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ネコとカナヅチは使いよう」(2013/09/19 (木) 22:51:06) の最新版変更点

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**ネコとカナヅチは使いよう ◆LL3ffKrOXk 中学一年生の少年、日向冬樹は中学校を訪れていた。 時間はまだ木々も寝静まる夜であり、決して登校時間などではない。しかし彼――冬樹はそこにいた。 何故ならこれは日常ではなく非日常であるからだ。 いつもの学校生活ではない、殺し合いの舞台に彼は居た。 小学生の時宇宙人と出会い、それ以降日常及び非日常を行き来することになった冬樹ではあるが、殺し合いなど参加したこともない。 今、自分が置かれている状況に困惑しつつも、まず彼が目標とした事。それは姉――『日向夏美』。そして"友達"であるカエル型宇宙人『ケロロ軍曹』と再会、合流する事だった。 そもそも何故冬樹が中学校にいるのか。 それはただ、元々冬樹が送られた所が中学校に近い場所であり、行動の際 "それ" を発見したという単純明快なものである。 ――もしかしたら。 もしかしたら、自分の捜している人物がそこにいるかもしれない。 そう考えた結果が現在の日向冬樹なのではあるが。 詰まる所、行動の中途発見した見ず知らずの学校に、ケロロ軍曹や日向夏美。他のケロロ小隊の面々がいるかもしれないと考えた訳である。 「ここには誰もいない……か」 当人である冬樹は現在、中学校の2階廊下にいた。 基本支給品である懐中電灯片手に、校内の探索を、知人の捜索をしていた。 「軍曹……軍曹の事だからたぶん大丈夫だと思うけど、やっぱり心配だな。  幸い伍長、クルル、ドロロもいるのはあの三人ならそう簡単にはやられないと思うしね。なんでタママだけいないのかは分からないけど……」 冬樹は名簿を見ながらそう呟く。 身内同然であり友達である侵略者の事を呟いてはいるが、矢張り一番心配なのは自分の姉である日向夏美もこの殺し合いに参加していることであった。 夏美は、こういう事には黙ってはいられない人間である事を弟である自分が一番知っている。 積極的に殺し合いに参加している参加者に突っ込んで、そのまま御陀仏――などという事もあるかもしれない。 もしかしたら、またケロロの仕業と勘繰って怒りを露わにしているのかもしれないし、以外と冷静に物事を整理しているのかもしれないが、それでも冬樹は自分の姉であり家族である夏美の事が心配だった。 だからこそ、冬樹はケロロ軍曹または日向夏美との合流を考えていた。 「夜の学校にはオバケが出るっていうのはよくある怪談話だけど、今思うと本当にいる気がするよ……あはは……」 冬樹は自分の家に棲みついている侵略者や幽霊の少女を思い浮かべながら乾いた笑いを漏らす。 そんな事を口にしながら3階に向かった冬樹は、暗い渡り廊下にぼんやりと影が映っているの気がついた。 「あれっ。あそこに誰かいるのかな……?」 注意を図りながら、冬樹は渡り廊下に潜む影に懐中電灯の灯りを頼りにしながら近づく。 そこには――おそらく支給品であろうディパックを小さい体で器用に運んでいるトラ猫がいた。 ディパックを所持しているということは参加者なのだろう。 だがしかし、冬樹はそこであるひとつの疑問を持つ。 「ネコも参加者だなんて……」 ネコが殺し合いに参加させられていることも驚きではあるが、何よりも驚くことがあった。 そのネコは、二足歩行で立っているのだ。さらにディパックまで持ちながら。 そして何故か赤いマントを装備しているのだった。 「ネコが、立ってる……しかも歩いてる!」 「誰だッ!?」 冬樹の声を聞き、その存在に気づいたトラ猫は振り向き、ディパックを構える。 片目はアイパッチをしており、顔にもいくつか傷が点在していた。 その明らかに異様な容貌をしているネコは、かなり警戒している様子だった。 「ネコが喋ってる! 二足で立って歩いてる!  これは世紀の大発見だよ!」 「……は?」 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「ごめんごめん。驚かすつもりはなかったんだけど……  僕は吉祥学園一年の日向冬樹。よろしくね」 「拙者の名はマタタビと申す」 お互い挨拶を交わした一人と一匹は、とりあえず話をということで3階教室の中に向かった。 「マタタビも参加者なんだよね?」 「……そうみたいだな。袋の中に入っていた名簿にも名前が記載されていた。  拙者は殺し合いに乗る気はないがな。目的はキッドと決着をつけることぐらいか……  まあキッドとも殺し合いをする気までは……ないが。たぶん」 教室に向かう途中で、しばしの話をする冬樹とマタタビ。 中学生の少年と赤いマントを羽織ったトラ猫が並んで歩いている姿は、滑稽であったに違いない。 「キッドって?」 「拙者の永遠の宿敵の名だ。アイツとはいつか決着をつけねばならない」 「名簿にはキッドって名前はなかったみたいなんだけど、ここにはいないの?」 「ヤツは、キッドはいつの間にか何故かクロと名を変えていた。  その名が名簿に乗っている以上、キッドもこの殺し合いに参加していると見て間違いないだろう」 「マタタビっていつから立ったり喋れったりしてるの?」 「ニンゲンの言葉は時代劇というもので覚えた。立って歩いてるのは……いつの間にかだな……きっかけはあるんだろうが」 「それを考えると猫又というわけじゃないのかな……それでも歴史上において立って喋れる猫が実在した事は大発見ではあるんだけど……」 「いつまでブツブツ言ってる。着いたぞ」 「あっ、ごめん」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 教室に着いた二人はとりあえず情報の交換をすることにした。 冬樹は自分の家に侵略者の宇宙人がやってきたこと。ひとつ上の姉がいること。その姉と侵略者が殺し合いに参加させられていることを。 マタタビはキッド、もといクロとの因縁、そして彼がサイボーグになっていたこと。彼をサイボーグにした科学者及びその隣にいつもいる機械猫が殺し合いに参加者させられていることを話した。 「サイボーグかぁ……地球にそんな技術力を持った人がいたなんて知らなかったよ」 「拙者は宇宙人という存在がいたことに驚いた。まあキッドも宇宙人に会ったことはあるらしいがな」 「そういえば、マタタビの支給品はなんだったの?  僕は手袋一式と……ナイフだね。危険だからナイフは仕舞っておくよ」 「確かに拙者もまだ武器は確認していなかったな。『すてるすブーメラン』があれば大分違うんだけどな……  すてるすブーメランでなくともチェーンソーでも刀でもあればいいが……」 そう呟きながらマタタビはディパックを漁り始める。 まず出てきたのは石で出来ている奇妙な仮面だった。 「なんだこりゃ」 「仮面……みたいだね」 「チッ、こんなもの武器にもなりやしねえ。次」 しかしこれ以上、中を弄っても反応はなかった。 否、まだ何か反応がある。 何やらごつごつとした、鉄のような感触がマタタビの肉球を伝わる。 "それ"を握り、マタタビはそのまま思い切り引っ張る。 「……あ? なんだこりゃ」 マタタビの手に握られていたそれは、太くて歪な石の棒のような、ごつごつとした何かであった。 炎が波打ったような形状をしており、柄の中央には穴が空いている。 「ぐっ……何だこれは……ッ  とてつもなく重い!」 そのままマタタビは重さに耐えきれずその石のカタマリを手放す。 するとそれは、物凄い勢いで落下し、激しい音を立てながら木製の床を突き破り下階へと落下していった。 このディパックの中は四次元式になっており、質量も重量も関係なく色々なものが収納できる代物である。 故に、ディパックから外に出すまでは常にディパックは一定の重量を維持し、出した瞬間支給品の重さが発現される仕組みとなっていると推測できる。 つまり、それがディパックの中に入っていた時はそのとてつもない重さはなりを潜めていたが、ディパック外に出したためその異常なまでの重量がそのまま解放された。という事であろう。 とにかく、床を突き破り猛烈に落下して行った石のカタマリは、1階の床にめり込んだ。 「大丈夫、マタタビ!?」 「なんて重さだ。床を突き破っていきやがった……」 「とにかく一階へ行ってみよう」 彼らが一階に向かっている内に、鉄のカタマリについての説明をしておこう。 マタタビに支給されたとてつもなく重い石のカタマリ。銘を『双刀・鎚(カナヅチ)』と云う。 刀鍛冶、四季崎記紀の手によって造られた十二本ある完成形変体刀のひとつ。 その刀は「重さ」を主眼として置かれており、まさに『とてつもない質量のカタマリ』である。それだけに破壊力は凄まじいが重さも凄まじく、それを扱えるだけの怪力の持ち主でないと字の通り扱えない代物であった。 そして鎚は鞘や鍔などの刀にあるべきものが何もなく、上下の区別ですら曖昧であり、どちらも柄と呼ばれるものと呼べるだろう。だからこそ、この刀は双刀と呼ばれているのだが。 「うわっ、地面に突き刺さっちゃってるよ」 「どうやら回収は無理そうだな」 そしてその双刀は床に突き刺さっている。 冬樹は勿論、マタタビもこの石刀を持ち上げる事さえままならない。 このまま二人は鎚を突き刺さっているままにしておく事しかできなかった。 ――支給品がこれだけならの話だが。 「仕方ない。これは諦めるぞ」 「誰かに頼んで持ってもらうっていうのは?」 「敵に武器をやってどうする」 「あ、そうか……」 「そういえば、ディパックにこの武器の説明書が入っていた。双刀・鎚というらしい」 彼らは無機質なパソコン字で記載されている説明書を確認する。 説明書と言っても、基本的な説明がおざなりに載っているだけなのではあるが。 「四季崎記紀……すごい人なんだね。  これ以外にも十一本の刀があるみたいだけど、これ以外も支給品になってるのかな?」 「恐らくな。ただこの刀は何か異様な雰囲気を感じるのが気になる」 「そういえば、僕の支給品の説明書も確認したんだけど、ナイフの方はただのサバイバルナイフみたい。  でね、手袋のほうなんだけど、凄いパワーが出せるスーパー手ぶくろっていうものみたいなんだ」 「なに?」 スーパー手ぶくろの説明書には確かに怪力が発揮できると書かれている。力だけでなく、筋力や筋持久力も上昇するらしい。 ただし、従来のパワーは出せないように調整してあるようだが。 「これを使えば鎚を持ち運べるかもしれないね。ちょっと僕やってみる」 「持ち上がらなかったら拙者が一度やってみる。  それでも駄目なら仕方ないが諦めるしかないか……」 「せーのっ、それっ!」 ヒョイッ。 擬音にするならそんな感じであろう。 それはいとも簡単にあっさりと持ち上がった。地面にめり込んでいたのが嘘かのように。 「やった!」 「ほぇー、すげーな」 「ただ手袋を着けてても結構重いんだよね……  僕腕力無いし、手袋も本来の能力じゃないみたいだから仕方ないのかな……えへへ」 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「それじゃあ僕はみんなをまた捜すよ。マタタビはこれからどうするの?」 「拙者は殺し合いなどには興味がないからな。自由にやらせてもらうさ」 「それなら僕と一緒に行くってのはどうかな?  単独でより複数人で行動したほうが効率がいいと思うんだけど……」 「断る」 冬樹の提案。それに対するマタタビの返答はあまりにもそっけないものだった。 「拙者は他人に縛られるほどぬるま湯に浸かってはいねえ。  それに貴様は結局のところただの他人だ。そう簡単に信用はできねえよ。これは殺し合いだぞ?  軽々しく信用してアッサリくたばったとなりゃあオスネコの名が廃るってもんだ。  もし百万歩譲って同行したとしよう。もしその時拙者がキッドに出くわした時、貴様がいると足手まといにしかならなさそうだからな……」 「じゃあ交換条件をつけるよ。僕の武器と交換でどう?  スーパー手ぶくろとサバイバルナイフ。どの道これがないと鎚が使えないでしょ?」 「クク……物で釣ろうなど甘い。拙者はそんな物には……」 刹那――――マタタビはある重大な事に気がついた。 (食糧が無い……!) 実はこのネコ、冬樹と出会う前、空腹に負け既に支給された食糧を食い尽くしていたのである。 食い物がなければ倒れてしまう。 以前もドクター剛達に発見されなければ餓死していただろう。 食糧なら確保すればいい。がしかし、生物や果実があるかどうかも分からない。ここははっきり言ってしまえば未知の境地なのだから。 「……いいだろう。この殺し合いの間だけは同行してやるか」 「マタタビ……」 だから、このトラ猫、マタタビが取った手段。それは―― 「ただし条件が三つある。まず足手まといにはなるな。次にその手袋は拙者に渡せ。そして……」 「そして……?」 静寂が一瞬、一瞬だけ二人。もとい一人と一匹を包む。 「貴様の食糧を半分くれっ」 「うん、いいよ!」 こうして二人は同行することとなった。 一匹は成り行きで。一人は大切な人を探すために―― 「おっと、そういや忘れてた」 と、学校を出発しようとした瞬間、 何か思いあたったようにマタタビが、立ち止まる。 「えっ、何を?」 「床の修理だよ。あの鎚とかいうヘンな刀のせいで壊れちまってんだろうが。  工具かなんか持ってねえか?」 「工具なら……技術室かな?」 「おっし、じゃあ早速行くぞ」 「えっ、出発しないの?」 「んなもん後回しだ。穴ぼこ放っとくほうがタチ悪りぃだろうが。  床三枚ぐらいすぐ終わる。終わったらすぐにここを出るぞ」 「う、うん」 ……彼らの出発はまだ先になりそうだ。 【E-8/中学校/一日目-深夜】 【日向冬樹@ケロロ軍曹】  [状態]:吉祥学園の制服(ブレザー)  [状態]:健康  [装備]:  [道具]:基本支給品一式、スーパー手ぶくろ@ドラえもん、サバイバルナイフ  [思考・行動]   基本方針:まずはみんなと合流することを優先   0:マタタビに食糧とスーパー手ぶくろを渡さなくちゃ   1:姉ちゃんやケロロ小隊のみんなを捜す   2:工具を探しに技術室まで行く   3:マタタビの事をもっと知りたい   4:できればキッド(クロ)やドクター剛にも会いたい  [備考]  ※参戦時期は不明です。  ※マタタビと情報を交換しました。  ※冬樹はクロの名前をキッドとして認識しています。 【マタタビ@サイボーグクロちゃん】  [衣装]:アイパッチ、マント  [状態]:健康  [装備]:  [道具]:基本支給品一式(飲料含む食糧全消費)、双刀・鎚@刀語、石仮面@ジョジョの奇妙な冒険  [思考・行動]   基本方針:あわよくば、この機にキッド(クロ)と決着をつける   1:まずは床を直すか   2:とりあえず冬樹と同行  [備考]  ※参戦時期は少なくとも54話以降です。  ※日向冬樹と情報を交換しました。 【スーパー手ぶくろ@ドラえもん】 日向冬樹に支給。 ゴム手袋を象った道具。これをはめることで怪力を発揮できるようになる。 腕だけじゃなく、全身の筋力や持久力なども上がる。 ロワでは制限調整により怪力が弱体化している。 【サバイバルナイフ@現実】 日向冬樹に支給。 折りたたみ機構を持たず、保管時に刃を鞘に収めて保護する構造であるシースナイフの一種。 刃が暑く頑丈で、大型であるのが特徴。 サバイバルナイフを目的として造られているため、鉈として、武器として、はたまた用具入れなどとして、何でもござれである。 ただし構造上の問題で、他のナイフより壊れやすいのが欠点。 【双刀・鎚@刀語】 マタタビに支給。 炎が波打ったような刀身にに二又に分かれて中央に穴が開いた柄、柄頭に平べったいモーニングスターが取り付けられた形状の刃渡り二尺三寸ほど、鞘も鍔も刃文もなく、上下の区別もあいまいな石刀。 「重さ」に主眼が置かれており、軽く投げ重力に任せて落としただけで硬い地面にめり込むほど重い。 否定姫曰く「すさまじい質量のかたまりであり、持ち上げることさえ満足に敵わない刀」とのこと。 【石仮面@ジョジョの奇妙な冒険】 マタタビに支給。 アステカ文明で使用されたとされる石製の仮面。 長い歳月を経てジョースター夫妻により骨董屋で掘り出される。 縄状の装飾や犬歯の伸びた口元など見るからに異様な雰囲気を漂わせている。 実は、骨針が頭蓋骨ごと脳を貫きエネルギーを注入することで、脳の未使用領域を活性化させ、吸血鬼化させてしまう恐るべき仮面。 使用方法は、石仮面を装着したあと石仮面に血液を付着させるだけである。 *時系列順で読む Back:[[]] Next:[[]] *投下順で読む Back:[[「鼻毛使い」と書いて「プリキュア」と読ませたい…]] Next:[[]] |GAME START|日向冬樹|:| |GAME START|マタタビ|:|
**ネコとカナヅチは使いよう ◆LL3ffKrOXk 中学一年生の少年、日向冬樹は中学校を訪れていた。 時間はまだ木々も寝静まる夜であり、決して登校時間などではない。しかし彼――冬樹はそこにいた。 何故ならこれは日常ではなく非日常であるからだ。 いつもの学校生活ではない、殺し合いの舞台に彼は居た。 小学生の時宇宙人と出会い、それ以降日常及び非日常を行き来することになった冬樹ではあるが、殺し合いなど参加したこともない。 今、自分が置かれている状況に困惑しつつも、まず彼が目標とした事。それは姉――『日向夏美』。そして"友達"であるカエル型宇宙人『ケロロ軍曹』と再会、合流する事だった。 そもそも何故冬樹が中学校にいるのか。 それはただ、元々冬樹が送られた所が中学校に近い場所であり、行動の際 "それ" を発見したという単純明快なものである。 ――もしかしたら。 もしかしたら、自分の捜している人物がそこにいるかもしれない。 そう考えた結果が現在の日向冬樹なのではあるが。 詰まる所、行動の中途発見した見ず知らずの学校に、ケロロ軍曹や日向夏美。他のケロロ小隊の面々がいるかもしれないと考えた訳である。 「ここには誰もいない……か」 当人である冬樹は現在、中学校の2階廊下にいた。 基本支給品である懐中電灯片手に、校内の探索を、知人の捜索をしていた。 「軍曹……軍曹の事だからたぶん大丈夫だと思うけど、やっぱり心配だな。  幸い伍長、クルル、ドロロもいるのはあの三人ならそう簡単にはやられないと思うしね。なんでタママだけいないのかは分からないけど……」 冬樹は名簿を見ながらそう呟く。 身内同然であり友達である侵略者の事を呟いてはいるが、矢張り一番心配なのは自分の姉である日向夏美もこの殺し合いに参加していることであった。 夏美は、こういう事には黙ってはいられない人間である事を弟である自分が一番知っている。 積極的に殺し合いに参加している参加者に突っ込んで、そのまま御陀仏――などという事もあるかもしれない。 もしかしたら、またケロロの仕業と勘繰って怒りを露わにしているのかもしれないし、以外と冷静に物事を整理しているのかもしれないが、それでも冬樹は自分の姉であり家族である夏美の事が心配だった。 だからこそ、冬樹はケロロ軍曹または日向夏美との合流を考えていた。 「夜の学校にはオバケが出るっていうのはよくある怪談話だけど、今思うと本当にいる気がするよ……あはは……」 冬樹は自分の家に棲みついている侵略者や幽霊の少女を思い浮かべながら乾いた笑いを漏らす。 そんな事を口にしながら3階に向かった冬樹は、暗い渡り廊下にぼんやりと影が映っているの気がついた。 「あれっ。あそこに誰かいるのかな……?」 注意を図りながら、冬樹は渡り廊下に潜む影に懐中電灯の灯りを頼りにしながら近づく。 そこには――おそらく支給品であろうディパックを小さい体で器用に運んでいるトラ猫がいた。 ディパックを所持しているということは参加者なのだろう。 だがしかし、冬樹はそこであるひとつの疑問を持つ。 「ネコも参加者だなんて……」 ネコが殺し合いに参加させられていることも驚きではあるが、何よりも驚くことがあった。 そのネコは、二足歩行で立っているのだ。さらにディパックまで持ちながら。 そして何故か赤いマントを装備しているのだった。 「ネコが、立ってる……しかも歩いてる!」 「誰だッ!?」 冬樹の声を聞き、その存在に気づいたトラ猫は振り向き、ディパックを構える。 片目はアイパッチをしており、顔にもいくつか傷が点在していた。 その明らかに異様な容貌をしているネコは、かなり警戒している様子だった。 「ネコが喋ってる! 二足で立って歩いてる!  これは世紀の大発見だよ!」 「……は?」 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「ごめんごめん。驚かすつもりはなかったんだけど……  僕は吉祥学園一年の日向冬樹。よろしくね」 「拙者の名はマタタビと申す」 お互い挨拶を交わした一人と一匹は、とりあえず話をということで3階教室の中に向かった。 「マタタビも参加者なんだよね?」 「……そうみたいだな。袋の中に入っていた名簿にも名前が記載されていた。  拙者は殺し合いに乗る気はないがな。目的はキッドと決着をつけることぐらいか……  まあキッドとも殺し合いをする気までは……ないが。たぶん」 教室に向かう途中で、しばしの話をする冬樹とマタタビ。 中学生の少年と赤いマントを羽織ったトラ猫が並んで歩いている姿は、滑稽であったに違いない。 「キッドって?」 「拙者の永遠の宿敵の名だ。アイツとはいつか決着をつけねばならない」 「名簿にはキッドって名前はなかったみたいなんだけど、ここにはいないの?」 「ヤツは、キッドはいつの間にか何故かクロと名を変えていた。  その名が名簿に乗っている以上、キッドもこの殺し合いに参加していると見て間違いないだろう」 「マタタビっていつから立ったり喋れったりしてるの?」 「ニンゲンの言葉は時代劇というもので覚えた。立って歩いてるのは……いつの間にかだな……きっかけはあるんだろうが」 「それを考えると猫又というわけじゃないのかな……それでも歴史上において立って喋れる猫が実在した事は大発見ではあるんだけど……」 「いつまでブツブツ言ってる。着いたぞ」 「あっ、ごめん」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 教室に着いた二人はとりあえず情報の交換をすることにした。 冬樹は自分の家に侵略者の宇宙人がやってきたこと。ひとつ上の姉がいること。その姉と侵略者が殺し合いに参加させられていることを。 マタタビはキッド、もといクロとの因縁、そして彼がサイボーグになっていたこと。彼をサイボーグにした科学者及びその隣にいつもいる機械猫が殺し合いに参加者させられていることを話した。 「サイボーグかぁ……地球にそんな技術力を持った人がいたなんて知らなかったよ」 「拙者は宇宙人という存在がいたことに驚いた。まあキッドも宇宙人に会ったことはあるらしいがな」 「そういえば、マタタビの支給品はなんだったの?  僕は手袋一式と……ナイフだね。危険だからナイフは仕舞っておくよ」 「確かに拙者もまだ武器は確認していなかったな。『すてるすブーメラン』があれば大分違うんだけどな……  すてるすブーメランでなくともチェーンソーでも刀でもあればいいが……」 そう呟きながらマタタビはディパックを漁り始める。 まず出てきたのは石で出来ている奇妙な仮面だった。 「なんだこりゃ」 「仮面……みたいだね」 「チッ、こんなもの武器にもなりやしねえ。次」 しかしこれ以上、中を弄っても反応はなかった。 否、まだ何か反応がある。 何やらごつごつとした、鉄のような感触がマタタビの肉球を伝わる。 "それ"を握り、マタタビはそのまま思い切り引っ張る。 「……あ? なんだこりゃ」 マタタビの手に握られていたそれは、太くて歪な石の棒のような、ごつごつとした何かであった。 炎が波打ったような形状をしており、柄の中央には穴が空いている。 「ぐっ……何だこれは……ッ  とてつもなく重い!」 そのままマタタビは重さに耐えきれずその石のカタマリを手放す。 するとそれは、物凄い勢いで落下し、激しい音を立てながら木製の床を突き破り下階へと落下していった。 このディパックの中は四次元式になっており、質量も重量も関係なく色々なものが収納できる代物である。 故に、ディパックから外に出すまでは常にディパックは一定の重量を維持し、出した瞬間支給品の重さが発現される仕組みとなっていると推測できる。 つまり、それがディパックの中に入っていた時はそのとてつもない重さはなりを潜めていたが、ディパック外に出したためその異常なまでの重量がそのまま解放された。という事であろう。 とにかく、床を突き破り猛烈に落下して行った石のカタマリは、1階の床にめり込んだ。 「大丈夫、マタタビ!?」 「なんて重さだ。床を突き破っていきやがった……」 「とにかく一階へ行ってみよう」 彼らが一階に向かっている内に、鉄のカタマリについての説明をしておこう。 マタタビに支給されたとてつもなく重い石のカタマリ。銘を『双刀・鎚(カナヅチ)』と云う。 刀鍛冶、四季崎記紀の手によって造られた十二本ある完成形変体刀のひとつ。 その刀は「重さ」を主眼として置かれており、まさに『とてつもない質量のカタマリ』である。それだけに破壊力は凄まじいが重さも凄まじく、それを扱えるだけの怪力の持ち主でないと字の通り扱えない代物であった。 そして鎚は鞘や鍔などの刀にあるべきものが何もなく、上下の区別ですら曖昧であり、どちらも柄と呼ばれるものと呼べるだろう。だからこそ、この刀は双刀と呼ばれているのだが。 「うわっ、地面に突き刺さっちゃってるよ」 「どうやら回収は無理そうだな」 そしてその双刀は床に突き刺さっている。 冬樹は勿論、マタタビもこの石刀を持ち上げる事さえままならない。 このまま二人は鎚を突き刺さっているままにしておく事しかできなかった。 ――支給品がこれだけならの話だが。 「仕方ない。これは諦めるぞ」 「誰かに頼んで持ってもらうっていうのは?」 「敵に武器をやってどうする」 「あ、そうか……」 「そういえば、ディパックにこの武器の説明書が入っていた。双刀・鎚というらしい」 彼らは無機質なパソコン字で記載されている説明書を確認する。 説明書と言っても、基本的な説明がおざなりに載っているだけなのではあるが。 「四季崎記紀……すごい人なんだね。  これ以外にも十一本の刀があるみたいだけど、これ以外も支給品になってるのかな?」 「恐らくな。ただこの刀は何か異様な雰囲気を感じるのが気になる」 「そういえば、僕の支給品の説明書も確認したんだけど、ナイフの方はただのサバイバルナイフみたい。  でね、手袋のほうなんだけど、凄いパワーが出せるスーパー手ぶくろっていうものみたいなんだ」 「なに?」 スーパー手ぶくろの説明書には確かに怪力が発揮できると書かれている。力だけでなく、筋力や筋持久力も上昇するらしい。 ただし、従来のパワーは出せないように調整してあるようだが。 「これを使えば鎚を持ち運べるかもしれないね。ちょっと僕やってみる」 「持ち上がらなかったら拙者が一度やってみる。  それでも駄目なら仕方ないが諦めるしかないか……」 「せーのっ、それっ!」 ヒョイッ。 擬音にするならそんな感じであろう。 それはいとも簡単にあっさりと持ち上がった。地面にめり込んでいたのが嘘かのように。 「やった!」 「ほぇー、すげーな」 「ただ手袋を着けてても結構重いんだよね……  僕腕力無いし、手袋も本来の能力じゃないみたいだから仕方ないのかな……えへへ」 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「それじゃあ僕はみんなをまた捜すよ。マタタビはこれからどうするの?」 「拙者は殺し合いなどには興味がないからな。自由にやらせてもらうさ」 「それなら僕と一緒に行くってのはどうかな?  単独でより複数人で行動したほうが効率がいいと思うんだけど……」 「断る」 冬樹の提案。それに対するマタタビの返答はあまりにもそっけないものだった。 「拙者は他人に縛られるほどぬるま湯に浸かってはいねえ。  それに貴様は結局のところただの他人だ。そう簡単に信用はできねえよ。これは殺し合いだぞ?  軽々しく信用してアッサリくたばったとなりゃあオスネコの名が廃るってもんだ。  もし百万歩譲って同行したとしよう。もしその時拙者がキッドに出くわした時、貴様がいると足手まといにしかならなさそうだからな……」 「じゃあ交換条件をつけるよ。僕の武器と交換でどう?  スーパー手ぶくろとサバイバルナイフ。どの道これがないと鎚が使えないでしょ?」 「クク……物で釣ろうなど甘い。拙者はそんな物には……」 刹那――――マタタビはある重大な事に気がついた。 (食糧が無い……!) 実はこのネコ、冬樹と出会う前、空腹に負け既に支給された食糧を食い尽くしていたのである。 食い物がなければ倒れてしまう。 以前もドクター剛達に発見されなければ餓死していただろう。 食糧なら確保すればいい。がしかし、生物や果実があるかどうかも分からない。ここははっきり言ってしまえば未知の境地なのだから。 「……いいだろう。この殺し合いの間だけは同行してやるか」 「マタタビ……」 だから、このトラ猫、マタタビが取った手段。それは―― 「ただし条件が三つある。まず足手まといにはなるな。次にその手袋は拙者に渡せ。そして……」 「そして……?」 静寂が一瞬、一瞬だけ二人。もとい一人と一匹を包む。 「貴様の食糧を半分くれっ」 「うん、いいよ!」 こうして二人は同行することとなった。 一匹は成り行きで。一人は大切な人を探すために―― 「おっと、そういや忘れてた」 と、学校を出発しようとした瞬間、 何か思いあたったようにマタタビが、立ち止まる。 「えっ、何を?」 「床の修理だよ。あの鎚とかいうヘンな刀のせいで壊れちまってんだろうが。  工具かなんか持ってねえか?」 「工具なら……技術室かな?」 「おっし、じゃあ早速行くぞ」 「えっ、出発しないの?」 「んなもん後回しだ。穴ぼこ放っとくほうがタチ悪りぃだろうが。  床三枚ぐらいすぐ終わる。終わったらすぐにここを出るぞ」 「う、うん」 ……彼らの出発はまだ先になりそうだ。 【E-8/中学校/一日目-深夜】 【日向冬樹@ケロロ軍曹】  [状態]:吉祥学園の制服(ブレザー)  [状態]:健康  [装備]:  [道具]:基本支給品一式、スーパー手ぶくろ@ドラえもん、サバイバルナイフ  [思考・行動]   基本方針:まずはみんなと合流することを優先   0:マタタビに食糧とスーパー手ぶくろを渡さなくちゃ   1:姉ちゃんやケロロ小隊のみんなを捜す   2:工具を探しに技術室まで行く   3:マタタビの事をもっと知りたい   4:できればキッド(クロ)やドクター剛にも会いたい  [備考]  ※参戦時期は不明です。  ※マタタビと情報を交換しました。  ※冬樹はクロの名前をキッドとして認識しています。 【マタタビ@サイボーグクロちゃん】  [衣装]:アイパッチ、マント  [状態]:健康  [装備]:  [道具]:基本支給品一式(飲料含む食糧全消費)、双刀・鎚@刀語、石仮面@ジョジョの奇妙な冒険  [思考・行動]   基本方針:あわよくば、この機にキッド(クロ)と決着をつける   1:まずは床を直すか   2:とりあえず冬樹と同行  [備考]  ※参戦時期は少なくとも54話以降です。  ※日向冬樹と情報を交換しました。 【スーパー手ぶくろ@ドラえもん】 日向冬樹に支給。 ゴム手袋を象った道具。これをはめることで怪力を発揮できるようになる。 腕だけじゃなく、全身の筋力や持久力なども上がる。 ロワでは制限調整により怪力が弱体化している。 【サバイバルナイフ@現実】 日向冬樹に支給。 折りたたみ機構を持たず、保管時に刃を鞘に収めて保護する構造であるシースナイフの一種。 刃が暑く頑丈で、大型であるのが特徴。 サバイバルナイフを目的として造られているため、鉈として、武器として、はたまた用具入れなどとして、何でもござれである。 ただし構造上の問題で、他のナイフより壊れやすいのが欠点。 【双刀・鎚@刀語】 マタタビに支給。 炎が波打ったような刀身にに二又に分かれて中央に穴が開いた柄、柄頭に平べったいモーニングスターが取り付けられた形状の刃渡り二尺三寸ほど、鞘も鍔も刃文もなく、上下の区別もあいまいな石刀。 「重さ」に主眼が置かれており、軽く投げ重力に任せて落としただけで硬い地面にめり込むほど重い。 否定姫曰く「すさまじい質量のかたまりであり、持ち上げることさえ満足に敵わない刀」とのこと。 【石仮面@ジョジョの奇妙な冒険】 マタタビに支給。 アステカ文明で使用されたとされる石製の仮面。 長い歳月を経てジョースター夫妻により骨董屋で掘り出される。 縄状の装飾や犬歯の伸びた口元など見るからに異様な雰囲気を漂わせている。 実は、骨針が頭蓋骨ごと脳を貫きエネルギーを注入することで、脳の未使用領域を活性化させ、吸血鬼化させてしまう恐るべき仮面。 使用方法は、石仮面を装着したあと石仮面に血液を付着させるだけである。 *時系列順で読む Back:[[]] Next:[[]] *投下順で読む Back:[[「鼻毛使い」と書いて「プリキュア」と読ませたい…]] Next:[[未完了形変体刀・七つ花]] |GAME START|日向冬樹|:| |GAME START|マタタビ|:|

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