このページでは、語彙や文法など言語的な面ではないところについて考えていく予定です。
『目次』
人工言語を作る際、その言語で使用する文字はどうやって決めているのでしょうか。
これにはいくつか選択肢があります。
で、このページでは3番めの文字の作り方について考えてみよう、というのがあらましです。
筆記体系をなす文字の集まりを作るためには、その文字がどのように発展してきたかを疑似的にたどらせることで、その文化的言語的に適したカタチにまとめることができると私は考えています。
単なる「この音はこの記号、この意味はこの記号」とあてがうことで作ることもできますが、どうせやるなら進化に人間のもつ揺れを含むリアルなものを作ってみたい、そう思いました。
そのほうが自然で、かつ合理的なので長く使い続けることができる、そう感じています。
まず起こったのは、何らかの意味を模様などに残す方法です。
この段階ではまだ単なる記号であり、文字ではありません。
模様はそれを記した人によって受け取り方はまちまちで、あらかじめ意味を取り決めておかなければならないため、文字とは言えないのです。
逆に言えば、概念や事物を模様や記号に表すことを積み重ね、使用者間で意味や用法を共有することで、記号がコミュニケーションや記録の媒体をになう基盤が作られます。
絵文字を記すには、書き込む先の材質や書くための道具によって特徴が現れます。
地球上では、石や葉、粘土板が主な画材となり、また石や植物から作った顔料や染料を、筆や鉤で筆跡を残しました。
画材と筆記具
筆 | 鉤 | 棒 | |
石 | 壁画 | (オーガム文字) | |
葉 | (ビルマ文字) | ||
骨 | 甲骨文字 | ||
粘土板 | 楔形文字 |
絵文字の読みや意味が固まってくると、読み(音)を使うこと、意味を表すことに使うこと、というふうに文字の使い方が偏っていきます。
意味と文字が対応する場合、事細かな意味概念を表すには細かく文字を決める必要があり、言語の規模が大きくなるにつれ文字の数が増えていくことになります。
一方、音と文字が対応する場合、意味は単語という固まりで示され、単語は音の組み合わせで表現されます。
この場合、文字の種類は単語を構成する音の組み合わせが表現できれば足りるので、言語規模が大きくなっても文字の数は少なくとどまります。
日本語は、音を示すカナと意味を示す漢字を組み合わせることで文を構成する言語です。
人間が暮らす地域はある程度まとまっています。
まとまって暮らすことで、発音や意味、文法や記法といった言語としての特徴が固定化していきます。
海や山、崖など自然の地形によって隔てられることで言語は分岐していきます。
また航海技術や航空技術の発明によってその隔てられていたコミュニティが接触すると、お互いの文化や言葉が混ざります。もしくは発展度合いに差があれば提供したり取り入れたりという変化が生じます。
このような言葉の交流が起きるとき、文字もまた、変化を起こします。
また一つのコミュニティの中でも、使い勝手や癖がもとになり内部での変化が起こります。
言葉の交流の際、言語で使われる音の表記に過不足があれば取捨選択が行われます。
文字を取りいれたいが自分の言語にある音を表せなければ表現するための文字を作り足したり、
使わない、すでにある音があれば文字の取入れを見送ったり、統合したりします。
傾いたり、裏返ったり、記号を足したり、装飾的な書き方を編み出し取り入れたり、
文化はいろいろな影響を与えます。
すると言語によって異なる文字セットが生まれることになります。
このようにして世代の移り変わりをシミュレーションし検討することで、より自然で、言語の特徴や揺らぎなどを再現することができるのではないでしょうか。
いずれこれに基づいて、文字体系を考えてみたいと思います。