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***隠者の出会い ◆wYOF3ar91U 「バトルロワイヤルのルールでは、生還できるのは一人となっているから、 おそらく催している者の狙いは、参加者同士の殺し合いを誘発することだ……」 自生する広葉樹が視界を埋めるほどに生い茂る森の中、まだ声変わりもしていない少年の声が木霊する。 声は幼さを残しながら、冷静で極めて整然とした知性を感じさせる物だった。 もっともそれを聞く者は、当の少年以外には誰も居ないが。 少年は暗い森の中を淀みなく歩いていく。 「だから主催者の目的を推測するには、その線から進めていかなくてはならない……」 理路整然とした言葉は少年の優れた知性を示していた。 森の中を苦も無く進む姿は少年の優れた体力を示していた。 バトルロワイヤルの中でも自分の為すべきことを探す様は少年の優れた精神力を示していた。 知性。体力。精神力。少年はその名が示す通り、あらゆる面で優れた能力を持っている。 少年の名は出木杉英才と言った。 「……とりあえず、ドラえもんと合流することを優先しよう。彼の知識は、脱出に必要になる……」 しかし今はバトルロワイヤルの渦中。 無意味に声を上げるのは自殺行為だと、出木杉も自覚している。 しかし、そこに論理の飛躍が在っても構わずに出木杉は話し続ける。 自分の意思を、自分に言い聞かせるために。 怖いのだ。 何時、自分が殺されるか判らない状況が。 まるで脱出の方法が見えない状況が。 そして脱出を志すと言葉にしていなければ、自分自身に確信が持てない状況が。 出木杉は強い倫理観と道徳意識を持っている。 殺人への忌避感もそれだけ強い。 それでも、この場では何の確信も持てないのだ。 先刻確認した名簿を信じるなら、あの未来の道具を使いこなすドラえもんですら参加者とさせられているバトルロワイヤル。 幾ら出木杉が優秀でも、脱出の方法など見当も付かない。 そして名簿に記載されている名前はドラえもん、野比のび太、剛田武、源静香以外は全く知らない物だ。 ドラえもんたちが殺し合いに乗るとは思えないが、彼らのほとんどは小学生。 悪意在る大人の手に掛かれば、容易く命を落とすだろう。 今こうしている間にも、友達が殺されているかもしれない。 それは想像しただけでも恐ろしいことだった。 何より、出木杉自身も小学生に過ぎない。 命の危険に晒された時、自分の身を守れるのか。 そして誰かを殺すことでしか自分の身を守れないとなった時、強固な意志をどこまで保てるのか。 出木杉はまだ小学生。これから学んで自分を作り上げていく人間だ。 実際のところ、今の段階では何の保障も無い人間なのだ。 生きるか死ぬかの極限状況。 ただの小学生の過ぎない出木杉にとって、それは意思を保つことすら困難な状況だった。 (…………誰か居る!!) 出木杉の声が、足が止まる。 前方約十メートル。ほとんど視界が利かない森の暗がりの中、薄ぼんやりとした影しか確認できない。 しかし確かに男の姿が在った。 大人の男。それも二メートル近くありそうな大柄な男だ。 無論、出木杉の友人にそんな大男は居ない。 出木杉の心臓が跳ね上がり、足が震える。 誰かと遭遇することも当然、想定していた。 その時の対応策も。 可能な限りリスクの少ない形で接触。 そしてとりあえずでも安全だと確認できれば情報交換をして、交渉次第では同行する。 それらの具体的な手段まで想定していたのだ。 しかし想定と現実は、全く違ったのだ。 殺し合いの状況の中で、未知の人物と接触する。 それは自ら修羅場に踏み込むと言うこと。 現実に実行するのは、出木杉の想像以上の勇気が必要だった。 これが出木杉の友人、野比のび太や剛田武や源静香ならば話は別だったかもしれない。 彼らも小学生であり、出木杉ほど優秀とは言い難い。 しかし彼らには修羅場の経験があった。 自らの命を危険に晒す冒険を潜り抜けてきた経験が。 しかし出木杉にはそんな経験は存在しない。 命がけの冒険はこれが始めてになる。 そしてただの小学生がたった一人で乗り越えるには、命がけの冒険というハードルは高過ぎた。 (……今のぼくの状態では交渉が上手く行くとは思えない。ここは接触を避けるべきだろう……) それは自分の状態を考慮しての適切な判断なのか。 自分の臆病を誤魔化すための言い訳なのか。 心中で自分でも判然としない理由を並べ立てて、出木杉は男から逃げることを選択する。 男から生い茂る木に身を隠し、出木杉はその場を離れようとする。 その優れた身体能力を活かし、木陰から木陰へと移動して行く。 そして木陰から頭だけを出して、男がこちらの存在に気付いていないかを確認。 男の姿は無かった。 不測の事態に出木杉の不安感が一気に強まる。 男は確かにそこに居たはずなのに、出木杉が目を離した僅かの隙に消えていたのだ。 周囲を見渡すが男の姿は無い。 得体の知れない不安に包まれ、出木杉はしばし呆然とその場に立ち尽くす。 「ノックしてもしも~し」 突然、頭上から声が聞こえた。 その場の雰囲気とはあまりにもそぐわない、弛緩した声。 それとともに、出木杉の頭が軽く小突かれる。 頭上を仰ぐと、先ほどの男が木の枝から逆さになってぶら下がっていた。 反射的に走り出す出木杉。 そこに状況判断も論理的思考も無い。 半ば恐慌状態に近い物があった。 「おい待て!! 人がもしもしっつってんのに、逃げ出してんじゃねー!」 暗い森の中を、何度も足を取られそうになりながら、 出木杉はそれでも止まることなく駆け抜けていく。 しかしすぐに背後から襟首を掴まれて止められる。 振り返らなくても先ほどの男だとは判った。 男は暗い森の中を、出木杉に容易く追い付いたのだ。 逃げることは不可能。 出木杉はついに死を覚悟する。 「だから逃げんなっつってんの! 人の話聞けよなぁ~。 雪男やネッシーとかに出会った時だって、悪い者と最初から考えんのはよくねえと思うのオレ。 ましてやこのハンサム顔見れば、人間だっつうことくらい分かんだろうがよ」 しかし男の口振りは対照的に、陽気さすら感じられる物だった。 出木杉は振り返って男を見る。 男は鍛え上げられた肉体の全身に傷を帯びている巨漢だった。 その風貌だけを見れば、不穏さを感じる所だ。 しかし男の軽い口調、不敵な笑みを浮かべる表情、 そして纏う雰囲気は決して不穏さを感じる物ではない。 不思議な頼もしさをすら感じられる物だった。 男の雰囲気を受けて、出木杉も冷静を取り戻す。 そして男の言葉と、先刻までの行動を思い返す。 男は出木杉より更に優れた身体能力を持つ。 その男が、頭上から不意打ちをする形で出木杉に接触してきた。 出木杉には、その行動の意図はすぐに察することができた。 男は殺し合いをするつもりは無いと。 「おれの名はジョセフ・ジョースター。ジョジョって呼んでくれ。 初対面でぶしつけだけどねェ、とりあえず名前を聞かせてくれよ」 こうして出木杉は運命の一族・ジョースター家の男、ジョセフ・ジョースターと出会った。     * 「それじゃあ名簿に在るジョースターさん……ジョセフさんが知っている名前は、ワムウとカーズ。 そしてお祖父さんのジョナサン・ジョースターとその宿敵のディオ・ブランドーだけですね?」 「だからジョジョって呼べって。……まあジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーは五十年前に死んだはずだから、 おれの知ってる二人のはずがねぇんだけどよ」 出木杉とジョセフは、すぐにお互いの自己紹介をして、 そのまま近くの木陰の岩場に向かい合って座り、情報交換を開始した。 参加者名簿の中にお互いの知人の名前が有るかを確認しあう。 出木杉の知人は四人とも殺し合いをするような人物ではないので、特に問題は無いが、 ジョセフの方は問題が大きい。 ワムウとカーズは、どちらも柱の男と呼ばれる生物である。 人間を食料としており、ジョセフとも敵対している。 極めて危険な存在と言えよう。 そしてジョセフの祖父であるジョナサン・ジョースターと、 吸血鬼でありジョナサンの宿敵でもあるディオ・ブランドーは、 五十年前に死んでいるはずなのだ。 「確かに五十年前に死んでいるのなら、ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーは本人たちではない公算は大きいです。 しかし本人たちである可能性も存在します……」 「……おいおい、じゃあ何かー? 五十年前に大西洋上で行方不明になったじいさんが、 『実は生きてましたーっ!!』って出てくるってのか?」 「……死亡する前の状態から連れて来られている可能性です」 出木杉は半世紀以上前の者たちが存在している可能性を語る。 それは時間移動の可能性。 出木杉は自分の知人であるドラえもんの出自に付いて説明する。 ドラえもんは22世紀の未来からタイムマシンでやって来た猫型ロボットなのだ。 同様の時間移動技術を以ってすれば、ジョナサンやディオを五十年前の時点から連れて来ることも可能なのだ。 「……それじゃあ、H・G・ウエルズの小説みてーなタイムマシンが本当に在るって言うのかよ?」 ジョセフは先刻までの陽気な態度が鳴りを潜め、低い声で出木杉に問う。 不審に思われても無理は無いと出木杉は思う。 もしドラえもんを知らなければ、自分も時間移動の話を信じることはできなかったであろう。 しかし知っている情報を秘匿にしておくことは、 ジョセフの危険や、後になってより深刻な不信に繋がる危険も在ると判断して、 ドラえもんの情報を正直に話したのだ。 もっとも、この場でジョセフと袂を分かつリスクも存在するが。 「…………ってことはよぉー、おめーは西暦1938年より未来の人間になるんじゃねーのか?」 「何でそれを!!?」 「……オーマイガッ!! まさかと思ってカマを掛けたんだが、マジかよぉ……」 しかしジョセフの言葉は出木杉の予想を超える物だった。 そして男の言葉と、先刻までの行動を思い返す。 男は出木杉より更に優れた身体能力を持つ。 その男が、頭上から不意打ちをする形で出木杉に接触してきた。 出木杉には、その行動の意図はすぐに察することができた。 男は殺し合いをするつもりは無いと。 「おれの名はジョセフ・ジョースター。ジョジョって呼んでくれ。 初対面でぶしつけだけどねェ、とりあえず名前を聞かせてくれよ」 こうして出木杉は運命の一族・ジョースター家の男、ジョセフ・ジョースターと出会った。     * 「それじゃあ名簿に在るジョースターさん……ジョセフさんが知っている名前は、ワムウとカーズ。 そしてお祖父さんのジョナサン・ジョースターとその宿敵のディオ・ブランドーだけですね?」 「だからジョジョって呼べって。……まあジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーは五十年前に死んだはずだから、 おれの知ってる二人のはずがねぇんだけどよ」 出木杉とジョセフは、すぐにお互いの自己紹介をして、 そのまま近くの木陰の岩場に向かい合って座り、情報交換を開始した。 参加者名簿の中にお互いの知人の名前が有るかを確認しあう。 出木杉の知人は四人とも殺し合いをするような人物ではないので、特に問題は無いが、 ジョセフの方は問題が大きい。 ワムウとカーズは、どちらも柱の男と呼ばれる生物である。 人間を食料としており、ジョセフとも敵対している。 極めて危険な存在と言えよう。 そしてジョセフの祖父であるジョナサン・ジョースターと、 吸血鬼でありジョナサンの宿敵でもあるディオ・ブランドーは、 五十年前に死んでいるはずなのだ。 「確かに五十年前に死んでいるのなら、ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーは本人たちではない公算は大きいです。 しかし本人たちである可能性も存在します……」 「……おいおい、じゃあ何かー? 五十年前に大西洋上で行方不明になったじいさんが、 『実は生きてましたーっ!!』って出てくるってのか?」 「……死亡する前の状態から連れて来られている可能性です」 出木杉は半世紀以上前の者たちが存在している可能性を語る。 それは時間移動の可能性。 出木杉は自分の知人であるドラえもんの出自に付いて説明する。 ドラえもんは22世紀の未来からタイムマシンでやって来た猫型ロボットなのだ。 同様の時間移動技術を以ってすれば、ジョナサンやディオを五十年前の時点から連れて来ることも可能なのだ。 「……それじゃあ、H・G・ウエルズの小説みてーなタイムマシンが本当に在るって言うのかよ?」 ジョセフは先刻までの陽気な態度が鳴りを潜め、低い声で出木杉に問う。 不審に思われても無理は無いと出木杉は思う。 もしドラえもんを知らなければ、自分も時間移動の話を信じることはできなかったであろう。 しかし知っている情報を秘匿にしておくことは、 ジョセフの危険や、後になってより深刻な不信に繋がる危険も在ると判断して、 ドラえもんの情報を正直に話したのだ。 もっとも、この場でジョセフと袂を分かつリスクも存在するが。 「…………ってことはよぉー、おめーは西暦1938年より未来の人間になるんじゃねーのか?」 「何でそれを!!?」 「……オーマイガッ!! まさかと思ってカマを掛けたんだが、マジかよぉ……」 しかしジョセフの言葉は出木杉の予想を超える物だった。 情報交換の端々から、ジョセフが自分の生きる時代より過去の人間だと言うことは、出木杉にも容易に推察できている。 それだからこそ時間移動の知識の普及していないはずなので、タイムマシンの話を信じて貰える公算は小さいと考えていた。 しかしジョセフは出木杉が未来の人間であることまで察知していたのだ。 まさかと思ってカマを掛けたと言ったが、ある程度の所信が無ければそんな真似はしないだろう。 「……おめーは日本人だろ? けどおめーの着てる服や靴は、おれの知ってる時代の日本の物だとしたら違和感があったんでな。 …………けどバトルロワイヤルの主催者がタイムスリップまで可能にするほどの技術を持ってるってなると、ちーと厄介だぜェ」 「……厄介、と言うのはどういう意味です?」 「決まってんだろ。主催者のヤローをきっちりブチのめしてやるのに、厄介だって言ってんの」 「バトルロワイヤルを脱出して、主催者を倒すことを目的にしているんですね」 「他にどうするって言うんだよー!」 出木杉にとって、ジョセフのような人間に出会うのは初めてだった。 自分より遥かに身体能力に優れ、 自分も驚くほどの洞察力を示し、 そして何の逡巡も衒いも無く脱出を試みる。 出木杉にとって、先行きの見えない脱出への道。 そこへ突然現れた希望。それがジョセフだった。 出木杉はこの地に着いてから、初めて希望を持って自分の志を口にする。 「…………ジョセフさん、ぼくも脱出を目的としています。同行をお願いできますか?」 「だからジョジョって呼べって言ってんだろ~……」 こうして出木杉は運命の一族・ジョースター家の男、ジョセフ・ジョースターと、志を同じくすべく交渉を開始する。 しかし出木杉はまだ知らなかった。 ジョースター家に纏わる、闇の一族との深い因縁を。 【C-6/森林部/一日目-深夜】 【出木杉英才@ドラえもん】  [状態]:健康  [装備]:無し  [道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3  [思考・行動]   基本方針:殺し合いはしない。   1:ジョセフが同行するように交渉する。   2:ドラえもんと合流する。   3:野比のび太、剛田武、源静香と合流する。  [備考]   ※参戦時期は不明です。 【C-6/森林部/一日目-深夜】 【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】  [状態]:健康  [装備]:無し  [道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3  [思考・行動]   基本方針:バトルロワイアルを脱出して主催者を倒す。   1:出木杉と情報交換する。   2:ワムウ、カーズを倒す。  [備考]   ※参戦時期は不明です。
***隠者の出会い ◆wYOF3ar91U 「バトルロワイヤルのルールでは、生還できるのは一人となっているから、 おそらく催している者の狙いは、参加者同士の殺し合いを誘発することだ……」 自生する広葉樹が視界を埋めるほどに生い茂る森の中、まだ声変わりもしていない少年の声が木霊する。 声は幼さを残しながら、冷静で極めて整然とした知性を感じさせる物だった。 もっともそれを聞く者は、当の少年以外には誰も居ないが。 少年は暗い森の中を淀みなく歩いていく。 「だから主催者の目的を推測するには、その線から進めていかなくてはならない……」 理路整然とした言葉は少年の優れた知性を示していた。 森の中を苦も無く進む姿は少年の優れた体力を示していた。 バトルロワイヤルの中でも自分の為すべきことを探す様は少年の優れた精神力を示していた。 知性。体力。精神力。少年はその名が示す通り、あらゆる面で優れた能力を持っている。 少年の名は出木杉英才と言った。 「……とりあえず、ドラえもんと合流することを優先しよう。彼の知識は、脱出に必要になる……」 しかし今はバトルロワイヤルの渦中。 無意味に声を上げるのは自殺行為だと、出木杉も自覚している。 しかし、そこに論理の飛躍が在っても構わずに出木杉は話し続ける。 自分の意思を、自分に言い聞かせるために。 怖いのだ。 何時、自分が殺されるか判らない状況が。 まるで脱出の方法が見えない状況が。 そして脱出を志すと言葉にしていなければ、自分自身に確信が持てない状況が。 出木杉は強い倫理観と道徳意識を持っている。 殺人への忌避感もそれだけ強い。 それでも、この場では何の確信も持てないのだ。 先刻確認した名簿を信じるなら、あの未来の道具を使いこなすドラえもんですら参加者とさせられているバトルロワイヤル。 幾ら出木杉が優秀でも、脱出の方法など見当も付かない。 そして名簿に記載されている名前はドラえもん、野比のび太、剛田武、源静香以外は全く知らない物だ。 ドラえもんたちが殺し合いに乗るとは思えないが、彼らのほとんどは小学生。 悪意在る大人の手に掛かれば、容易く命を落とすだろう。 今こうしている間にも、友達が殺されているかもしれない。 それは想像しただけでも恐ろしいことだった。 何より、出木杉自身も小学生に過ぎない。 命の危険に晒された時、自分の身を守れるのか。 そして誰かを殺すことでしか自分の身を守れないとなった時、強固な意志をどこまで保てるのか。 出木杉はまだ小学生。これから学んで自分を作り上げていく人間だ。 実際のところ、今の段階では何の保障も無い人間なのだ。 生きるか死ぬかの極限状況。 ただの小学生の過ぎない出木杉にとって、それは意思を保つことすら困難な状況だった。 (…………誰か居る!!) 出木杉の声が、足が止まる。 前方約十メートル。ほとんど視界が利かない森の暗がりの中、薄ぼんやりとした影しか確認できない。 しかし確かに男の姿が在った。 大人の男。それも二メートル近くありそうな大柄な男だ。 無論、出木杉の友人にそんな大男は居ない。 出木杉の心臓が跳ね上がり、足が震える。 誰かと遭遇することも当然、想定していた。 その時の対応策も。 可能な限りリスクの少ない形で接触。 そしてとりあえずでも安全だと確認できれば情報交換をして、交渉次第では同行する。 それらの具体的な手段まで想定していたのだ。 しかし想定と現実は、全く違ったのだ。 殺し合いの状況の中で、未知の人物と接触する。 それは自ら修羅場に踏み込むと言うこと。 現実に実行するのは、出木杉の想像以上の勇気が必要だった。 これが出木杉の友人、野比のび太や剛田武や源静香ならば話は別だったかもしれない。 彼らも小学生であり、出木杉ほど優秀とは言い難い。 しかし彼らには修羅場の経験があった。 自らの命を危険に晒す冒険を潜り抜けてきた経験が。 しかし出木杉にはそんな経験は存在しない。 命がけの冒険はこれが始めてになる。 そしてただの小学生がたった一人で乗り越えるには、命がけの冒険というハードルは高過ぎた。 (……今のぼくの状態では交渉が上手く行くとは思えない。ここは接触を避けるべきだろう……) それは自分の状態を考慮しての適切な判断なのか。 自分の臆病を誤魔化すための言い訳なのか。 心中で自分でも判然としない理由を並べ立てて、出木杉は男から逃げることを選択する。 男から生い茂る木に身を隠し、出木杉はその場を離れようとする。 その優れた身体能力を活かし、木陰から木陰へと移動して行く。 そして木陰から頭だけを出して、男がこちらの存在に気付いていないかを確認。 男の姿は無かった。 不測の事態に出木杉の不安感が一気に強まる。 男は確かにそこに居たはずなのに、出木杉が目を離した僅かの隙に消えていたのだ。 周囲を見渡すが男の姿は無い。 得体の知れない不安に包まれ、出木杉はしばし呆然とその場に立ち尽くす。 「ノックしてもしも~し」 突然、頭上から声が聞こえた。 その場の雰囲気とはあまりにもそぐわない、弛緩した声。 それとともに、出木杉の頭が軽く小突かれる。 頭上を仰ぐと、先ほどの男が木の枝から逆さになってぶら下がっていた。 反射的に走り出す出木杉。 そこに状況判断も論理的思考も無い。 半ば恐慌状態に近い物があった。 「おい待て!! 人がもしもしっつってんのに、逃げ出してんじゃねー!」 暗い森の中を、何度も足を取られそうになりながら、 出木杉はそれでも止まることなく駆け抜けていく。 しかしすぐに背後から襟首を掴まれて止められる。 振り返らなくても先ほどの男だとは判った。 男は暗い森の中を、出木杉に容易く追い付いたのだ。 逃げることは不可能。 出木杉はついに死を覚悟する。 「だから逃げんなっつってんの! 人の話聞けよなぁ~。 雪男やネッシーとかに出会った時だって、悪い者と最初から考えんのはよくねえと思うのオレ。 ましてやこのハンサム顔見れば、人間だっつうことくらい分かんだろうがよ」 しかし男の口振りは対照的に、陽気さすら感じられる物だった。 出木杉は振り返って男を見る。 男は鍛え上げられた肉体の全身に傷を帯びている巨漢だった。 その風貌だけを見れば、不穏さを感じる所だ。 しかし男の軽い口調、不敵な笑みを浮かべる表情、 そして纏う雰囲気は決して不穏さを感じる物ではない。 不思議な頼もしさをすら感じられる物だった。 男の雰囲気を受けて、出木杉も冷静を取り戻す。 そして男の言葉と、先刻までの行動を思い返す。 男は出木杉より更に優れた身体能力を持つ。 その男が、頭上から不意打ちをする形で出木杉に接触してきた。 出木杉には、その行動の意図はすぐに察することができた。 男は殺し合いをするつもりは無いと。 「おれの名はジョセフ・ジョースター。ジョジョって呼んでくれ。 初対面でぶしつけだけどねェ、とりあえず名前を聞かせてくれよ」 こうして出木杉は運命の一族・ジョースター家の男、ジョセフ・ジョースターと出会った。     * 「それじゃあ名簿に在るジョースターさん……ジョセフさんが知っている名前は、ワムウとカーズ。 そしてお祖父さんのジョナサン・ジョースターとその宿敵のディオ・ブランドーだけですね?」 「だからジョジョって呼べって。……まあジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーは五十年前に死んだはずだから、 おれの知ってる二人のはずがねぇんだけどよ」 出木杉とジョセフは、すぐにお互いの自己紹介をして、 そのまま近くの木陰の岩場に向かい合って座り、情報交換を開始した。 参加者名簿の中にお互いの知人の名前が有るかを確認しあう。 出木杉の知人は四人とも殺し合いをするような人物ではないので、特に問題は無いが、 ジョセフの方は問題が大きい。 ワムウとカーズは、どちらも柱の男と呼ばれる生物である。 人間を食料としており、ジョセフとも敵対している。 極めて危険な存在と言えよう。 そしてジョセフの祖父であるジョナサン・ジョースターと、 吸血鬼でありジョナサンの宿敵でもあるディオ・ブランドーは、 五十年前に死んでいるはずなのだ。 「確かに五十年前に死んでいるのなら、ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーは本人たちではない公算は大きいです。 しかし本人たちである可能性も存在します……」 「……おいおい、じゃあ何かー? 五十年前に大西洋上で行方不明になったじいさんが、 『実は生きてましたーっ!!』って出てくるってのか?」 「……死亡する前の状態から連れて来られている可能性です」 出木杉は半世紀以上前の者たちが存在している可能性を語る。 それは時間移動の可能性。 出木杉は自分の知人であるドラえもんの出自に付いて説明する。 ドラえもんは22世紀の未来からタイムマシンでやって来た猫型ロボットなのだ。 同様の時間移動技術を以ってすれば、ジョナサンやディオを五十年前の時点から連れて来ることも可能なのだ。 「……それじゃあ、H・G・ウエルズの小説みてーなタイムマシンが本当に在るって言うのかよ?」 ジョセフは先刻までの陽気な態度が鳴りを潜め、低い声で出木杉に問う。 不審に思われても無理は無いと出木杉は思う。 もしドラえもんを知らなければ、自分も時間移動の話を信じることはできなかったであろう。 しかし知っている情報を秘匿にしておくことは、 ジョセフの危険や、後になってより深刻な不信に繋がる危険も在ると判断して、 ドラえもんの情報を正直に話したのだ。 もっとも、この場でジョセフと袂を分かつリスクも存在するが。 「…………ってことはよぉー、おめーは西暦1938年より未来の人間になるんじゃねーのか?」 「何でそれを!!?」 「……オーマイガッ!! まさかと思ってカマを掛けたんだが、マジかよぉ……」 しかしジョセフの言葉は出木杉の予想を超える物だった。 そして男の言葉と、先刻までの行動を思い返す。 男は出木杉より更に優れた身体能力を持つ。 その男が、頭上から不意打ちをする形で出木杉に接触してきた。 出木杉には、その行動の意図はすぐに察することができた。 男は殺し合いをするつもりは無いと。 「おれの名はジョセフ・ジョースター。ジョジョって呼んでくれ。 初対面でぶしつけだけどねェ、とりあえず名前を聞かせてくれよ」 こうして出木杉は運命の一族・ジョースター家の男、ジョセフ・ジョースターと出会った。     * 「それじゃあ名簿に在るジョースターさん……ジョセフさんが知っている名前は、ワムウとカーズ。 そしてお祖父さんのジョナサン・ジョースターとその宿敵のディオ・ブランドーだけですね?」 「だからジョジョって呼べって。……まあジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーは五十年前に死んだはずだから、 おれの知ってる二人のはずがねぇんだけどよ」 出木杉とジョセフは、すぐにお互いの自己紹介をして、 そのまま近くの木陰の岩場に向かい合って座り、情報交換を開始した。 参加者名簿の中にお互いの知人の名前が有るかを確認しあう。 出木杉の知人は四人とも殺し合いをするような人物ではないので、特に問題は無いが、 ジョセフの方は問題が大きい。 ワムウとカーズは、どちらも柱の男と呼ばれる生物である。 人間を食料としており、ジョセフとも敵対している。 極めて危険な存在と言えよう。 そしてジョセフの祖父であるジョナサン・ジョースターと、 吸血鬼でありジョナサンの宿敵でもあるディオ・ブランドーは、 五十年前に死んでいるはずなのだ。 「確かに五十年前に死んでいるのなら、ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーは本人たちではない公算は大きいです。 しかし本人たちである可能性も存在します……」 「……おいおい、じゃあ何かー? 五十年前に大西洋上で行方不明になったじいさんが、 『実は生きてましたーっ!!』って出てくるってのか?」 「……死亡する前の状態から連れて来られている可能性です」 出木杉は半世紀以上前の者たちが存在している可能性を語る。 それは時間移動の可能性。 出木杉は自分の知人であるドラえもんの出自に付いて説明する。 ドラえもんは22世紀の未来からタイムマシンでやって来た猫型ロボットなのだ。 同様の時間移動技術を以ってすれば、ジョナサンやディオを五十年前の時点から連れて来ることも可能なのだ。 「……それじゃあ、H・G・ウエルズの小説みてーなタイムマシンが本当に在るって言うのかよ?」 ジョセフは先刻までの陽気な態度が鳴りを潜め、低い声で出木杉に問う。 不審に思われても無理は無いと出木杉は思う。 もしドラえもんを知らなければ、自分も時間移動の話を信じることはできなかったであろう。 しかし知っている情報を秘匿にしておくことは、 ジョセフの危険や、後になってより深刻な不信に繋がる危険も在ると判断して、 ドラえもんの情報を正直に話したのだ。 もっとも、この場でジョセフと袂を分かつリスクも存在するが。 「…………ってことはよぉー、おめーは西暦1938年より未来の人間になるんじゃねーのか?」 「何でそれを!!?」 「……オーマイガッ!! まさかと思ってカマを掛けたんだが、マジかよぉ……」 しかしジョセフの言葉は出木杉の予想を超える物だった。 情報交換の端々から、ジョセフが自分の生きる時代より過去の人間だと言うことは、出木杉にも容易に推察できている。 それだからこそ時間移動の知識の普及していないはずなので、タイムマシンの話を信じて貰える公算は小さいと考えていた。 しかしジョセフは出木杉が未来の人間であることまで察知していたのだ。 まさかと思ってカマを掛けたと言ったが、ある程度の所信が無ければそんな真似はしないだろう。 「……おめーは日本人だろ? けどおめーの着てる服や靴は、おれの知ってる時代の日本の物だとしたら違和感があったんでな。 …………けどバトルロワイヤルの主催者がタイムスリップまで可能にするほどの技術を持ってるってなると、ちーと厄介だぜェ」 「……厄介、と言うのはどういう意味です?」 「決まってんだろ。主催者のヤローをきっちりブチのめしてやるのに、厄介だって言ってんの」 「バトルロワイヤルを脱出して、主催者を倒すことを目的にしているんですね」 「他にどうするって言うんだよー!」 出木杉にとって、ジョセフのような人間に出会うのは初めてだった。 自分より遥かに身体能力に優れ、 自分も驚くほどの洞察力を示し、 そして何の逡巡も衒いも無く脱出を試みる。 出木杉にとって、先行きの見えない脱出への道。 そこへ突然現れた希望。それがジョセフだった。 出木杉はこの地に着いてから、初めて希望を持って自分の志を口にする。 「…………ジョセフさん、ぼくも脱出を目的としています。同行をお願いできますか?」 「だからジョジョって呼べって言ってんだろ~……」 こうして出木杉は運命の一族・ジョースター家の男、ジョセフ・ジョースターと、志を同じくすべく交渉を開始する。 しかし出木杉はまだ知らなかった。 ジョースター家に纏わる、闇の一族との深い因縁を。 【C-6/森林部/一日目-深夜】 【出木杉英才@ドラえもん】  [状態]:健康  [装備]:無し  [道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3  [思考・行動]   基本方針:殺し合いはしない。   1:ジョセフが同行するように交渉する。   2:ドラえもんと合流する。   3:野比のび太、剛田武、源静香と合流する。  [備考]   ※参戦時期は不明です。 【C-6/森林部/一日目-深夜】 【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】  [状態]:健康  [装備]:無し  [道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3  [思考・行動]   基本方針:バトルロワイアルを脱出して主催者を倒す。   1:出木杉と情報交換する。   2:ワムウ、カーズを倒す。  [備考]   ※参戦時期は不明です。 *時系列順で読む Back:[[]] Next:[[]] *投下順で読む Back:[[地獄とは神の実在なり]] Next:[[その血の運命]] |GAME START|出木杉英才|:| |GAME START|ジョセフ・ジョースター|:|

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