高校一年――5月憧EX

【高校一年 ―― 5月】

晴絵「って訳で来週からは県外遠征だよ」

穏乃「遠征!?」キラキラ

玄「なんか遠征とか始めると部活っぽくてワクワクするよね!」

宥「あったかぁい…」ポヤー

灼「…でも…」

晴絵「ん?」

灼「もう外に出ちゃっても…良いの?」

憧「確かに…うちは基本、初見殺しのチームでしょ」

京太郎「だな。玄と宥さんの能力で大きく引き離して最後まで締めるタイプだし」

京太郎「あんまり情報流出するような遠征は控えた方が良いんじゃないか?」

晴絵「うん。まぁ、私も最初はそう思ったんだけどね」

晴絵「ただ、皆がおもったより早く強くなってるから、外で団体戦を味わった方が良いかなって」

晴絵「それに今まで無名だった阿知賀との合宿受け入れてくれるなんて強豪校手前のチームばっかりだしね」

晴絵「インターハイ出場には問題ないよ」

憧「ま…それもそうか」

京太郎「まぁ…それなら良いんだけどさ。でも…」

晴絵「ん?」









京太郎「俺たちはどうすりゃ良いんだ?」

α「馬鹿。女子部の遠征に付き合えるはずないだろ」

β「ま、仲良くお留守番してようぜ」

晴絵「勿論、男子の方も来れるわよ」

α「えっ」

β「い、いやいや、それまずくないですか?」

晴絵「大丈夫大丈夫。別にそんな車中泊とかするほど遠くには行かないし」

晴絵「それに相手さんも男子も是非にって言ってくれたから」

京太郎「…なぁ、レジェンド、それってもしかして…」

晴絵「え?私、何も言ってないよ?」

晴絵「ただ、京太郎が阿知賀に来た事を言っただけだし…」

α「…だからって普通インターミドル覇者が雑用やってるとは思わないよな…」

β「汚いな…流石大人汚い」

晴絵「はい。そこうるさーい」

晴絵「それより遠征に付き合えるんだから素直に喜びなさい」

α「いや…我が身の内に喜びがないかと言えばウソにあるが…」

β「だからと言って…そういうズルはなー…」

晴絵「仕方ないでしょ。こうでもしないとうちとの合宿相手なんて捕まらないんだから」










京太郎「まぁ、俺はその辺、のらりくらりと躱せば良いんだろ」

晴絵「さっすが、京太郎は分かってるぅ」

京太郎「面倒だけどその辺、女子部の為だと思えば我慢もできるしな」

京太郎「それより県外って事は足が必要だと思うけど…どうするんだ?」

晴絵「え?そんなの勿論、レンタカーに決まってるでしょ」

京太郎「レンタカーって簡単に言うけど…」

憧「男子女子合わせて八人…ハルエ含めたら九人よ?」

穏乃「うーん…結構大きな車が必要?」

灼「でも、小型バス使うほどじゃない…微妙な人数」

宥「そもそも…うちのおさいふはあんまりあったかくないし…」シュン

晴絵「大丈夫よ。その辺、なんとかする良い案があるから!」

京太郎「良い案って?」










晴絵「京太郎が膝の上に一人載せれば良いのよ」

憧「!!」

穏乃「!!!」

灼「!!!!!?」












京太郎「あのなー…そう簡単に言うけれど…」

憧「い、いや…でも、名案じゃない?」

穏乃「そうだよ!」

灼「ハルちゃんの隣か…京太郎の上か…どうしよう」ブツブツ

京太郎「いや…でも、県外つったら最低でも一時間以上乗ってる事になるんだぞ?身動きだって取れないし…」

憧「あ、あたしは別に大丈夫よ。別に一時間でも二時間でも…」

穏乃「う、うん!私も京ちゃんなら…一日中でもオッケーだよ!」

灼「…ハッ京太郎にハルちゃんの隣に座って貰ってその上に乗れば全部解決…」

α「…いや、あの…それだったら俺ら自腹で電車とか使うんで…」

β「そ、そうそう。電車移動とかも遠征で慣れてるし」

憧「ダメよ!!」クワッ

穏乃「そうだよ!!皆一緒じゃないと!」

灼「…ハルちゃんの隣は譲らない…」ゴゴッ

晴絵「」ニヤニヤ

α「…おい、どうすんだよこれ…」

β「流石にちょっとこれは考慮してねぇぞマジで…」

京太郎「いや、でもさー」

晴絵「ん?」









京太郎「それだったら憧としずが一緒の方がよくないか?」

晴絵「え?」

京太郎「だって、うちで一番小柄な組み合わせだし、それに同性だしさ」

京太郎「俺らは横にかさばるし一番後ろにでも押し込んだ方が良いだろ」

京太郎「それに男慣れしてない宥さんや憧の隣にαやβ置けないし…」

京太郎「灼はレジェンドの隣は良いだろうから、それが一番、しっくり来る組み合わせだと思うぞ」

晴絵「え…あ…あれー…?」

穏乃「ぅ…あ、憧ぉ…」

憧「ちょ、ちょっとまって…!今、必死に考えてるから…!ぅぅーん…」

灼「むむむ…」

京太郎「何がむむむだ。ま、とりあえず当日どんなのをレジェンドが借りてこられるか次第だけど」

京太郎「とりあえずそっちの方向で良いんじゃないか」

憧「…そ、そう…ね。と、当日…当日なし崩し的に席を埋めてしまえば…」

灼「…協力する」

穏乃「えっと…なんだかよく分からないけど…私も手伝うよ!」

α「…これ俺らが誰かの隣になるのは避けられない流れか?」

β「みたいだな…あぁ…すげーきまずい…」










京太郎「(とりあえず移動に関してはなんとか決まったようでよかった)」

京太郎「(何故かαとβが必死になってレジェンドに抗議してたけど…)」

京太郎「(まぁ、あいつらも良い奴だし、なんとかなるだろ多分)」

京太郎「(にしても…遠征かー)」

京太郎「(大分、久しぶりだな…)」

京太郎「(ま…俺自身は参加出来ないけど…でも)」

穏乃「うあー今日もつかれたー」

憧「流石に腕あがんないわもー」

京太郎「(…ちゃんとこいつらのフォローやってやらないと…な)」

京太郎「(ってアレは…)」

穏乃「うぁ?」

穏乃「あれ…晩成の制服っぽいけど…」

憧「あ…」








憧「初瀬!」

初瀬「あこ…!」

憧「おっひさっしぶりー!げんきー?」

初瀬「おまえ…なんで…」

憧「え?」

初瀬「なんで晩成に来なかったんだよ!」

憧「あら…」

京太郎「…憧、お前、もしかして…」

憧「……いやぁ」ペチン

京太郎「いやぁじゃねーよ」ムニー

憧「あうぅぅ…だ、だって…頭一杯でぇ…」ジタバタ

京太郎「うっせー。理由になるかよ」

京太郎「…つか、悪いな初瀬。俺もちゃんと伝えてれば良かったな…」

初瀬「あ、うん…そ、それは良いんだけど…」

京太郎「あ、そうだ。しずは初めてだよな」

京太郎「こっちは初瀬。阿太中で一緒だった友達だよ」

京太郎「で、こっちは高鴨穏乃。俺達の幼なじみで…って何度か話には出てたし知ってるよな」

穏乃「どうもー」ペコリン

初瀬「あ…ど、どうも…」ペコッ









初瀬「って三人ともその制服…まさか阿知賀に進学したのか?」

憧「ふにゅぅ…」

京太郎「…あぁ。そうだ」

初瀬「なんで阿知賀なんかに…!須賀だって憧だって…麻雀頑張ってたでしょ!?」

初瀬「そもそも…今、阿知賀に麻雀部あんの?ここ数年エントリーすら見てないよ!」

憧「しょれが…ふにゅん」

京太郎「…はぁ。ほら」パッ

憧「そ、それがあるんだな」

初瀬「!?」

初瀬「ま、まさか…憧…アンタ…」

初瀬「晩成だと小走先輩がいるからって無理矢理、須賀を誘惑して…!!」

憧「ち、違う違う!さ、流石にそこまでやってないから!!!!」









憧「昔の仲間と全国で戦いたい。た、ただそれだけよ」

憧「…ま、まぁ…勿論、小走先輩の事を意識していなかったとは言わないけど…」ボソッ

初瀬「…あぁ、やっぱり…」

憧「やっぱりって何よ…!」

初瀬「でも…それじゃ無理」

憧「え?」

初瀬「阿太中でお前と同じくらいの実力だった私が、晩成ではレギュラーどころか補欠にさえ入れなかったんだから!」

初瀬「そんな晩成にお前のいる阿知賀が負けるはずがない!」

穏乃「アワワ」オロオロ

憧「去年までだったらそうかもしれない」

憧「でも、今年のうちは…優秀な雑用と優秀なコーチがいるんだよね」

初瀬「!?」

プップー

晴絵「おーいそこの桃色青春三人組ー」

晴絵「送ってこうかー?」

穏乃「らっき!」

憧「噂をすれば…」

憧「じゃ、またどこかの卓でね!」

初瀬「あ…ちょ…!」

京太郎「…あの…初瀬。その…」









初瀬「…良いよ。アレで憧が頑固なのは分かってるから」

初瀬「…寧ろ、憧がアンタを引き込んだんでしょ?」

京太郎「…いや…その…」

初瀬「…良いってば。それより…憧の事ちゃんと見ててあげてよ」

初瀬「今回の事で色々と思うところはあるけど…でも、私はまだ憧の親友のつもりなんだから」

初瀬「泣かせたら絶対にゆるさないからね」

京太郎「…あぁ。分かってる」

京太郎「じゃ…またな」バタン

初瀬「…うん」

晴絵「じゃ、出発しんこー!」

穏乃「なすのおしんこー!」キャッキャ

ブロロロロ

やえ「…どしたー?」

初瀬「あ…小走先輩、あの…」

やえ「…あれか?新子か」

初瀬「え…あ、あの…」

やえ「大丈夫。幾らあっちが強くなっても…晩成は負けんよ」

やえ「そう…絶対に…絶対に…阿知賀になんか…負けたりしない…」メラメラ

初瀬「(あー…これ完全に火がついちゃってるじゃん…須賀の奴…責任取れよもう…)」









京太郎「で、憧…申開きは?」

憧「…あの…は、初瀬が頑張って晩成に入ろうとしてるの見て…」

憧「あたしの所為で初瀬まで阿知賀に入るって言い出したら大変だと思って…」

憧「だから…あの…中々、言い出せなくて…」

京太郎「ほぅ」ムニー

憧「わ、わるひゃったってばぁぁ…」

京太郎「ったく…悪いのは俺じゃなくて初瀬にだろ」パッ

憧「う…うん…」

憧「ごめん…ね」シュン

京太郎「いや、良いよ」

憧「…怒ってる?」

京太郎「…怒ってるってか…失望した」

憧「ぅ…」ジワッ

京太郎「…ったく冗談だよ」ポンポン

京太郎「お前にだって出来ない事の一つや二つあるだろうし」

京太郎「ああやって普段以上に明るく話しかけたのも何とかしなきゃって思ってたからなんだろ?」

憧「…うん…」









京太郎「それを俺に言ってくれなかったのは多少、ショックではあるけどな」

憧「だって…京太郎には失望されたくなくて…」

京太郎「今更、そんなもんで失望したりするかよ」

京太郎「意外とお前がダメになりやすい奴なんてこれまでの付き合いで分かってるんだ」

京太郎「それを元の憧に戻す手伝いくらいはいつでもなんでもしてやるしさ」

憧「…うん」

京太郎「だから…またこんど、正式に初瀬に謝りに行こうぜ」

憧「…一緒に行ってくれる?」

京太郎「当たり前だろ。つか、そうじゃないと…お前逃げ出しそうだし」

憧「そ、そこまでヘタレじゃないわよ…」

京太郎「じゃ。一人で行けるか?」

憧「…それは…ダメ…かも」ギュッ

憧「…迷惑だって分かってるけど…一緒が良いな」

京太郎「オッケ。任せろよ」

京太郎「ま、安心しろよ。初瀬はアレで憧には甘いからさ」

京太郎「ちゃんと謝れば許してくれるって」

憧「…そう…かな」

京太郎「あぁ。だから、安心しろ」ナデナデ

晴絵「(…本当に甘いのはあんたらのやりとりなんですけどねー)」

晴絵「(まったく…これが私の車の中って分かってるのかな…いや…分かってないよなー…)」

穏乃「ぅー…」

晴絵「(…少なくとも分かってたら穏乃の前であんなベタ甘なやりとりしないだろうし…)」

晴絵「(仕方ないとはいえ…本当に難儀な子…)」




























【System】
新子憧の愛情度がLv14になりました
新子憧は後日一緒に謝りに行ったようです
最終更新:2014年01月25日 13:41