月光に輝く2つの牙  ◆6KIURINYHo


「ウルッフッフフ…!」
満月の夜空の下、深い森の中で吠える一匹の狼がいた。
その狼の名はウルフルン。絶望の世界バッドエンド王国の住民であり、全世界をバッドエンドに染め悪の皇帝ピエーロを復活させる野望を内に秘めている。

「要は、一人になるまで殺し合えってことだろ。最高のバッドエンドじゃねぇか…」
殺し合い、すなわち死と恐怖と絶望が飛び交う世界。そしてそれらを支配するのは邪悪な心を持つ者のみ。これこそピエーロ様が望むものだろう。
「面白れぇ!ここでピエーロ様を復活させりゃ、世界はあっという間に絶望に染まるぜ!」
キュゥべえとかいう猫が宇宙やら世界やら言っていたが、そんなものは知ったことじゃねぇ。ピエーロ様が復活さえすれば、こんな空間なぞキュゥべえごと乗っ取ってバッドエンド空間に変えてやる。

「さぁて。そうとなりゃ、早速バッドエナジーを回収しに行くか」
狼の『狩り』はここから始まる…。



◆ ◆ ◆



「はあぁ、はぁっ…」
鹿目まどかは逃げた。ひたすら逃げた。
かつての先輩が、正義感にあふれた魔法少女が何故か自分を殺そうとした。その現実からまどかはひたすら逃げていた。
(どうして…どうしてなの…、マミさん……!)
心の中で思うだけで声すらあげる余裕もないまま、頭の中でそう考えていた。



しばらくして落ち着いてきた(実際は全く落ち着いていないが)まどかは、周囲を見渡すと目の前にそびえたつ館に目が行った。
地図でいうとB-7のエリア内にあるジョースター邸。それは、参加者の一人であるジョナサン・ショースターの生まれの家であり、彼はそこで育ってきた。父と、複数の召使いと、そして『彼』と。

ずっと鬱蒼な森の中にいるのも嫌だったからか、まどかはふらりと館前の中庭へと歩んでいく。
すると、そこには……
「君は何をしている?」
「!!?」
突然声をかけられたまどかは、心臓が跳ね上がるような感覚を覚えながら声のあった方向く。が、
「……?」
誰もいない。
声からして大人の男性のようだが、それらしき姿は何処にもない。
だが、気のせいとも思えない。そう思い、更に周囲を見渡すと

「ここだ。わたしはここにいる」
「え………っっっ!???」
まどかは見た。そして、声にもならない悲鳴をあげた。
声が誰の者かは分かった。それはいい。ただ、その正体が悲鳴をあげる原因となった。
「いやあああぁぁぁぁ!?なっ、生首~~~~っっっ!!」
そう。その声の正体は金髪の男の生首であり、それがまどかに声をかけてきたのだ。
これはむしろ驚かないほうがおかしいということだ。





「少し、落ち着いたかね?」
「あ…少し、ですけど」
まどかは今、首だけの男が入っているガラス容器を抱えながらジョースター邸の中を歩いている。
「でも、ほんとうにほんの少しで…ごめんなさい」
「いや、それで十分だ。こんな姿のわたしにもこうやって接してくれているのだからな。
 君は強い子だ」
実はこの男はジョナサンとともにこの館で育った身であり、名をディオ・ブランドーという。
館の主であるジョージ・ジョースターによる教育を受けたジョナサンが立派な紳士に育ったように、彼と共に暮らしたディオもまた、紳士としての振る舞いを身に着けている。
そのため、こうやって女性を落ち着かせることなど造作もないことだ。

そして、まどかはディオに自身に起きた出来事を話す。自分のこと、友人のこと、魔法少女のこと、そして、全身に浴びているその血のことも。
「そうか、辛い想いをしたようだね。可哀想に」
「でも、ディオさんも首だけになって。辛いですよね?」
「いや、わたしのことはいい。そうなるべき『運命』だったのだからな」
「運命…?」
首だけにされることが運命?何故こんな姿にされたのか?そもそも首だけの状態でどうやって生きているのか?
まどかはディオに関する様々な事情を疑問に思った。


「内部の案内は以上だ。後は浴びた血を洗い落としたり血濡れの服を着替えたり、君の好きにするといい」
まどかが考えていると、それを中断させるかのようにディオから声がかかる。
確かに全身に浴びた血は気持ち悪いし、服も血濡れのままでは怪しく見えるだろう。
「あ、はい…。でも、ディオさんは?」
「わたしは『この場所』に置いたままでいい。日差しが当たらぬかつ見渡しがいい場所にな」
「…?えっと、じゃあお言葉に甘えさせていただきます」
場所にこだわる意味がよく分からないが、自分の家のことだし特に深い意味はないだろう。
それにここは館に入ってすぐにあるロビーのようで、確かに見渡しはいい。窓から射す月光により夜中にも関わらず薄明るい。

まどかはその『場所』にディオを置いて、自分の用事を済ませにいく。
その前に何気なく足元を見ると、靴ひもがほどけていることに気付く。
まどかは靴ひもを整えるためにしゃがんだ、その時だった。


ヒュン ――――――

「えっ?」
まどかの頭上で空を切るような感触がした。

ドスッ!!

それと同時に、奥の壁に血管らしきものが刺さる瞬間を見た。

「あの、ディオさ……」
方角からしてディオがいる真後ろ。
恐る恐る後ろを振り向くと―――
「チッ、運よく避けたか。俺をここまで運んだ恩に報い、苦しませずに殺してやろうと思ったが」
なんと、首だけのはずのディオは、首元から一本の血管を伸ばし、それをまどかに向けて飛ばしたのだ。
「え…え……?」
ディオの突然の攻撃に呆然とするまどかだが、ディオは構わずに説明を続ける。
「冥土の土産に教えてやろう。俺は石仮面を被り、人間をやめて不死身の吸血鬼になった身だ。
 太陽の光と波紋というものに弱いのが欠点だが、それ以外においてはあらゆる生物を上回る究極の生命体なのだ!
 故に、こうして首だけでも生きていける。貴様ら人間ごときでは到底なし得ないことなのだ!」

ディオは目を光らせ、鋭い牙を見せ、邪悪な笑みを浮かべる。
この男は危険だ。と、まどかは悟った。
「―――っ!」
脳が逃げろという信号を発する前に、もはや条件反射的にディオから逃げ出すまどか。
だが、それを見逃すほどディオは甘くない。
「無駄だッ!小娘ごときがこのディオから逃れられると思うなッ!!」
ディオは数本の血管をまどかに向けて飛ばす。
血管の一本が彼女の足にからみつき、その拍子に転んでしまう。そして、残りの血管も残りの腕と足を拘束する。
「いや―――いや……っ!」
ディオから発せられる明らかな殺気に、マミに銃口を向けられた時以上の恐怖を感じる。
さらに、彼女のときと違い今度は手足を拘束され身動きすら取れない状況。

「己の不運を呪うのだな。出会った相手がジョジョであれば、奴は貴様のような小娘を全力で守るだろうが……まぁ、死にゆく貴様には関係のないことだ」
絶体絶命。今度こそ、この悪意を持った男に殺される。
「無駄話は終わりだ。せめて痛みを知らず安らかに死ぬがよい!」
鋭い血管がまどかに向けられる。ああ、あれに貫かれて殺されるのだろうか。
もはや抵抗すらせず、ただ己の死を待つだけのまどかは考えるのをやめた―――



―――ドゴォン!!

しかし、響き渡った音は、血管が肌を貫くようなものではなかった。
例えで言うと、隕石が衝突したようなそんな音―――。それがディオのいた場所から響いたのだ。
「何だ、今のは……」
当のディオは血管で階段の手すりに掴まり無傷だったが、彼が元いた場所を振り返ると、そこには隕石の形をした柄頭のメイスのような物体が突き刺さっていた。
突然の衝撃に、ディオもまどかも困惑する。
誰がこんなことを?そう思った二人は、物体が飛んできたであろう方角に目をやった。


「ウルッフッフッフ……。極上のバッドエナジーのニオイがプンプンすると思って来てみればよォー~
 なんだか面白れぇことになってるようだな?」
そこに現れたのは、狼の頭部と体毛に覆われた男だった。

いらぬ邪魔が入ったことに苛立ったディオは、その狼男を睨む。
「貴様……何者だ?」
「オレ様はウルフルン!バッドエンド王国の住民で、世界をバッドエンドに染める―――」
「……ほう。体格は悪くない。それに狼特有の身体能力を持っていると見える」
「な、てめっ…!せっかく名乗ってやってんのに途中で口をはさむんじゃねぇ!」
今度はウルフルンが名乗りを邪魔され、苛立ちを見せる。
だが、ディオは構わずにウルフルンの全身を舐めるように見つめ続ける。
「フッ、気に入った。貴様の身体、存分に気に入ったぞ!願わくば貴様の身体を乗っ取って俺の仮の肉体にしてくれる!」
「はぁ?てめぇ、もしかしてアレか?『ピー』(プリキュアのアニメでは放送禁止用語です)ってやつか!?
 ジョーカーの野郎じゃあるまいし、オレにそんな趣味はねえからな!!」
「何を勘違いしているのかは知らんが、文字通り乗っ取るだけだ。この姿のままでは移動すらままならんからな……
よって、貴様の首を切断し俺が代わりにその身体を支配することで肉体を手に入れるのだ!」
元々、ジョナサンとの死闘に敗れ首だけになったディオは、肉体を手に入れるために再びジョナサンを襲った。結果だけ言うと相打ちに終わり、ディオは息絶えたジョナサンの腕の中で共に滅びる運命にあったはずだった。
それが、突然殺し合いに巻き込まれ、よりにもよって満足に動けない首だけの状態で殺し合いを強要されたのだ。
そのため、ディオにとっては何としても仮の肉体を手に入れる必要があった(最悪、まどかで妥協するつもりだった)。そのための都合がいい相手が、彼の目の前に現れたウルフルンなのである。

「―――ヘッ、要はオレとやろうってのか?まぁ、いいぜ。オレは世界をバッドエンドに染めるため、バッドエナジーを回収する必要がある……」
対するウルフルンはピエーロを復活させるためにバッドエナジーを集める目的がある。
負の感情から発するバッドエナジーは心が弱い人間から得るものであり、そのためには殺し合いの中、まどかのような弱い人間が生き残る必要があるのだ。
「オレの目的のためにはこのガキには生きてもらわなきゃ困るんでな。それを殺ろうとするテメーは邪魔な存在なんだよ!」

ウルフルンは鋭い爪を伸ばす。
それに対し、ディオは衝撃から逃れた際に一緒に持っていたデイパックからごそごそと何かを取り出す。
首だけのヤローに何ができるのやら。ウルフルンは鼻で笑いながらディオを見ていたが―――
「な、それは……!」
ディオが取り出したのは一つの赤い球。それはウルフルンには見覚えのあるものだった。
「出でよ、アカンベェ!!」
ディオが高く掲げたアカンベェという球は、邪悪なオーラを発しながら、先ほどウルフルンによって投擲されたメイスをトレースし、姿を変えていく。
そして現れたのは、全身5メートルは超えると思われる怪物―――
『アカンベェ!!』
頂点が尖った帽子、銀色のショートヘア、首に固定された輪っか付きのマント、紫色のベアトップの服装が特徴の、可愛らしい少女のもの―――
と思いきや、ミスマッチすぎるピエロ顔が全てを台無しにしていた。(ぶっちゃけキモい)

「アカンベェだとぉ!?」
アカンベェは、ウルフルンたちがプリキュアと戦う際に使役される怪物であり、本来は彼がそれを操る側にあった。
「オレがコイツと戦うことになるとは……」
これは何の因縁か。そう思ったウルフルンだが、アカンベェは容赦なく攻撃を開始する。
「さぁ、アカンベェよ。奴を殺せ!ただし、肉体は完全に破壊せんようにな」
『アカンベェ!』
ウルフルンは焦りを隠しつつ、身構える。
アカンベェは大抵トレースされた物体に関連する特殊能力を持つ。そのため、このアカンベェもあのメイスと関係のある能力を使うはず―――

『黙示録撃 100分の1!』
アカンベェはそう叫びながらウルフルンに向けてメイスを振り下ろす。
(100分の1だと?手加減のつもりか?ナメやがって!)
ウルフルンはひょいと軽やかに回避すると、メイスは当然ロビーの床に打ちつかれる形になる。
そして、そのまま振り下ろしたメイスが床に着弾すると―――

―――ドッグオォォォン!!

「は……?」

―――床が砕け、直径10メートルほどのクレーターが出来た。

「じ、冗談じゃねぇぞ!100分の1でこれって……全力で撃ったらどうなっちまうんだ!?」
まさか先ほどまで自分が持っていた得物がこれほどの破壊力を持つとは思わなかったのか、ウルフルンは本気で焦る。
それもそのはず。アカンベェのトレース元である武器は、星を破壊する力を持つルシファースピアという槍である。その槍の持ち主が恐怖の大王と恐れられる者であり、アカンベェの体はその姿をトレースしているというわけだ。
このバトルロワイアルにおいては制限の影響で流石に星を破壊するほどの威力は封じられているものの、それでも強力な武器に変わりない。

『黙示録撃 100分の1!』
焦るウルフルンを尻目に、アカンベェは更なる攻撃を加えようと、目標をロックしルシファースピアを大きく振り上げる。
「確かにパワーはすげぇ…。けどよ……!」
しかし、舐められてたまるかと粋がるウルフルンは素早い動きでアカンベェの懐に入り込んだ。
「テメェは!動きが!遅せぇんだよォ!」
懐に入るがいや、アカンベェの腹に強烈な拳をぶつけ、怯んだ隙に高く飛び顔面をブン殴り追撃する。
この攻撃により、倒れはしないもののかなりのダメージを与えたのか、アカンベェはフラフラよろけていた。

「チッ、思っていた以上にやるな……!」
殺すどころか逆に攻められているさまを見て不機嫌なディオは呟く。
「ヘッ、当然だ。大体オレはテメーよりはるかにアカンベェのことを知っている。オレにとっちゃ、今時アカンベェなんざ敵じゃねぇんだよ」

『黙示録撃 75分の1!』
その間にも、アカンベェは先ほどの攻撃を仕掛けようとする。
「またそれか。オレはテメーのことをよく知ってるって言ったろ?相変わらず学習しねぇ奴だな」
ウルフルンは再度身構える。今度はそれ以上に激しい攻撃を加えてブッ潰してやる。
そう意気込み、追い打ちをかけようとする。

「確かに、アカンベェに関しては貴様の方が知っているのだろう。だが―――
 貴様は俺のことを知らなさすぎた!勉強不足だッ!」

―――そのとき、ウルフルンの脇目にいたディオが眼から何かを発射するのを見た。

ドスッ!!

「グ!?グエェェェエエェェ!!?」
眼から出たそれは、ウルフルンの脇腹を貫通しその先の床までも裂いた。
幸い致命傷ではないものの、傷口からは血がドクドクとあふれ出る。

そう、先ほどのディオは眼から高圧力の体液を発射し、それでウルフルンを攻撃したのだ。
船でジョナサンを致命傷に追いやった技―――その名も空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)という。

「おっ、オオカミさん!?」
後ろからうるさい小娘の声が聞こえるが、この際どうでもいい。
「……グッ!」
だが、ディオの援護射撃に合わせるかのようにアカンベェの無慈悲な一撃がウルフルンを容赦なく襲う。

ドゴォン!

「ぬ、ぬおおおぉぉぉぉ!!」

負傷により動けなかったウルフルンは、ルシファースピアの一撃をその場で受け止める。
だが、床を陥没させるほどの一撃などずっと受け続けられる訳がなく、徐々に受け止めている腕が下がっていく。
そして、そうして力んでいる間も脇腹から血は噴出し続ける。このままではディオの宣言通り、死ぬ。

「……っ、クソがぁ!!」
だが諦めない。―――というか、ナメられてたまるかという意地であるが。
ウルフルンは足腰に力を溜め、そして、ルシファースピアを支える腕を離すと同時に一気に脚の力を解放。
なんと、今まで持ち上げて目の前にあったルシファースピアの一撃を、持ち前のスピードで全力で回避したのだ。

「うげっ!」
だが、ウルフルンのスピードが速すぎたことと、あまりにも必死だったこと、そして黙示録撃の衝撃で発生した余波に煽られたことが相まって受け身すら取れず、そのまま壁に激突する。実にマヌケな光景だ。

「フン、マヌケが。アカンベェ!とどめを刺せ!」
勝利を確信したディオはそのまま壁に激突したウルフルンを見下ろす。
(奴の肉体を手に入れさえすれば、しばらくは安泰だろう。いずれは必ずジョジョの肉体を乗っ取ってくれる……!)
ウルフルンを標的にしたディオだが、彼の本命は、あくまでも宿敵ジョナサンの肉体である。
ジョナサンと無関係なディオのような人間から見たとすれば、下らないこだわりだと一蹴されそうだが、これはディオなりのジョナサンに対する『敬意』でもある。
故にこれだけは譲れない。
そのためか、もはやディオにとってはウルフルンなど蚊帳の外だった。


(―――む?奴は何を……?)
しかし、ふとウルフルンを見ると、何かを企んでいるような笑みを浮かべながら這いずっている。
それは傍から見るとアカンベェからみっともなく逃げようとしている光景だが―――

『黙示録撃 50分の1!』
そうしている間にもアカンベェはトドメの体制に入っている。
―――まぁ、いい。どうせ足掻いても無駄なことだ。
ディオはそう思い、彼が掴まっている階段の手すりの真下にいるウルフルンを見下ろし―――

階段の、真下―――
「はっ、まさか……!」
ディオは気付いた。もしこのまま真下のウルフルンに攻撃すれば、自分が掴まっている手すりの階段は……
「アカンベェ!攻撃をやめ―――」

バッッグオォォォォン!!

黙示録撃の衝撃をまともに受けた階段は見事に破壊された。
そして、階段の手すりに掴まっていたディオは黙示録撃の直撃こそしなかったものの、衝撃の余波までは避けきれず、吹き飛んでしまった。
「うおおおぉぉぉぉ!!」
どこか掴めるところはないか!?
吹っ飛びながらも長年育ったジョースター邸の構造を思い出し、掴めそうな場所を考える。

がしっ

掴んだ。
掴む音がした。だが―――

「捕まえたぜ。この首だけヤローが」
それはウルフルンがディオの頭を掴んだ音だった。


「な、貴様っ……!」
あの一撃を回避する余力があったことも驚きだが、それよりも自分がアカンベェの巻き添えに遭うことを狙っていたような素振りを見せるウルフルンに困惑する。
「アカンベェについて一つ教えてやるぜ。アレはテメーの指示に従って動いているけどな、ただそれだけだ。それ以外は本能で動く。
 本能のままに攻撃するアレは味方を巻き添えにしようが知ったことじゃねぇんだよ。
 だから普段オレたちがアカンベェを戦わせる場合は巻き添えを食らわないよう立ち振る舞ってんだ」

「く……!アカンベェ!俺を助け―――」
「うるせぇよ」
「ガッ!」
ディオがアカンベェに指示を出す前にウルフルンは彼を壁に叩きつける。
そして頼みのアカンベェの方も、放った黙示録撃が強力すぎたせいでルシファースピアが地面に埋まり得物を抜き出せずにいた。
『アカ……?アカンベェ~~~?』
「ヴ、ゴボ……やぐだ―――」
「今、役立たずだって思ったな?奇遇だな、オレも同感だぜ。アカンベェはどうもツメが甘くて使えねぇ。
 ま、それに頼るしか出来なかったテメーはカス以下のクソムシだけどな」
「クソムシ、だと……!このディオに対してッ……!」
「知るかよ。まぁ、オレにケンカ売っといて負けたんだ。負け犬は大人しく死んどけ」

そう言うとウルフルンはディオを掴んでいる握力を強め、更に自慢のツメを食い込ませる。
頭蓋骨がメキメキと音を立ててひび割れていく。
「GYAAAAAAAAA!!」
痛みを感じないはずの吸血鬼のディオにとてつもない痛みが襲う。
このディオが死ぬだと?こんな訳も分からぬ催しの中で死んでいくのか?このディオが!

「このディオはいずれ世界を!全てを!支配するのだ!こんな所で!こんな所でええええぇぇぇェェェェェ!!」
「世界を支配するのは悪の皇帝ピエーロ様なんだよ。テメーみてーなカスに支配されてたまるか」

そうしている間もどんどん骨が砕ける音は続く。そして
バキン
頭蓋骨が砕け散る音が響き、それと同時にディオの命は野望と共に消え去った。




「―――グゥ……!」
ディオを殺害したウルフルンは、先ほどの戦いによる負傷と消耗が相まってガクリと膝をつき、そのまま倒れこむ。
(チキショオ……!オレがあんなヤツにここまでダメージを食らうとは―――)
結果的には勝者だが、彼にとっては雑魚に手こずったという悔しさと苛立ちしか湧かなかった。

(あぁ、そういやアカンベェも残ったままだったな。さぁて、どうするか……)
そう考えていたウルフルンだったが
『アカンベェ~』
召喚主であるディオが死んだためだろうか、アカンベェは一目散に玄関を突き破り逃げ出した。
(へっ、最後だけはツイてたようだな。これがいわゆる『ウルトラハッピー』ってヤツか)
憎きプリキュアの虫唾が走るセリフだが、今回だけはその言葉に有難味を感じ

―――ばたん
そのまま意識を失った。


【B-7/ジョースター邸内部/一日目-黎明】

【ウルフルン@スマイルプリキュア!】
[状態]:脇腹負傷、疲労、気絶
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・行動]
  基本方針:バッドエナジーを集め、悪の皇帝ピエーロ様を復活させる
  1:まどかのようなバッドエナジー発生源となり得る人間を確保する
  2:1の目的の際に邪魔になりそうな奴は殺す
  3:とりあえず、闇の絵本と絵の具が欲しい
  ※参戦時期は不明です



【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】


◆ ◆ ◆



「オオカミさん!オオカミさん!しっかりしてっ!!」
ディオとの戦いで倒れてしまったウルフルンを見て、まどかは凍り付いていたように動けなかった身体を押してすぐさまウルフルンのもとへと駆け付けた。

ウルフルンは荒い息を上げながら唸るだけで、命に別状がないのかどうか。助けることが出来るのかどうか。
戦いにおいては全くの素人であるまどかは何をどうすればいいかは分からない。
でも彼女の持ち前の優しさから、この人はとにかく助けなきゃと思う。

あたふたと混乱しながらも助けたいと思うまどかの頭には、ウルフルンが口走ったバッドエンドのことや彼自身の狼としての凶暴さなどすっかり頭から抜け落ちていた。



【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[衣装]:見滝原中学校制服(血塗れ)
[状態]:健康、混乱状態
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・行動] とにかく、このオオカミさん(ウルフルン)を助けたい
  基本方針:?????
[備考]
1.ディオからジョースター邸内部の案内を受けました
2.ディオからジョナサンのことについて聞きました(信じるかどうかは不明)


※ジョースター邸のロビーの一部が破壊されました
※ロビー内のどこかにディオのデイパックが落ちています
※ルシファースピア@ケロロ軍曹をトレースしたアカンベェが逃げ出しました。
 ルシファースピアは空を飛べるため、エリアB-7から離れた場所にも移動できると思われます。
ある程度ダメージを与える、プリキュアの浄化技を当てる、一定時間経過する、の
 どちらかでアカンベェは消滅します。
アカンベェが消滅するとキュアデコル1個とルシファースピアを落とします



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013:死の邂逅 鹿目まどか :
GAME START ウルフルン :
GAME START ディオ・ブランドー GAME OVER

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最終更新:2013年09月19日 23:35