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オープニング  ◆wYOF3ar91U


 始めに光があった。

無遠慮に瞼の中へ入り込んできた光の所為で、野比のび太は無理やりに眼を覚まさせられる形になった。
覚め切らない頭で、眠い眼を擦ろうとする指に硬い物が当たる。
どうやら眼鏡を掛けたまま眠っていたようだ。
そこでのび太は、自分がいつ眠りに付いたのか覚えていないことに気付く。
そして自分がいつも寝る時に着るパジャマではなく、普段着のまま眠っていたことを
更に今、自分が居るのがいつも眠りについている自分の部屋ではないことに気付いた。
深く、それでいて濃淡を感じさせない漆黒の闇がのび太の周囲、
あらゆる方向に広がっている。
床も天井も見えない闇。
そこ照明となる丸い光が等距離に点在している。
その光に照らされて浮かび上がる人々。
人、とも限定されない。
猫や狼。あるいはのび太には何とも判然としない不可解な存在。
それらが距離も前後も左右も高低も不規則に、空間上をこれも点在していた。
その人たちが、次々と身を起こしていく。
のび太同様、今まで眠っていたのを覚まされたのだろう。
ある者は怯えて、ある者は闇雲に拳を振るうほどに暴れて、ある者は平然としている。
大声で叫んでいるような人も居るが、声は聞こえてこない。

のび太自身はただ漠然と周囲の状況を観察するしかなかった。
のび太は今までも太古の世界や異星などを冒険した経験があり、非日常的な状況には慣れている。
しかし今のび太が置かれた、全く身に覚えのない不可解な状況には
拠り所のない不安感を抱えながら、状況の把握に努めるしかなかった。

そこでのび太は、まさに拠り所となる存在を見つける。
全身が青く、頭部だけが極端に大きい姿を。
のび太は身を乗り出してその名を呼ぶ。

「ドラえもん!!!」

周囲を見回していたドラえもんも、のび太に目を止めると
のび太に向かって身を乗り出す。
そして見えない壁に正面衝突した。
目を回して倒れるドラえもん。

「ド、ドラえもん!!?」

のび太もドラえもんに向かって駆け出そうとするが、出会い頭に衝突。
勢い余って倒れるのび太。
痛みを抑えて起き上がり、見えない壁の存在を触って確認。
そのまま拳を作って壁を叩くが、壁は微動だにしない。
ドラえもんはドラえもんで自分の周囲の空間を、その丸い手で辿って、
自分が見えない壁に囲まれているのを確認している。
周囲を見る限り、この場の全員が見えない壁で囲まれているらしい。

「ドラえもん!! 助けてよ、ドラえも~ん!!」

拳が痛むほど壁を叩きながら、のび太は助けを呼び続けるが、
ドラえもんはそれに気づいている様子もない。
どうやらのび太の声も、外には漏れないようになっているようだった。

のび太は声すら漏れない牢獄に閉じ込められていた。

自分の置かれている状況がいよいよ尋常ではない物だと判って、のび太は戦慄する。
しかも自分のみならず、ドラえもんまで閉じ込められているのだ。
それならば誰が自分を助けてくれるのだろう?
両親や警察が、こんな異常事態で頼りになるのだろうか?
それともタイムパトロールなら助けに来てくれるのだろうか?
気の遠くなるような思いに駆られるのび太。
しかし直後に起こった異変によって、のび太の意識が奪われる。

不意に全ての明かりが消える。

全てが闇に塗りつぶされる中、一筋の光線が天から降りる。

光線は徐々に太さを増していき、その下に一つの姿を浮かび上がらせた。
まるで舞台劇のような演出。
そして浮かび上がった姿は、実に奇妙な物だった。
全身が白い四足の小動物。
しかし猫とも兎とも微妙に違う得体の知れない生物。
そして驚くべきことに、その小動物が喋り始めたのだ。

「やあ皆、僕の名前はキュゥべえ。君たちは今の状況に当惑しているかも知れない。だから今から僕が、君たちに何が起こるかを説明するね」

キュゥべえの声が木霊する。
その声はのび太だけではなく、周囲に居る者にも聞こえたらしい。
全員が黙ってキュゥべえの言葉に耳を傾けているようだ。
一匹の小動物が、場の空気を完全に支配していた。

「まずは僕に与えられた役割を説明するよ。僕はインキュベーターとして造られた存在だけど、今の役割は説明役だね。
勘違いしないで欲しいんだが、僕は君たちをここに集めたりこの状況を作ったりしている訳じゃない。僕はただ説明する役割を与えられただけだ。
と言うより君たちをここに集めたり、この状況を作ったり、これから行われる催しを開いている者など存在しない。
宇宙の構造、重力が在ったり星が形成されていたり、に異議を申し立てることに意味が無いように世界がそう言う構造になっていると理解して欲しいんだ。
君たちがこれから行われる『バトルロワイアル』に参加するのも、世界がそう言う節理になっているだけで、何者かの意思やその行使などとは無関係だとね」

キュゥべえの言っている言葉の意味が、のび太には良く分からない。
どうやらのび太たちは『バトルロワイアル』なる催しに参加させられるらしいが。
理解に苦戦するのび太を置いて、キュゥべえの話が続く。

「君たちはここから『バトルロワイアル』の会場となる場所へ一斉に送られる。会場に送られた瞬間から『バトルロワイヤル』の開始だ。
そして『バトルロワイアル』の会場が世界の全てとなる。その外部など存在しない。宇宙に外部が、仮に存在するとしても『バトルロワイアル』には存在しない。
君たちは今まで生きていた世界が在っただろうけど、それも存在はしないんだ。
例えば外部から君たちを脱出させる者など存在し得ない。君たちが『バトルロワイヤル』から脱出する先なんて無いんだからね」

キュゥべえの言っていることは、ますますのび太の理解を超えていく。
のび太が今まで生きてきた自分の家も、学校も、空き地も、裏山も、何もかも全部存在しなくなるなんて。
そんなことが信じられるはずが無い。

「『バトルロワイアル』の会場は縦横に線が引かれてあって、こんな風に四角形のエリアに区分けされている」

キュゥべえはそう言って、床をなぞって歩き回る。
そこには確かに、キュゥべえを囲むように四角形の線が引かれていた。

「実際の会場にはこんな線は引かれていないんだけどね。会場の全体とエリア分けは、後で説明する支給品の一つである地図で確認できるよ。
そして『バトルロワイアル』では六時間ごとに会場全体に向けて放送が行われる。そこで幾つかのエリアが消滅エリアに指定される」

説明しながらキュゥべえは、床に引かれた線の上に座る。
背筋を伸ばして座る姿は、猫のような愛嬌があった。

「消滅エリアは指定された時間になれば消滅するんだ。こんな風にね」

次の瞬間、キュゥべえが居たエリア。四角い線で囲まれたエリアから光が消える。
照明に照らされているはずの部分から、一片の光も無くなり、
床から天まで闇に塗りつぶされた。
キュゥべえの半身もまた。
そして残ったの半身は、光に照らされた床に向けて倒れる。
キュゥべえの半身だけが一瞬にして消えてなくなったのだ。

突然の惨劇に息を呑むのび太。
しかし半身だけが残ったキュゥべえの所へ、もう一匹のキュゥべえが現れる。
キュゥべえは半身だけになった自分を貪り食うと、きゅっぷいと可愛らしく喉を鳴らした。

そしてキュゥべえは何事も無かったかのように淡々と説明を続けていく。

「消滅エリア上に存在する物は、空気も光も人も例外無く消滅して無になるんだ。
そして消滅エリアは放送ごとに増えていくから、最終的には会場の全エリアが消滅エリアになるね。
つまり世界の全てが消滅するってことさ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

のび太が叫ぶが、聞こえていないのかキュゥべえの反応が無い。
それが分かっていても、のび太は叫ばずにはいられなかった。
会場の全エリアが消滅エリアになる。
そして会場から脱出する外は無い。
それはつまり、死ぬしかないって言うことじゃないか。と。

「消滅エリアは『バトルロワイアル』が終了しない限り、指定され続ける。『バトルロワイヤル』の終了条件は一つしかない。
それは参加者の中で生存している者が一名になることだ。『バトルロワイヤル』の参加者は七十名。その内、六十九名が死亡した時点で終了する」

そこまでキュゥべえが説明した時点で、あちこちで騒ぐ人が現れ始める。
相変わらず声は聞こえないが、口々にキュゥべえに向けて何かを叫んでいるようだった。
しかしキュゥべえは構わず説明を続ける。

「生き残った一名は、今まで生きてきた世界を取り戻すことができる。
これまで一緒に生活していた人とも、また会うことができるよ。更にその一名には、どんな願いでもかなえる権利を与えられるんだ。
富でも、地位や名声でも、死者の蘇生でも何だって構わない。どんな奇跡だって起こせるよ。
信じる信じないは君たちの自由だけど、僕は絶対に嘘はつかないよ。
何なら聞いて見ると良い。参加者には僕を知っている者も居る。彼女らは僕が決して嘘を付かないと知っているからね」

相変わらずキュゥべえの話は、半分ほどしか理解できないのび太だったが
その恐ろしさに思い至るには充分だった。
殺し合いの参加者の内、一人しか生き残れない。
つまりのび太にしろ、ドラえもんにしろ、この場のほとんどが死ぬ。

「会場に送られた際には、同時にデイパックに入れた形で支給品も支給されるよ。
支給品は参加者全員に食料や水と地図と参加者の名簿とルールブックと筆記用具と照明器具などが一律に配られるんだ。
詳細な決まりごとはルールブックで確認すれば良いよ。
それと基本的な支給品の他に少なくとも一つから最大三つまで、無作為に色々な道具が支給される。
中には強力な武器が支給されているかもしれない。だから参加者には全員、『バトルロワイヤル』の生還者を決める権利を持てる形になるね」

そこまで聞いて、のび太は『バトルロワイアル』の真の恐ろしさを理解した気がした。
脱出不可能な閉鎖空間。
武器になる物が支給される。
生き残れるのは一人だけ。
そこから導き出される答えは――――――――参加者同士の殺し合い。

「それじゃあ、君たちとはこれでお別れだね。説明の役割を終えた僕は、これで消滅するよ。
繰り返しになるけど、君たちのために忠告すると、『バトルロワイヤル』を裏から支配する者を想定したり、外へ脱出しようとするのは無意味だから止めた方が良いよ。
時間を無駄にすると、生還者を決める権利を失うかもしれないからね」

そう言い残してキュゥべえの居る四角形の空間が再び消滅した。
今度こそあらゆる光を失くした中、のび太は狂ったように壁を殴って助けを呼ぶ。
しかしそれに答える者は居ない。
やがてのび太は床や四肢の感覚を失い、重力も見失った。

再び光を取り戻した時のび太は――――――――







――――――――そして『バトルロワイアル』が開始する。





【アニメキャラバトルロワイアルEX 開始】



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