小さな田舎町の住宅地。
一人の男の子が家路を急ぎ駆けていく。
あたりはすっかり暗く、街灯が灯り始めた頃。
角を曲がったその瞬間、彼はやってきた通行人とぶつかって、甲高い悲鳴を上げる事となる。
「あれま、今は業務外なんデスケドね~」
男の子に腰を抜かされて、エデアは軽くおどけてみせた。
「ダイジョーブ?てかオレ、善良なアンデッドよ?誰も捕って喰いやしねーよ」
「ごっ、ごめんなさい」
男の子は逃げるでもなく、ビクつきながら謝った。
ここは人とマレビトが共存する町。
動く死人を見る事は、それ程珍しくもない。
エデアは少々、いやかなり人相が悪い方なので、暗がりで誰かと出くわすと、しばしばこんな反応をされるのだが。
手を貸そうかと思ったものの、また怖がられるのが目に見えているので、『走る時は車とオバケに気をつけな』と男の子に一声かけて歩き出す。
彼もまた仕事帰りで、家に向かって歩いている最中だった。
右手には白い紙袋がぶら下げられている。
中には四角い箱らしき物が入っている様だった。
玄関の前で紙袋を持ち直すと、扉を開ける。
「リオさーん、タッダイマー」
すると同居人がぱたぱたと早足でやってくる。
「おかえりなさい、エデアさん」
リオはにこっと笑ってエデアを出迎えた。