきゃいけないところがあるからさ」

穏乃「え…」

憧「……」

京太郎「お祝いはそっちでやっててくれ」

灼「…京太郎…もしかして…」

京太郎「ごめんな。俺…阿知賀の事も大事なんだ」

京太郎「だけど…俺にとって…やえさんは…同じくらい大事な人だから」

京太郎「その人が傷ついてるかも知れないのに…放っとくなんて出来ない」

玄「…う…ん…」シュン

宥「そう…だよね。須賀君は…そういう人…だよね」

京太郎「…ごめんな…ホント」

京太郎「一応…合流出来たらするつもりだけど…あんまり期待しないでくれ」

京太郎「じゃ…ちょっと行ってくる」

憧「…っ!」









京太郎「(…勝利者側の人間が何をやっているのかと言われるのかもしれない)」

京太郎「(余計なお節介だとか…阿知賀の皆を裏切るのかとか…)」

京太郎「(…自分でそんな事を思わない訳じゃない)」

京太郎「(でも、それこそ勝利を素直に祝えない俺が…祝宴の場に居ても邪魔なだけだ)」

京太郎「(どちらに行ってもダメなら…俺はやえさんの側にいてあげたい)」

京太郎「(少なくとも…俺がやえさんの側に居れば…感情のぶつけ先くらいにはなれる)」

京太郎「(ま…それさえも拒絶されたら…それまでだ)」

京太郎「(おとなしく一人で帰れば良いだけだし…っと…)」

京太郎「(晩成の控室…ここか)」

京太郎「(一回戦で敗退してるとは言え…明日からの女子個人対策に団体戦の画像はチェックしてるだろうし…)」

京太郎「(まだ誰か居てもおかしくないはず…)」コンコン

「…はい」

京太郎「っ…!し、失礼します…!」









やえ「…」

京太郎「あ…」

京太郎「やえさん…」

京太郎「(良かった…やえさんが居てくれて…)」

京太郎「(アレ…?でも…一人だけ?)」

京太郎「(他のメンバーの荷物は見えないし…もう帰ったのか?)」

やえ「…まったく…本当に来るとはな」ハァ

京太郎「え?あ…いや…」

京太郎「迷惑…でしたか?」

やえ「…迷惑だ。ホント…良い迷惑だよ」

京太郎「す、すみません…でも、俺…」

やえ「そもそも…来るならどうして晩成敗退の時に来てくれなかった?」

やえ「どうして…何もかも終わった今のタイミングで来るんだ?」

やえ「京太郎君。君は…私ではなく阿知賀を選んだんだろう?」

京太郎「…そ、それは…そうですけど…」

京太郎「でも…俺はやえさんが心配で…」

やえ「…君に心配される事など何もない」

やえ「…帰りなさい。君がいる場所はここじゃない」

やえ「君が選んだ阿知賀の方だ」

京太郎「…っ」










やえ「打ち上げだってあったんだろう?」

やえ「そんなものを蹴ってまで私に会いに来るだなんて…惨めにさせるだけだ」

やえ「そんな風に選ばれても…嬉しくともなんともない」

やえ「だから…今からでも遅くないから…戻れ」

やえ「阿知賀の皆もきっと優勝の喜びを君を分かち合いたいはずだ」

京太郎「……じゃあ…」

やえ「…」

京太郎「じゃあ、どうしてここに居たんだ?」

京太郎「もう皆帰った後なのに…どうしてここに居たんだよ?」

やえ「…それは…」

京太郎「…本当に来るなんてって事は…俺が来るって事を想像していたんだよな」スッ

やえ「確かに…そ、想像はしていた。でも、私は別に君を待っていた訳じゃ…」

京太郎「じゃあ、何の為にここに残ったんだ?」

京太郎「俺に会いたくないなら…想像していたなら」

京太郎「皆と一緒に帰って…メールの一つでもくれたらそれで終わりだろうに」スタ

やえ「く…来るな…!」

京太郎「それでもここに居たって事は…」スタ

やえ「来るな…来るな…来るな…!」

京太郎「…少しはそれを期待してくれていたって…」スッ

京太郎「この…震えるほど握りしめた手を…解く権利があるって…」

京太郎「…そう自惚れても良いんじゃないかな」

やえ「ぅ…く…ぅ…」ポロ









やえ「…君は…卑怯だ」

やえ「私を…こんな…惨めな女にさせて…」

やえ「選ばなかった癖に…本当に居て欲しい時には側に居て…」ギュッ

やえ「それが嬉しくて堪らない私が…とっても惨めで…」ギュゥ

京太郎「…ごめんな」ナデナデ

京太郎「でも…俺…やっぱりやえさんの事放っておけなかったんだ」

京太郎「空気読めてないって…馬鹿な事してるって…自分でも分かってるよ」

京太郎「でも…ようやく会えるようになったのに…」

京太郎「こうして…顔を合わせて話せるようになったのに…」

京太郎「泣いているかもしれないやえさん放っておいて…」

京太郎「何もしないで…憧たちと騒いで笑ってるなんて…」

京太郎「俺には…やっぱり出来なかったんだ」

やえ「それが…それが…残酷だって言うんだ…」

やえ「放っておいてくれれば良いんだ…私の事なんか…」

やえ「そうすれば…もう期待しないで…済むのに…」

やえ「辛い時に来てくれるかもしれないって…そう…思わずに済むのに…」

京太郎「…そんなの…俺が嫌だよ」

京太郎「俺はやえさんが辛い時には…一緒にいたい」

京太郎「側にいて…慰めてあげたい」

京太郎「その役目だけは誰にも譲りたくない」








やえ「最低だ…」

京太郎「うん」

やえ「卑怯だ…」

京太郎「うん」

やえ「ワガママだ…」

京太郎「うん」

やえ「その上…タラシで…残酷で…馬鹿で…」

京太郎「うん」

やえ「…だけど…そんな君だから…私は…私は…」

やえ「こんなにも…ダメな女に…なっちゃうんだよぉ…」ギュゥゥ

京太郎「…今のやえさんはダメなのか?」

やえ「…ダメだよ…だって…私…」

やえ「やっぱり…離したく…ない…」

やえ「京太郎君と…こうして…ずっと一緒にいたい…」

やえ「阿知賀になんて…返したく…ないよ…」ポロポロ

やえ「こんな風に優しくされて…期待させておいて…」

やえ「帰せる訳…ない…」ギュゥゥ

京太郎「やえさん…」











京太郎「俺は…」

やえ「……」ビクッ

京太郎「俺は…今日一日…やえさんと一緒にいる」

やえ「…え…?」

京太郎「…ずっとは…やっぱり無理だ」

京太郎「そもそも年齢が違う以上…ずっと一緒になんていられない」

京太郎「例え晩成を選んでも…俺がやえさんと一緒にいられる時間は…一年しかないんだから」

やえ「それは…そうだけど…」

京太郎「…でも…やえさんをそんな風にした責任が俺にあるのなら…」

京太郎「俺は…出来るだけその責任を取りたい」

やえ「それは優しさじゃないよ…」

京太郎「そうだと思う。多分、これは俺のワガママなんだって…自分でも分かる」

京太郎「でも…俺も本当はやえさんに会いたかったんだ」

京太郎「団体戦終わるまで…お互いの為に会わないってのは寂しくて…だから…」

やえ「…卑怯だよ…そんなの」

やえ「私の弱みに漬け込んで…そんな事言うなんて…」

やえ「そんなの言われたら…本当に離れられなくなっちゃう…」ギュッ

京太郎「…離れなくて良い」

京太郎「いや…寧ろ、離れないでくれ」

京太郎「俺も…やえさんとここで終わりだなんて嫌なんだ」

京太郎「俺は…ずっと…やえさんと一緒にいたい」

京太郎「今のままの関係で…ずっと」










やえ「…今まで通りなんて…嫌」スッ

京太郎「え?」

やえ「…その程度の覚悟でずっと一緒なんて…軽く言わないで」

京太郎「あ…その…ごめん…」

やえ「ふふ…良いよ」

やえ「お陰で…少し頭の中冷静になれたから」

京太郎「冷静?」

やえ「そう。京太郎君相手に勝負を急いでも意味ないんだって事」

やえ「…それに…嬉しかったから…」

京太郎「え?」

やえ「例え…京太郎君がその意味を分かっていなかったとしても…」

やえ「君は私と一緒にいたいって…そう言ってくれた」

やえ「例え…先輩としての友人としてのそれでも…離れがたい存在だって思ってくれている」

やえ「なら…私にはまだチャンスがあるって事だよね」

京太郎「チャンスって…」

やえ「勿論…今更、晩成に来て…なんて言わないよ」

やえ「でも…ソレ以外は私絶対に譲らないから」

やえ「私も…京太郎くんと同じように…ううん、ソレ以上に…」

やえ「君と一緒にいたいって…そう思ってるから」

やえ「…例え…君が誰かと結ばれたとしても…絶対に諦めたりしない」

やえ「最後の最後まで…私は…勝負を降りたりなんかしないから」ギュッ

京太郎「え?やえさん…?」

やえ「ほら…今日は一緒に居てくれるんでしょ?」

やえ「とりあえず…一緒に帰って…ご飯食べて…」

やえ「一緒にネト麻しながら盛り上がって…そんな日を・・一緒におくってくれるんでしょ?」

京太郎「あぁ…勿論だ」

やえ「ふふ…じゃあ…ちゃんと楽しませてくれないと許さないんだからね」

やえ「これまで会えなかった分…一杯一杯…ね」クスッ































【System】
小走やえの愛情度がLv3になりました
小走やえは諦めが悪いようです
小走やえは依存奴隷小走やえルートから外れ
最終更新:2014年01月27日 19:55