小学4年生――10月

【小学4年 ―― 10月】

京太郎「(そんな訳で始まった練習だけど…)」

京太郎「(案の定、上手くいくはずなんてなかった)」

京太郎「(そもそも俺は今までずっと大道具係か木の役くらいだったんだぞ…)」

京太郎「(それなのにいきなり主役級に抜擢されてどうにか出来る訳がないっての…)」

京太郎「(勿論、俺だって一生懸命やってるけどさ…まぁ…その…何ていうか…)」

京太郎「(やっぱりどうしても…新子の事意識しちまうんだよ…)」

京太郎「(分かってる。これは所詮、お芝居にすぎないって事くらい)」

京太郎「(でも、今まで憎らしいことばっかり言ってた奴がいきなりおしとやかになって…にこやかに手を取ってくるんだ)」

京太郎「(幾らそれが演技だって分かってても…ドギマギしちまう)」

京太郎「(あーもう…どうしたんだよ俺…)」

京太郎「(本番まで後もうちょっとなのに…こんなんじゃ情けねぇ…)」




憧「…ふぅ。京太郎?」

京太郎「あ…悪い…」

憧「…いや…良いんだけれど…ね」

憧「あたしもまだ暗記が完璧って訳じゃないし、こうして通しで演技出来るのは有難いから」

憧「…でも、そんな腑抜けた調子じゃ…何時までも上達しないわよ」

京太郎「…ごめん」

憧「…とりあえず…ちょっと休憩しよっか」

憧「お茶入れてくるから適当にくつろいでおいて」

京太郎「…あぁ」


バタン


京太郎「あー…ぅあー…」ドサ

京太郎「…何やってんだろうなぁ…俺」

京太郎「(新子が女だって事くらい…分かってた事だろ)」

京太郎「(それをちょっと意識したくらいでなんでこんなガチガチになってるんだ…)」

京太郎「(これじゃ…折角、新子の部屋にあげて貰って練習してる意味もねぇじゃねぇか…)」




京太郎「(いっそ王子役降りるか…?いや…でも…)」

京太郎「(新子や高鴨を嵌めようとした奴らに…王子役任せるのもな…)」

京太郎「(もう既に新子相手に本当にキスはしないって約束してるけど…)」

京太郎「(あの様子じゃ無理矢理やりかねないし…)」

京太郎「(だからって高鴨は今からじゃセリフ覚えられそうにないしなぁ…)」

京太郎「(結局…俺が頑張るしか無い。そんなのは…分かってるんだけど…)」

京太郎「(…あー…くっそ…本当になっさけねぇ…)」

京太郎「(キスくらいなんだってんだよ…たかだか顔を近づけるだけじゃねぇか)」

京太郎「(新子がおとなしいからなんだって言うんだよ、体調悪い日はそれくらいあったじゃねぇか)」

京太郎「(あー…もう…)」


ガチャ


京太郎「あ…」







憧「ただいま。大人しくしてた?」

京太郎「んな子どもじゃねぇんだから…」

憧「子どもでしょ。…ほら」

京太郎「お…カルピスじゃん」

憧「カルピスで喜ぶなんて子どもの証拠じゃん」

京太郎「いや、カルピス美味しいし…仕方ねぇじゃん」

憧「ふふ…そういう事にしといたげる」

京太郎「んだよ…ったく…」チュー

憧「…美味しい?」

京太郎「ん…つか、お前の家のカルピス結構濃いのな」

憧「あんたの家のが薄過ぎるのよ」クスッ

京太郎「うちはケチだからなぁ」

憧「その割にはお家は結構大きいじゃない」

憧「カピバラって珍しいペットだって飼ってるしさ」

京太郎「親父の趣味だよ。昔からカピバラ飼うのが夢だったらしい」

憧「犬とか猫とかなら分かるけど…なんでカピバラだったんだろ…」

京太郎「親父が言うには夢でカピバラが羽生やしてタコスの国に行ったくれたかららしい」

憧「…タコスの国?」

京太郎「あぁ。タコスの国」






憧「…どんな国なのよ…」

京太郎「親父が言うにはタコスに足が生えたタコス人が暮らしてる平和な国らしい」

憧「凄いメルヘンチックな光景ね、想像したくないくらい…」

京太郎「まぁ、夢だからな」

憧「…夢ならしょうがないか」

京太郎「そうそう」

憧「……」

京太郎「……」

憧「……」

京太郎「……」

京太郎「(か、会話が続かねぇ…)」

京太郎「(何時もだったら何も考えずにポンポン会話が進むのに…)」

京太郎「(失敗続きでどうにもぎこちないっていうかなんて言うか…)」

京太郎「(迷惑かけっぱなしで…どうにも…こう…話題が出てこないっていうか…)」





憧「…ごめんね」

京太郎「…え?」

憧「あたしの所為で…ややこしい事に巻き込んじゃって…」

憧「…あたし相手に王子役なんて恥ずかしいよね…本当にごめん…」シュン

京太郎「…あ…」

京太郎「(…こいつ…こんな風に思ってたのか)」

憧「でも…あ、あたし…京太郎以外の男の子となんて…絶対嫌だし…あの…だから…」

京太郎「…やめねぇよ」

憧「…え?」

京太郎「…大丈夫。上手くいかないからって王子役から逃げたりしねぇよ」

京太郎「引き受けた分は…責任取ってやる。だから…そう心配すんな」

憧「あ…」




京太郎「それに…な。お前は一つ…勘違いしてるぞ」

憧「…え?」

京太郎「俺は別に…新子の相手が恥ずかしいからとか…そんな風に思ってない」

京太郎「俺は…俺は…その…」

京太郎「(い、言って良いのか?あんな情けない事…本当に言って良いのか?)」

京太郎「(言って…幻滅されたりしないか?)」

京太郎「(クラスの男みたいに…格好わるいって思われたりしないか…?)」

京太郎「(でも…新子は…俺に対して謝ってくれて…)」

京太郎「(あの偉そうな新子がごめんてまで言って…)」

京太郎「(それを見て…何もしないなんて…俺は…)」


>>+2
00~30 それでもごまかしてしまった
31~60 少しずつ自分の情けなさを口にした
61~99 ついつい言わなくて良い事まで言ってしまった
































>> 少しずつ自分の情けなさを口にした

京太郎「お、俺は…その…ど、ドキドキしてたんだ」

憧「…う、嘘」

京太郎「ほ…本当だ。だ、だって…し、しおらしい新子見るなんて滅多にないし」

京太郎「それに…あ、あんなに顔を近づけるなんて…今までなかった…し…」

京太郎「だから…その…つい意識しちゃって…」

憧「…」

京太郎「わ、笑いたきゃ笑えよ!!俺も自分で情けないって…そう思うんだからさ!!」ナミダメ

憧「…笑わないよ」ソッ

京太郎「え…う、うわっ!?」





京太郎「ちょ…あ、新子…な、何を…」

憧「…うるさい。ちょっと静かにして」

京太郎「ぅ…」

憧「…あたしだってね…別に…何とも思ってない訳じゃないんだから」

京太郎「…な、何をだよ」

憧「こうして…顔を近づけるのは恥ずかしいし…アンタに好きだの愛してるだの言うのにドキドキしてるって事」

京太郎「う、嘘だろ…?」

憧「ホント。今だって…胸の中壊れそうなくらいドキドキしちゃってる」

憧「でも…そんな自分が情けないって…馬鹿じゃないのって…そう思ってた」

京太郎「それは…」

憧「…うん。アンタと同じ。隠すのがちょっと上手かったくらいで…あたしも同じ気持ちだったの」

憧「…だから…あたしは京太郎を笑ったりしない。京太郎と同じ気持ちのあたしは…絶対にそんな事しない」





憧「だから…さ。一緒に…慣れよう?」

京太郎「な…慣れるって…?」

憧「こうしてキスしそうなくらい顔を近づける事や…好きとか愛してるって言う事に」

京太郎「で…出来るのかよ」

憧「出来なくても…やるしかないでしょ。じゃないと本番滅茶苦茶だもん」

京太郎「う…い、いや…でも…」

憧「…それがダメだって言うんなら…あたしの事、新子憧だなんて思わないで」

京太郎「…え?」

憧「…アンタが好きだって言うのはキスするのは結婚するのは…新子憧じゃないの」

憧「白雪姫って言う…頑張り屋で…かわいそうなお姫様」

憧「そう思えば…少しは恥ずかしさも楽になるでしょ?」

京太郎「ぅ…」

憧「…例えその中で何が起こっても…あたしは絶対京太郎の事を笑わない」

憧「京太郎が忘れろって言うんなら…あたしも忘れる」

憧「…だから…あたしと一緒に…頑張ってくれない?」




京太郎「お、お前が…お姫様ってタイプかよ」

京太郎「つ、つーか…なんだよ頑張り屋で可哀想なお姫様とか…どれだけ少女趣味なんだよ!ロマンチスト!夢見がち!!」

憧「う、うるさい!あたしだって似合わない事くらい分かってる!」

京太郎「に…似合わない…なんて事ないだろ」

憧「…え?」

京太郎「この部屋だって…高鴨の奴に比べたら…ちゃんと女の子らしいじゃん」

京太郎「俺は…知ってるよ。お前がそういうの…好きなタイプだって」

憧「~~っ!」カァァ

京太郎「だ、だから…その…な…なんつーか…な」

京太郎「…俺も…頑張る。お前に…可愛くて…頑張り屋なお姫様に並べるように…頑張るから…さ」

憧「ば…馬鹿ぁ…」マッカ

京太郎「お姫様がそんな乱暴な言葉づかいしてんじゃねぇっての」

憧「う…ぅ…」

憧「じゃ…じゃあ…エスコートおねがいしますね…王子様」

京太郎「えぇ。勿論ですよ。お姫様」




>>+2
00~30 結局、お互い逆に意識してぎこちなくなってしまった
31~60 お互い自然な演技が出来た
61~99 周囲がびっくりするくらい役に入り込んだ
ゾロ目 ついつい勢い余って本当にキスしてしまった































「こうして白雪姫は王子様と一緒に城へと戻り、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」

「おい、幕引けー!」

「終わったぞ、撤収ー!」

「次のクラスの開始時間まで五分もねぇぞ。急げ!」

「1~3班までは背景の解体。残りは花畑を回収しろよ!」

憧「」ポー

京太郎「ポー

穏乃「憧!京太郎!凄かったよ!」

憧「え…あ…そ、そう?有難う」

京太郎「あ…そ、そっか。良かった」

穏乃「うん。ふたりとも本番に強いんだね!見なおしたよ!」

憧「ま…まぁ、一杯頑張ったからね」

京太郎「そ、そうだな。一杯…頑張ったし」

憧「うん…そう…頑張った…わよね…王子様」

京太郎「…まぁ…それもお姫様のお陰なんだけどな」

穏乃「…あれ?ふたりとも?」

憧「え?」

穏乃「もう終わったんだから、手を離しても良いんだよ」

憧「え…あっ!」バッ

京太郎「痛ぇ!?」

京太郎「ちょ、な、何するんだよ!」

憧「そ、そっちがずっと手を握ってるから悪いんでしょ!」

京太郎「ん、んな事言ってもお前だって指絡めてきてただろうが」

憧「し、してないもん!そんな事絶対してないって!」

京太郎「いーや!絶対してたね!!百万円賭けても良いし」

穏乃「ちょ…ふ、二人とも…あんまり騒ぐと外に…」

「良いから放っとけ。ようやく緊張から解放されたんだろ」

「練習のつもりか知らないけど、こっちが引くくらいクラスでラブラブだったしな…」

「もう砂糖を吐く日々から解放されるんだな…」

「新子さん綺麗だったなぁ…」












【System】
新子憧の思い出が5つになりました。
新子憧の好感度が7(2+5)あがりました。
現在の新子憧の好感度は15です。
須賀京太郎はスキル【王子様】を手に入れました。
このスキルは新子憧限定でコンマを+3するスキルです。
最終更新:2013年09月21日 15:05