中学三年――8月憧EX

【中学3年 ―― 8月憧EX】

京太郎「(そんな訳でホテルに帰ってきた訳だけど…)」

京太郎「(祝勝会はほどほどに終わった)」

京太郎「(勿論、応援団の皆は思いっきり騒いでた訳だけど…)」

京太郎「(俺はその前に部屋へと帰らされ、休むように言われた)」

京太郎「(体調は大丈夫って言ってるのに、何度も進められたから従ったけど…)」

京太郎「(…でも、そんなに顔色悪いのか?)」スッ

京太郎「(…そうでもないと思うんだけどなー…)」

京太郎「(寧ろ優勝できて気分は良いし、血色だってほどほどだと思うんだけど…)」ピンポーン

京太郎「…ん?」

京太郎「(こんな時間に…一体、誰だろう…)」

京太郎「はーい…っと」ガチャ







憧「あ…京太郎」

京太郎「あ、憧か。どうした?」

憧「…えっと…えっと…あの…」

京太郎「てかお前、目赤いぞ、大丈夫か?」スッ

憧「ふぇ…!?あ…ぅ…」カァ

京太郎「…もしかして泣いてたのか?何があった?」

憧「そ、それは…」

京太郎「…俺に言えない事か?」

憧「…う…ん」

京太郎「…そっか」

京太郎「んじゃ…ほら」ギュッ

憧「ふきゅっ!?」

京太郎「…こうしてれば少しは落ち着くだろ」ギュー

憧「はぅ…ん…♪」









憧「ズル…いよ…」

京太郎「ん?」

憧「こんな風に…して…ズルい…」ギュッ

憧「あ、あたし…諦めようとしてるのに…」

憧「京太郎の為に…引かなきゃって分かってるのに…」

憧「こんな事されたら…諦められなくなるよぉ…」ジワッ

京太郎「…俺の為?」

憧「だって…京太郎…小走先輩の事…」

京太郎「え?あぁ…もしかしてインタビューの奴か」

憧「う…ん…」

京太郎「あぁ、アレ、後で先輩にも言われたけど…告白とかじゃないぞ」

憧「……え?」

京太郎「つか、そもそも俺が先輩に告白するなんて恐れ多いにもほどがあるだろ」

京太郎「やえ先輩は俺なんかよりももっと凄い人がお似合いだって」

京太郎「アレはあくまでも先輩として好意を持ってるってだけで…って憧?」

憧「…え?え?」







憧「え…?つまりアレなの?」

憧「全国放送で好きとか言ってたのに…そういう子どもっぽい奴なの?」

京太郎「…子どもっぽいとか言うなよ。俺は本気で」

憧「しゃらっぷ」カッ

京太郎「は、はい…」

憧「あぁ…もう…あぁ、もうホント…」ハァ

憧「…思いっきり部屋で泣いて損したじゃない…」

京太郎「あー…何の事か分からないけど…ごめんな」

憧「…良いわよ、もう…」

憧「あんたに泣かされるのなんて別に初めてじゃないしね…」

京太郎「ん?」

憧「なんでもなーい…」スネー







憧「…それより告白じゃなかったって事は今日、暇してる?」

京太郎「あぁ。特に予定はないぞ」

京太郎「WはYと一緒に出かけたし、αとβは引き継ぎやらで忙しくしてるし」

憧「…そっか」

憧「じゃあ…あたしと東京見物行かない?」

京太郎「見物?」

憧「…うん。あたし応援団として来た事はあるけど、その時は一杯一杯だったし」

憧「結局、去年は観光も何もなかったからさ」

憧「京太郎も似たようなものでしょ?」

京太郎「あ、いや、俺は…」

憧「ん?」

京太郎「実はやえ先輩とペア大会の時に…」

憧「へーほーふーん…そうなんだー…」ジトー

京太郎「ぅ…」

憧「告白した訳じゃないのにそうやって二人でデートしちゃうんだ…」ジトー

京太郎「ぅぅ…」








憧「…ま、アンタがそういうのあんまりにも気安いって分かってるから何も言わないけどね」

憧「でも…それならエスコートしてくれるでしょ?」

憧「…つか、出来ないって言ったらあたし今日一日中あんたの事離さないから」

憧「誰がなんと言おうと一日中あんたにべったりくっついて邪魔してやるんだから」ゴゴ

京太郎「そ、それは流石にかんべんしてくれよ…部屋にはWもいるんだしさ…」

憧「…じゃ、分かるでしょ?王子様」

京太郎「…はいはい。んじゃ…久しぶりにお姫様のエスコートといきましょうか」

憧「…久しぶりだからってちゃんと優しくしてくれなきゃ許さないんだからね」クスッ

京太郎「勿論、王子様は何時だってお姫様の為にいるもんだからな」

憧「…うん♪」ニコー








京太郎「(それから憧と色んなところを巡った)」

京太郎「(原宿とか秋葉原とか色々)」

京太郎「(勿論、名所って言えるところ全部回れた訳じゃないけれど)」

京太郎「(でも、憧と繋いだ手から嬉しそうにしてるのが伝わってきて)」

京太郎「(そんな憧を見るのが俺も嬉しくて…楽しくて)」

京太郎「(気がつくと朝に出たはずなのにもう夕方で)」

京太郎「(そろそろ帰らなきゃいけない時間になった)」

京太郎「(でも、何となくそれが寂しくて、無性に今の時間を引き伸ばしたくて)」

京太郎「(俺達の足はどちらからともなく鈍り、進みを遅くした)」








憧「あー…もう終わりかぁ…」

京太郎「…寂しいか?」

憧「…そりゃ…まぁ…ね」

憧「個人戦終わったらすぐ帰らなきゃいけないし…観光してる暇はないし」

憧「…それにそれが終わったら今度は受験じゃない?」

憧「勉強頑張らないといけないし…」

京太郎「憧の成績なら何処でも入れるだろ」

憧「そりゃ…大体、何処でも入れるけどね」

憧「でも…もしかしたら県外に行くかもしれないし…」

京太郎「県外?どうして?」

憧「…だって、京太郎が…」

京太郎「俺?」

憧「…県外からもスカウト来てる…でしょ?」

京太郎「まぁ…そうだな。来てるけど…」







憧「そ、それなら…あたしもっと勉強しないとついていけないかもしれないし…」

京太郎「え?」

憧「だって…あんた目を離したらすぐ成績落とすし…あたしが起こさないと起きないし…」

憧「一人だけ…け、県外とかに行ったら…し、心配で夜も眠れないのよ」

憧「それに他の子とイチャイチャしてると思うとムカムカするし…小走先輩とだって急に仲良くなってたし…」

京太郎「あーそれはまぁ、色々あってだな…」

憧「分かってる。分かってる…けど…あたし…」ギュッ

京太郎「…憧?」

憧「…京太郎と…離れたくない…よ」

憧「ずっと京太郎と…一緒にいたい」

憧「…京太郎じゃなきゃ…ダメ…なの」

憧「他の人はまだ怖くて…だから…」








京太郎「そう…だな」

京太郎「俺も…同じ気持ちだよ」

京太郎「俺も憧と…こうやってずっと一緒にいたい」

憧「…え?」

京太郎「…馬鹿。何驚いてるんだ。当然だろ」

京太郎「今までずっと一緒だったんだぞ。今更、離れる事なんて考えられるかよ」

憧「ホント?本当に…そう思ってくれてる?」

京太郎「本当だって。その証拠に県外のスカウトは全部その場で断ってるからな」

憧「そ、そうなの?」

京太郎「あぁ。俺はここが居心地良いからな」

京太郎「精々行っても晩成くらいなもんだよ」

憧「晩成かぁ…それくらいなら今の成績を落とさなかったら…」

京太郎「ん?」

憧「あ、いや…ごめん。何でもない」カァ







京太郎「それに…俺はお前のこと護ってやるって言ったからな」

憧「ふきゅっ!?」

京太郎「リハビリだってまだ途中だし…憧の事放っておくつもりはねぇよ」

京太郎「お前が好きな男出来るまで、ちゃんと抱枕もしてやるし」

憧「…ふふ」

京太郎「ん?」

憧「…じゃあ、一生、京太郎はあたしの抱枕だなって思って」

京太郎「そうか?先の事なんて分からなくない?」

憧「分かるわよ。絶対にそう」

憧「…言ったでしょ。あたし…京太郎以外にはいないって」

憧「…あたしそんなに軽い女じゃないから」

憧「あんた以外には…そんな事絶対にしない」

憧「あたしは…子どもの頃からずっと…」スッ

京太郎「…憧?」

憧「…あは。もう着いちゃった」

憧「ここでお別れ…だね」

京太郎「あー…いや…」

憧「…ん?」

京太郎「…もうちょっと一緒にいないか?」

京太郎「晩飯まで…まだ時間あるしさ」

京太郎「…このまま手を離すの…ちょっと惜しくて」








憧「ふふ…そんなに…あたしの手、好き?」

京太郎「…つーか、お前の全部が好き」

憧「ふぇっ?!」カァァ

京太郎「距離感とか空気とか…返し方とか」

京太郎「そういうの全部、ひっくるめて俺は憧の事好きだよ」

憧「う…ぅ…」マッカ

憧「き、急にドキドキする事言わないでよ…」

京太郎「はは。悪い」

京太郎「でも、さ。憧の事好きなのは事実だから」

京太郎「別にやえ先輩だけじゃないんだぞ」

憧「…で、しずとかも勿論好きなんでしょ?」

京太郎「え?そりゃ友達なんだし当然だろ」

憧「はー…分かってたけど…分かってたけどね」

京太郎「…あれ?落ち込んでた原因ってコレじゃなかった?」

憧「…ニアピン賞はあげるし努力は認めるけど…付け足しが要らなかったかなぁ…」

京太郎「付け足し?」

憧「好きで止めといてくれたら100点満点あげてたって事」

憧「…ま、それが出来ないのがあんただってもうこの六年で思い知ってるけど」クスッ

憧「それに…少し安心したのもあって」

京太郎「安心?」

憧「そう。雰囲気変わったけど…そういうところは京太郎のままなんだなって」

憧「…だから…あたし…ううん…あたしも…ね」



































憧「あたしも…大好きだから…ね」

























【System】
新子憧の愛情度がLv10になりました
新子憧は進路のことを真剣に考えているようです
最終更新:2014年01月24日 04:47