Cake

 

小さな田舎町の住宅地。

一人の男の子が家路を急ぎ駆けていく。

あたりはすっかり暗く、街灯が灯り始めた頃。

角を曲がったその瞬間、彼はやってきた通行人とぶつかって、甲高い悲鳴を上げる事となる。

 


「あれま、今は業務外なんデスケドね~」

 


男の子に腰を抜かされて、エデアは軽くおどけてみせた。

 


「ダイジョーブ?てかオレ、善良なアンデッドよ?誰も捕って喰いやしねーよ」

「ごっ、ごめんなさい」

 


男の子は逃げるでもなく、ビクつきながら謝った。

ここは人とマレビトが共存する町。

動く死人を見る事は、それ程珍しくもない。

エデアは少々、いやかなり人相が悪い方なので、暗がりで誰かと出くわすと、しばしばこんな反応をされるのだが。

手を貸そうかと思ったものの、また怖がられるのが目に見えているので、『走る時は車とオバケに気をつけな』と男の子に一声かけて歩き出す。

彼もまた仕事帰りで、家に向かって歩いている最中だった。

右手には白い紙袋がぶら下げられている。

中には四角い箱らしき物が入っている様だった。

 

 

玄関の前で紙袋を持ち直すと、扉を開ける。

 

「リオさーん、タッダイマー」

 

すると同居人がぱたぱたと早足でやってくる。

 

「おかえりなさい、エデアさん」

 

リオはにこっと笑ってエデアを出迎えた。

 

 

戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終更新:2014年05月15日 05:55