中学三年――2月灼編

【中学3年 ―― 2月】

京太郎「(んーむ…暇だ)」

京太郎「(…バイトもないし、部活もないし…)」

京太郎「(勉強もしなくて良いし…ゲームも昔ほど熱中出来ないし…)」

京太郎「(せめて外に雪さえ降ってなければなぁ…)」

京太郎「(しずと一緒に外を走り回る事が出来たんだけど)」

京太郎「(流石にしずでも雪が降った山を走り回ろうとしないし)」

京太郎「(…いや、未だに現役で山を駆けずり回ってるのがおかしいんだけどさ)」

京太郎「(今じゃ体力また逆転してついていくのが精一杯になったし…)」

京太郎「(…とりあえず身体でも鍛え直すか…)」ブルル

京太郎「(っとメール…しずからか)」

京太郎「(なになに…皆で阿知賀に集まって来年からの事話し合うけれど来ない…か)」

京太郎「(そうだな…俺も来年からは阿知賀の麻雀部員になる訳だし…)」

京太郎「(とりあえず行く…っと)」メルメル











【阿知賀学院】

京太郎「(と…阿知賀にやって来た訳だけど…)」

京太郎「(…ま、三年じゃほとんど中変わってねぇよな)」

京太郎「(まぁ、実際はいろいろ変わってるのかもしれないけど…そこまでジロジロ見て回ってないし)」

京太郎「(受験の時も会場行って帰ってきただけだからな)」

京太郎「(…会場前でソワソワして待ってたしずを放置して中を見て回るような鬼畜な真似は出来ないし)」

京太郎「(そういや結果伝えた時…あいつ俺以上に喜んでくれたっけか)」

京太郎「(憧も頬をにやけさせるくらい喜んでくれていたし…」

京太郎「(そんな奴らに囲まれて…俺は幸せものだな)」

京太郎「(だからこそ…俺は…)」ガララ

京太郎「よーす」

穏乃「あ、京ちゃん」

憧「京太郎、おっそい」

灼「…もう皆揃ってる」

玄「えへへ、おねーちゃんもいるよ」

宥「あったかぁい」ホカホカ

京太郎「…ってこの雪の中、宥さん来て大丈夫だったのか?」

宥「う、うん…寒かったけど…でも、皆に会いたいから頑張ったよ…」ニパー









京太郎「で…話し合いって?」

穏乃「えーっと…」

憧「…それがさ。皆に会いたいからって適当に言ってたみたいなのよ」プニプニ

穏乃「ぅー…ご、ごめんてばぁ…」

京太郎「なるほど。ま、俺としては暇つぶしが出来て嬉しかったけどな」

穏乃「えへへ…ほらー」

憧「ほらじゃないでしょ、まったく…」

穏乃「じゃあ、憧は皆に会えて嬉しくないの?」」

憧「そ、そういう訳じゃないけど…」

玄「こうして皆揃ったのってクリスマスの時以来だもんね」

宥「クリスマス…あったかくない…」ブルッ

玄「あぁ!お、おねーちゃんごめん!!!」アワワ

灼「…京太郎の所為で宥さんがクリスマスって言葉がトラウマに…」

穏乃「謝れ!京ちゃん!」

憧「そうよ。謝りなさい」

京太郎「え…えぇ…その…ご、ごめん…」








灼「…でも、来年のこと…ちゃんと決めておかないといけな…」

京太郎「来年?」

灼「うん。今、ここは顧問もいない同好会状態だから…」

京太郎「あー…人数は来年からは足りてるけど…顧問がいないのか」

灼「そう。一応、こっちでも前から話をしてみたけれど…」

玄「皆既に担当持ってて一杯みたい」

宥「だから、同好会状態でどうするかってのが問題なの…」フルフル

京太郎「同好会だと大会に出られないとか?」

玄「その辺は大丈夫だよ。ちゃんと人数が足りてればオッケーみたい」

灼「ただ…やっぱり大人の人に動いて貰わないと合宿とか遠征の打ち合わせ出来ない…」

京太郎「そっか…合宿や遠征費用出すくらいなら出来るんだけど…それはなー…」

玄「ただでさえ今の阿知賀麻雀部は無名だからね…」

憧「そこらの相手に負けるつもりはないけど…そうやって合宿や遠征しないと腕も上がらないし」

穏乃「和とも…遊べなくなっちゃう…」

京太郎「…そっか」










京太郎「…よし。その辺は俺に任せろ」

穏乃「え?良いの!?」

京太郎「あぁ。麻雀以外の部分は全部俺がやってやる」

憧「…でも…」

京太郎「俺がどれだけ阿太中で雑用の腕を磨いてきたか憧は知ってるだろ?」

京太郎「それに一応、αの仕事だって手伝ってたし、遠征の打ち合わせにも参加した事あるからな」

京太郎「多少のコネはあるし、その辺は俺がなんとかする」

玄「…本当?」

京太郎「あぁ。だから、お前らは大船に乗ったつもりで麻雀してろよ」

穏乃「でも…」

京太郎「良いから。俺に気を使うなって」

京太郎「止めるって約束した以上、未練なんてないさ」

京太郎「それよりも俺が出来ない分、強くなってくれた方が嬉しい」

憧「…じゃあ…やりましょうか」

玄「じゃあ、卓の電源入れるね」

灼「入るのはどうする?」

宥「あ、じゃあ、私、最初は見てるね」スス

玄「…そう言ってさり気なくストーブの側に移動するおねーちゃん…」

京太郎「まぁ、今日は寒いから仕方ないって」










京太郎「(…と言ったもののだ)」

京太郎「(どうにかするアテなんてあるはずもない)」

京太郎「(当たり前だけど…俺はまだ阿知賀にすら入っていない部外者なんだ)」

京太郎「(インターミドルチャンプとして多少は名前も売れているけど…それだけでどうにかなる訳じゃないし)」

憧「それポン!」

穏乃「あ、ずっこい!」

玄「えっと…じゃあ、これかな」

灼「…あ、それロン」

玄「ふぇぇぇ!?」ズガーン

宥「あったかぁい…」

京太郎「(…でも、こいつらがこうやって楽しそうにしているところを…崩してやりたくはない)」

京太郎「(なりふりかまわず他の人に頼ってでも…なんとかこいつらをインターハイに連れて行ってやらないと…)」


ガララ


京太郎「ん?」

晴絵「あ…」










玄「あれっ赤土さん!」

憧「おねーちゃんとハルエ…どうしたの!?」

穏乃「先生!!」

灼「っ…!」ビクッ

晴絵「皆…どうしてここに……?」

京太郎「…いや、寧ろそれはこっちのセリフなんだけど…」

憧「…もしかして今度こそ首になっちゃったの!?」

穏乃「え…そうなの先生!?」

玄「え?え…じゃあ…うちに働きに来る?」

晴絵「う…い、いや…首になったっていうか休職中って言うか…」

晴絵「って言うかあんたら私の事なんだと思ってるのよ…」

望「あはは」











灼「…わ、私…」

京太郎「ん?」

灼「私…帰る…」ダッ

京太郎「え…お、おい…!」

晴絵「…あちゃー…やっぱこうなっちゃったか…」

京太郎「…レジェンド、灼と何かあったのか?」

晴絵「別に…何かあった訳じゃないよ」

晴絵「ただ…多分…こうなるだろうなってそう思ってたから…」

京太郎「…レジェンド?」

晴絵「…私の所属してたチーム…解散になっちゃって…」

晴絵「私が活躍する事望んでた灼には…多分、失望させたんだと思う」

晴絵「私が試合に出る度にメールくれるほど楽しみにしてたし…」

京太郎「……そっか」

京太郎「…んじゃ、任せろ」

晴絵「…え?」











京太郎「あいつの足早くないし今から走れば追いつけるしな」

晴絵「でも…」

京太郎「良いから。あいつだってこういうの望んでた訳じゃないだろうし」

京太郎「多分…レジェンドに会えて一番嬉しいのは灼だったんだからさ」

京太郎「それなのにこうして逃げ出すって事はあいつの心の整理が出来てない証だ」

京太郎「それなら…心の整理さえ出来れば…きっとあいつはここに戻ってくる」

京太郎「いや…俺がきっと連れ戻す。だから…そこで待ってろ」

晴絵「…京太郎」

憧「…まったく…そういう所譲れない馬鹿なんだから」

穏乃「頑張ってね、京ちゃん!」

玄「京太郎君ならきっと何とか出来るよ!」

宥「…灼ちゃんの事お願いね」

京太郎「あぁ。それじゃ…ちょっと走ってくる…!」ダッ












灼「はぁ…」

灼「(…私…何をやっているんだろう…)」

灼「(ハルちゃんに会えて…嬉しかったはずなのに逃げ出すなんて…)」

灼「(…会社の経営不振なんて…ハルちゃんにはどうしようもない理由だってわかっているのに…)」

灼「(…全然、納得出来なくて…失望…して…)」

灼「(私…本当…子どもだ…)」

灼「(普段…京太郎にあんなふうに大人ぶってるけど…)」

灼「(心の整理一つまともに出来なくて…)」

灼「(来るかもしれないって覚悟してたのに…こうして逃げ出しちゃって…)」

灼「(麻雀も途中だったのに…こんなんじゃ…)」

灼「(…ハルちゃんにも京太郎にも失望されて…)」

京太郎「おーい…!」

灼「っ!」ビクッ

灼「き、京太郎…!」

京太郎「はぁ…良かった。思いの外、近くにいたな」













灼「な、何の用?」

京太郎「あーすげー率直に言うと…お前を連れ戻しに」

灼「っ!放っておいて…!」

京太郎「放っておけるかよ。普段、クールな顔してるのにレジェンドが関わるとこうなんだからさ」スッ

灼「え…?」

京太郎「…とりあえず俺のコート着ろよ。そのまんまじゃ寒いだろ」

灼「そんな事…くしゅんっ!」

京太郎「…ほらな?」

灼「ぅ…」スッ

京太郎「どうだ?暖かいか?」

灼「…うん」

京太郎「そりゃ良かった」

灼「…京太郎は?」

京太郎「ん?俺は別に普段から外走り回ってるし今でも全然大丈夫」

京太郎「ま…灼が素直に部室に戻ってくれたら俺も安心するんだけどさ」

灼「それは…」











京太郎「…出来ない?」

灼「…ぅ…ん」シュン

京太郎「ま、それならそれで良いけどな」

京太郎「自分のコート忘れて飛び出すくらい冷静じゃなかったんだろうし」

灼「…ごめんね」

京太郎「まぁ、俺も後でお前のコート受取っとけばよかったって思った辺り、抜けてるんだけどさ」ハハッ

京太郎「だから…コート代として聞かせて欲しいんだけどさ」

京太郎「そもそもどうしてレジェンドから逃げ出したんだ?」

京太郎「レジェンドの事嫌いになったのか?」

灼「…そんな事ない…!」

京太郎「じゃあ、どうして?」

灼「そ…れは…」

灼「…会うのが…気まずかったから」

京太郎「…気まずい?」










灼「…ハルちゃんが阿知賀に戻ってきた理由…私も知ってるの」

灼「ハルちゃん関連の記事は集めてるし全部スクラップにしておいてあるから」

京太郎「…ホント、お前はレジェンドの事大好きなんだな」

灼「だ、だって…ずっと憧れてたんだもん…」カァ

京太郎「あぁ。分かってる分かってる。…それで?」

灼「…うん。だから…経営不振で仕方ないって事も分かってるの」

灼「…ハルちゃんは何も悪く無い…仕方のない事なんだって」

灼「でも…私…」

京太郎「…納得出来ない?それとも…失望した?」

灼「…っ!」ビクッ

京太郎「…ま、なんだかんだで五年は一緒だからさ。多少は俺もお前の事分かるよ」

京太郎「…お前がどれだけレジェンドに期待してたのかって…それくらいは…さ」

灼「ぅ……そ、その…」














京太郎「…でも、それで良いんじゃないか?」

灼「え?」

京太郎「誰だって…納得出来ない事もあるし失望する事だってあるだろ」

京太郎「ソレが悪いなんて言えるほど俺は理知的な訳じゃねぇし」

京太郎「何より…お前はそれを悪いと思ってるんだろう?」

灼「…え?」

京太郎「気まずいってのは、お前がそういう自分を恥じていなきゃ、起こらない感情だしな」

京太郎「自分の勝手な感情をレジェンドにぶつけたくないからこそ…あんな風に逃げ出した」

京太郎「それはお前がまだレジェンドの事で、仲良くしたいとそう思っているからだ」

京太郎「…違うか?」

灼「…ううん…違わない…」

京太郎「…だったら、その気まずい気持ちは俺が引き受けてやるよ」

京太郎「幾らでも…俺にぶつけて来い」

京太郎「俺は今まで…お前にそうして貰ってきたんだ」

京太郎「たまには恩返しの一つでもさせろよ」

灼「……」











灼「…良いの?」

京太郎「ん?」

灼「私…酷い事言うかもしれない…」

京太郎「そんなの今更だろ」

京太郎「つーか、日常的にお前には酷い事されてるっての」

京太郎「俺はもうそれに慣れてるんだ」

京太郎「だから、今更、遠慮なんてすんな」

京太郎「俺をレジェンドだと思って…言いたい事全部言ってやれよ」

灼「……じゃあ…じゃあ…ね」

京太郎「…おう」

灼「……」

京太郎「……」ドキドキ

灼「…来て」

京太郎「え?」

灼「…こっち来て…コート一緒に…着よう?」カァ












京太郎「えーっと…どういう事?」

灼「だ、だから…ふ、二人羽織みたいにこうやって…」

京太郎「…それがレジェンドに言いたい事なのか?」

灼「だ、だって…き、京太郎がハルちゃんだと思ったら…」

灼「こんな寒い中で、コートもなしで可哀想だって思って…」

京太郎「お前、今までまったく可哀想だって思ってなかったのかよ」

灼「うん」キッパリ

京太郎「くそっ…!折角コート貸してやったってのに…!!」

灼「…ふふ。冗談。ちゃんと感謝してるよ」

灼「…でも、だからこそ…一緒に着て欲しいな」

京太郎「…それなら部室に戻った方が早くないか?」

灼「…私、まだハルちゃんに会う決心…つかないから」

灼「…だから、一緒に温まって欲しい」

灼「多分…まだまだ時間掛かるから…」

京太郎「あー…分かったよ」

京太郎「…でも…セクハラとか言うなよ」

灼「…うん。大丈夫…多分」












京太郎「…はぁ」ギュッ

灼「…んっ…♪」

京太郎「…寒くないか?」

灼「うん…大丈夫」

京太郎「にしてもお前…ホントちんまいのな」

京太郎「俺の腕の中にすっぽり収まって…一緒にコート着れるとかよっぽどだぞ」

灼「ロリコンの京太郎には良いでしょう?」

京太郎「ばっ!ろ、ロリコンじゃねぇよ!!」

灼「そう?でも、穏乃の事あんなに意識してるって…」

京太郎「そ、そりゃ、あんなふうに毎日スキンシップ取られたら誰だってだな…」

灼「じゃ…似たようなスキンシップ取ってる私の事意識してくれてる?」クスッ

京太郎「あ゛ー…そっちが狙いかよ…」

灼「…ふふ。どうだろう」

京太郎「あー…あー…くそ…意識…してるよ」

京太郎「…暖かくて抱き心地よくって…ドキドキしてる…」

灼「…う…ん」










灼「私も…ドキドキ…してるよ」

京太郎「知ってる。耳まで真っ赤だもんな」

灼「そ、そういうの言わなくて良いから」ツネッ

京太郎「う…悪い」

灼「…で…その…ね」

灼「…こうしてドキドキしてると…嫌なもの…流れていくみたいで…」

灼「ハルちゃんの事…勝手に期待してた気持ちとか全部…」

灼「…京太郎に吸い取られて…気持ち良いものに変わっていって…」

京太郎「…ん…?」

灼「…本当…京太郎って卑怯…」

京太郎「いきなり何を言い出すんだお前」

灼「鈍感でこっちの気持ちには気づいてくれない癖に…」

灼「こんなに気持ち良くて…暖かくて…」

灼「…こんなんじゃ私…癖になっちゃう…」

京太郎「あー…」










京太郎「…別になっても良いと思うぞ」

京太郎「灼さえ良ければ俺は何時だって…こうしてやるからさ」

京太郎「それでお前が楽になるなら…いくらでも貸してやるよ」

京太郎「普段から頑張ってるお前にご褒美…的な」

灼「…」ツネッ

京太郎「痛っ!」

灼「…まったく…恥ずかしいのは分かるけど…」

灼「…そういう誤魔化しは減点…」クスッ

京太郎「う…いや…だってさ…」

灼「…罰として…京太郎は一生…私のものだから」

京太郎「一生ってお前…」

灼「いや?」

京太郎「そりゃなぁ…」

灼「…じゃあ、こうしてたまに私の事ギュってしてくれるだけで…許してあげる」

京太郎「寛大なお沙汰に感謝しますっと」

灼「ふふ…あ、でも…」

京太郎「ん?」

灼「…私って結構嫉妬深いから…フラフラしてると本当に…私だけのものにしちゃうよ」カァァ

京太郎「ん?私だけのものって?」

灼「…はぁ。憧から聞いてたけど…ここまで言っても気づいてくれないんだ…」

京太郎「え?何を?」

灼「…良いよ。もう…皆、長期戦の覚悟は固めたから」

灼「…阿知賀に来てくれたのなら時間も一杯あるしね」

灼「その間にどうにか振り向かせてあげる」

灼「…だから…覚悟しててね」

灼「女の子って言うのは…案外、あきらめが悪い生き物なんだから」クスッ

京太郎「お、おう…」





























【System】
鷺森灼の好感度がMAXになりました
おめでとうございます、鷺森灼の攻略が完了しました
鷺森灼の攻略が完了した事により阿知賀師弟丼ルートが開拓されました
最終更新:2014年01月25日 13:10