京太郎「本当にやるんですか……?」

憩「どーせなら、面白い方がええかなーぁって」

京太郎「はぁ……」

塞「まあ、変化は必要だからね」

和「たまにはいいのではないでしょうか」

京太郎「そうか……? うーん」


 T大麻雀部。

 二年生の春――もうじき、というか一週間後には三年生に突入する春である。

 弘世菫と辻垣内智葉は麻雀プロに――なんでもM.A.R.S.ランキングという数年前に新設されたランキングに登録されたプロに――。

 江崎仁美は「なんもかんも政治が悪い」と、最後まで就活を続けていた。

 小瀬川白望は――


白望「細かいな、京は」

京太郎「なんでシロさんがここに……というか、仕事は……」

白望「デイトレやってるから」


 ――デイトレーダーとして、暢気に過ごしている。

 普通はもう少し忙しいのではないか、と思うが……曰く「食べれる分だけでいい」「迷ってる内になんか高くなってる」そうだ。

 世のサラリーマンが血涙するぞ。

 小瀬川白望は、結局卒業してもしなくてもあまり変わらないようだ。ちなみにまだ京太郎は飯を作りに行ってたりする。


 新子憧は、というと――


京太郎「憧、起きろ」

憧「……あれ? 耳掻きは? 膝枕は? テラーは?」

京太郎「……寝惚けてるのか? あとテラーはサゴーゾで砕いたぞ」

憧「んー……んー」


 こちらも暢気だ。寝てた。

 色々あって、最近では昔より角が取れた気がする。

 下世話な話だが、男を知ったのかもしれない。酔うと逆セクハラかましてくるし。


胡桃「でも……うーん」

京太郎「ですよね、鹿倉先輩」

胡桃「胡桃でいいって」

京太郎「あ、はい」


 これが四コマ漫画なら、「↓この辺に胡桃」とかまされること請け合いの、鹿倉胡桃が眉を顰めた。

 どうでもいいが、その日本人形のような風貌が、夏に出来て別れた恋人を思い出させて京太郎をドギマギさせるのだ。

 色々追い詰められて気力を失っていた時期でもあり、その分彼女の方が積極的であった為――――猫耳とか制服とか色々――――、

 まぁ、ちょっとアレである。うん。


 ちなみに萩原に報告したら、「恋人……二人とも、その、控え目ですね」と言われた。

 暗に衣に近付かないで欲しいという意味も込められていたかもしれないので、キチンと胸の偉大さについて熱弁した。

 あくまでも自分はおもちをおもちな女性が好きであり、決してロリコンなどではない。

 ただ、巨乳好きではあるが、スタイルに関わらず恋人になったのだ――と。

 あと、やっぱり、巨乳を触りたい……と。

 あと、実は巨乳揉んじゃったんですよね、てへぺろ……と。

 誤解は宜しくない。

 天江衣、龍門渕に顔を出せないこともさることながら――――萩原との関係がこれで絶たれるとか、そんなの悲しすぎる。

 ちなみに。

 一連の会話の中、国広一には、養豚場のブタさんを見るような目で見られたと言っておこう。


憩「じゃあ、始めるよーぅ!」

京太郎「あ、先輩。カレーうどんです」

憩「ありがとなーぁ」

憩「……って、もう! 駄目やん、京くん。いいとこなのに水注しちゃあ」

京太郎「あ、すみません」


 人数分温めてたカップ麺を手渡す。

 江崎仁美の置き土産である数々の保存食品を、これを機に処分しようという話である。

 にしても、あのナース服でカレーうどんとか染みになるよなと思う。

 実際当人も渋っていたが、残りが関東風の味付けなのでしょうがなかったのだ。

 ちなみに焼きそばもある。

 が、青海苔ふりかけが前歯に付くとあれなので却下対象。

 あと、焼きそばは閉鎖空間である部室では宜しくないのでまた却下。カレーもどっこいだが。

 ちなみに青海苔はあるがしょうがない。しょうがなかった。


憧「はい、京太郎」

京太郎「ああ、ありがとうな。……あと」

憧「言わなくても大丈夫。ちゃーんと、氷とお水は入れてあるから」

京太郎「サンキュー」


 猫舌なのでしょうがない。

 カップ麺は構造上熱湯を注がねばならないが、熱湯を注いだら、熱くて食べられない。

 食べられても、大体延びきっている。

 つまり、カップ麺は構造からして美味しくは食べられないようになってるのだ。とんだ欠陥品だ。

 だから、こうして茹で上がったあとに氷水を入れて中和するという妥協策をとっていた。


憩「じゃあ、改めて始めるよーぅ!」

憩「どっきどき、エイプリルフールぼっくすーぅ」


 ドン、と雀卓の上にコンビニで大の大人が一枚ウン百円も払って半券買った後に手を突っ込むアレが置かれる。

 ……というかどこからこれ、用意したんだろう。謎だ。

 などという、困惑ぎみの京太郎を尻目に荒川憩は着々と進行させていく。結構楽しみにしてたらしい。


憩「あんなーぁ、このぼっくすの中にはお題が入っとるんよー」

京太郎「お題?」

憩「どうせ嘘吐くんなら、口だけじゃなくて態度もなーって」

京太郎「つまり、演技を?」

憩「うん、そうなんよーぅ」


 楽しみやねーと、無邪気な笑みを浮かべる荒川憩。

 かわいい。

 にこにこ笑顔が非常に可愛いが、実際その笑顔のまま麻雀ではえげつない強さを発揮するので、またタチが悪い。

 部内最強とは、紛れもなく彼女のことである。


憩「皆で中のお題作ったからなーぁ? きっと、楽しくなるなーって」

京太郎「……そんなにあっても、使いきれないんじゃ」

憩「えー、午前中いっぱい使おうかって……」

京太郎「マジっすか」


 麻雀しようぜ。ここ、麻雀部なんだから。


憧「ま、まぁ……たまにはいいじゃない」

京太郎「そうか?」

憧「ほら、あんまり根を詰めちゃってもさ。ね?」

京太郎「……ま、そうだな」


 言われてみたら、その通りか。

 実際、根を詰めた結果でストレス性の眼精疲労による視力低下――なんてのが起きている。

 一度は回復したが、医者曰く「次に起きたら失明するかもしれない」ものなので、あまりミリミリやり過ぎるのも考えものだ。

 ……ただ、やけに憧がノリ気な気がする。

 あと、皆の協力という割に、京太郎の元にそれは来なかったのだが……まぁいいか。


憧(こ、告白するとか……彼氏彼女とか新婚とか入れちゃったけどいいわよね?)

憧(……こんな機会じゃないと、できないし)

憧(ちょっとの嘘とか演技でも、せめて……その……)

憧(し、新婚とか引いたらどこまでやるんだろ――――ヤ、ヤる!?)

憧(『……憧、今日ダメか?』)

憧(『ちょ、お鍋溢れちゃう――きょ、きょうたろ……っ』)

憧(――)

憧(――)

憧(――)

憧(~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?)

憧(ふきゅっ!?)


憩「じゃー始めよっかぁ」

憩「隣にトランプ用意したから、とってなー」

京太郎「はい」


 何故トランプなのか判らないが、とりあえず引こう。

 それにしても、ゼネラルシャドウのあの強者オーラってなんなんだろうな。

 格好は王子様白タイツに透明ヘルメットて出さそうな代物なのに、半端なく格好いいし。

 あれか。ハカイダーと同じ部類か。


京太郎「……っと、切り札はいつも俺のところに来るらしいぜ?」

憧「……何言ってんのよ。あ、ダイヤのジャック」

和「ふむ……スペードのエースです」

胡桃「クローバーの4。幸運の四つ葉のクローバー?」

塞「私は……ハートのキングか。キング・オブ・ハートっていいね」

白望「……ハートの2」

憩「うちはスペードの3……あ、スートは気にせんでなーぁ」


 ジョーカーカードを手の内で弄びながら、意味を考える。

 スートを気にするな、とは一体……。

 それにしても、ダイヤのジャックってなんか不吉な感じがするけどなんでなんだろう。

 具体的には、強化フォームなのに弱体化しているような……。


憩「で、お題を引いたときにまたカードをとって貰いますーぅ」

憩「同じ番号の札をとったら、今のカードに対応する――――つまりハートの3なら3だからうちに対して演技やね」

京太郎「えっと……」

憩「あんなぁ? 例えば京くんが『ライバルのフリする』ってカードをぼっくすから引いて」

憩「そのあと、3のカードを引いたら……京くんはうちに対して、ライバルの演技するんよーぅ」

京太郎「なるほど」

憩「まぁ、実際やってみよーかぁ」


 ものは試し、か。


 ……で。


京太郎「あー」

胡桃「……うん」

憩「あはは」

塞「……どうするの、これ」

和「……はぁ」

憩「楽しくなってきたねー」

憧「……」 プルプル


 さて、カードとお題を整理しよう。

 ちなみに――前者がカードを引いた人であり、後者がトランプの番号の人だ。



胡桃「これは……」


 お題――憧れのお姉さんと弟分(妹分)。

 対象――ジョーカー。



憩「なんか盛り上がるなー」


 お題――新婚さん。

 対象――ジョーカー。



塞「……いや、これ」


 お題――教師と生徒の禁断の恋愛関係。

 対象――ジョーカー。



白望「……ダル」


 お題――上司と部下の不倫関係。

 対象――ジョーカー。



和「なんだか、捻りがないですね」


 お題――弁護士と依頼人。

 対象――ジョーカー。


憧「……」 プルプル


 お題――片想いの姪(甥)と叔父(叔母)。

 対象――ジョーカー。



京太郎「いや……なにこれ」


 お題――できるなら会話すらしたくない。超険悪。

 対象――ジャック。


京太郎「……いや、なんすかコレ」


 どんだけだよ。

 どんだけ皆ジョーカー引くんだよ。

 ジョーカーマキシマムドライブだよ。

 ジョーカーは自分と適合率100%じゃなかったのかよ。引き合うんじゃなかったのかよ。

 とんだ尻軽ジョーカーだよ。

 いや、マジ。マジな話でとんでもないジョーカーだよ。ジョークにしても笑えねーよ。


胡桃「よ、よろしくね! 弟くん!」

京太郎「オレェ?」

憩「だーりん♪」

京太郎「オレェ?」

塞「ふふ……先生に、イケナイこと教えて欲しいのかな?」

京太郎「オレェ?」

白望「……じゃあ、あとで私のオフィスで」

京太郎「オレェ?」

和「では法廷で」

京太郎「オレェ?」

憧「あ、あの……おじさん?」 プルプル

京太郎「話しかけんな、憧」

憧「……っ」 プルプル


 えー、事件を整理しよう。


憩「京くん、お仕事頑張ってなーぁ」

京太郎「はい……えっと、荒川先輩も家のことを――」

憩「もーおぅ! 結婚したんやから、先輩呼びは駄目やんー」

憩「それに今は……ここの先からここの先まで京くんのものなんやから、うちはもう荒川やないんよーぅ?」

京太郎「憩さん……」


 まず、須賀京太郎は荒川憩と新婚である。

 そこはいい。それはいいとしよう。可愛い奥さんと新婚である。胸はないけど。

 ……で。


胡桃「どうしたの、京太郎」

京太郎「いや……胡桃姉ちゃんと一緒だと俺……」

胡桃「胡桃……姉ちゃん……」 ゾクゾクッ


 憧れのお姉さんがいて。


塞「あれ、授業中なのに余所見? 駄目だな、須・賀・く・ん?」

京太郎「あ、さ、塞さん……」

塞「駄目でしょ、それは……二人っきりのときだけ」


 先生と禁断の恋愛してて。


白望「……京。利益、足りないんだけど」

京太郎「あ、その……ノルマは……あの」

白望「……はぁ」

白望「身体で払って貰うから」


 上司と不倫してて。


 ……うん。

 そりゃ、弁護士に相談するわ。無理もない。

 絶対どっかから訴えられてるだろコイツ――――


和「……なるほど、恐喝の相談ですか」

和「しかし、この恐喝を訴えたら……話が明るみに出ますよ?」

和「明らかに貴方に不当事由がある以上――――不貞がありますからね。明るみに出たら離婚の慰謝料は免れないでしょう」

京太郎「そ、そこをなんとか……穏便に、穏便に」

和「……どうでしょう。女性の敵ですから、あまりやる気が起きませんね」

京太郎「せ、先生……! お願いします……!」

和「……冗談です。仕事ですので」


 ――と思ったけど、なんか余計に酷いことになってた。

 結構原村和もノリノリらしい。

 放っとくと、更に余罪が追加され兼ねない。マジゲスがジョークのような、ジョーカーゲスになる。


憧「……あ、あの、おじさん? 紅茶淹れたから、飲もうよ」 プルプル

京太郎「悪いけど忙しいんだ」

憧「お弁当、作ったんだけど……その、おじさんが好きなおかず入れて」 プルプル

京太郎「余計なこと、するなよ。媚売られても邪魔だからな?」

憧「……ぅぅ」 ジワッ


 うーん、酷い。

 今のところの要素を入れると――――。

 新婚なんだけど、憧れのお姉さんがいて、何かの講座か夜学の先生と恋愛してて、で、会社の上司と不倫。

 更には家に姪を引き取っていて、彼女から片想いされるも――相手にしないどころか疎んでいる、と。

 酷いな、これ。


 ……で、こんなときに限って電話。

 着信の相手は――


陽介『なあ、須賀。ちょっと合コンの話があるんだけどな』

京太郎「ご、合コン!?」


 ありがたいが、不味い。

 今このときは、不味い。

 なんてったって、不味い。

 だって……


憩「だーりん、どういうことなんー?」

京太郎「あ、ちょっ……!?」

陽介『ダーリン!? ダーリンって何!? なんだよ、オイ』

塞「もう、イケナイ子だね……ちょっと先生と、進路相談しちゃおっか」

京太郎「いや、あの……」

陽介『須賀が女侍らせてる!? というかなんか女教師に手を出してる!?』

シン『……はぁ?』

孝之『おいおい、須賀に限ってまさかそんなー。……替わってくれ』


京太郎「いや、お、おい……!」

胡桃「こら、弟くん。……ちゃんとお姉ちゃんの方を見る!」

京太郎「先輩!?」

孝之『アイツ、先輩とお姉ちゃんプレイもしてるぞ!』

陽介『なんて時代だ!?』

孝之『しかもこれ確か、あのちっさい先輩の声だよな!?』

陽介『須賀もロリコンだったのか!?』

シン『須賀“も”……ああ』

孝之『オイ、シン君なんでこっち見てたんですか』

シン『……言わなくても判るだろ』

孝之『オレは違うだろ! 須賀と違って!』


 おい。


京太郎「いや、あの、これは――」

和「須賀くん、まだ裁判の打ち合わせが済んでませんよ?」

孝之『しかもなんか裁判沙汰!?』

陽介『アイツなにやってんだよ、なあ!?』

シン『何やってんのはあんたらの方だろ。……替われよ。オレが京太郎と喋るから』


京太郎「いや、これは、あのなぁ……!」

シン『大丈夫だって。今日はエイプリルフールだから、そうなんだよな?』

京太郎「シン……!」

白望「京。……まだ身体で払い終わってないんだけど」

京太郎「シロさん!? し、シン、あのさ、これは――」

シン『大丈夫だって、陽介たちにはちゃんと言っておくから――』

白望「でも、押し倒して胸を揉んだ」

京太郎「――」

シン『……へ?』

白望「しかも首筋に歯を立てられて、シャツのボタンを外されて、うなじ舐めながら胸揉まれて…………排卵するところだった」

シン『……須賀?』

京太郎「あ、あわわ、ああ、あわわわわ」

シン『……』

京太郎「……」

白望「……」

シン『オレ、前から言いたかったことがあるんだけどさ』

京太郎「……シン?」

シン『あんたがもげろ。……じゃあ』

京太郎「シンさんンンンンンン────!?」


陽介『な、なあ……どうだったんだ?』

シン『巨乳の先輩押し倒して排卵させたってさ』

陽介『排卵ンンンンンン!?』

陽介『なんでなんだ!? アイツも“残念イケメン(こっち)”側だよな!?』

孝之『これは制裁だろ……許すまじ、須賀』

陽介『古市もロリとフラグ立てたり、なんだかんだ女の子に弄られてるじゃねーか! しかも「知将」とか不良に慕われてるし!』

陽介『なんで俺だけ女っ気ねーんだよ!』

シン『……』

孝之『……』

陽介『……なんかコメントしろよ!』

孝之『ハハハ、あの、なんか……前に長野の山で迷った時に女の子と仲良くなってたよな?』

シン『それさ、オレが絡まれてるときだったっけ?』

孝之『須賀が鬼のコスプレした女の子に気に入られてたとき』

シン『あー、そーなのか』

陽介『そうだけど、あれ結局幽霊だったじゃねーか! なんでだよ!』


 わーお。

 色々取り返しつかない感じ。


陽介『とにかく、須賀。事情を話して貰うぞ!』

憧「お、おじさん……大丈夫なの?」

京太郎「おい、憧――」

陽介『お、おじさんって……ま、まさかお前新子さんと援交プレイ――』

京太郎「もうお前ら黙ってて」


 ……どうしよう。


 あー。

 懐かしいな、山で遭難大事件。

 なんかやたらめったら彼岸花咲いてる、塚みたいな場所に行ったんだよな。不気味だった。

 携帯電話通じないし、陽介が同じように道に迷ったらしい女の子連れてくるし、なんかいい雰囲気なってるし……。

 でも、出口って案内されて其処を出て、電波通じるとこに戻ったら居なくなってるし……。

 やっぱり、あれは心霊体験なんだろうか? コワイ!

 結局、憧に除霊やら何やらお願いしたんだった。


 ……さて。

 色々、思考を飛ばしてる間にどうにかなったかと言うと――――


憩「なーぁ、うちと夜のお医者さんごっこしようかー?」

憧「……っ」 ギギギ

胡桃「ほ、ほら! 胡桃お姉ちゃんに甘える! ひ、膝枕! 膝枕!」

憧「……ッ」 ギリギリギリ

塞「先生と、保健体育の個人授業がしたいんだよね……京太郎くん?」

憧「……ぅぐ」 グギギ

和「あ、姪と叔父は結婚できませんよ? 恋愛なんてそんなオカルトあり得ません」

憧「……っぐ、ひっ」 ジワァ

白望「腰振って仕事貰えるとか、恥ずかしくないの……ほら、京」

憧「……ぅぅぅう」


 ――どうにもなんねーな、これ。


憧「お、おじさん……」


 すげーな、まだ続けるのか。

 そろそろ交代かなと思ってるんだけど、ひょっとして皆乗り気なのかも知れない。

 なら、続けるか。


憧「結婚してるのに、こんなの駄目だってば……」

憧「だって、結婚してるのに……おじさん、もう憩さんのものなのに……浮気とか」

憧「だから、ちゃんと皆と別れ――」

京太郎「憧が口出す問題じゃねーだろ」

京太郎「俺が誰とどうしようが、俺の勝手じゃないのか?」

憧「そ、それは……」

京太郎「何様のつもりなんだよ。関係ない分際で人の恋愛に口出し――――――ああ、もう無理っス! 無理!」

憧「へ?」

京太郎「こんな酷いキャラ、俺にはできないっスよ」

憩「ええー」

京太郎「引き直しましょう、引き直し!」


 流石に気分が良くない。

 いくら演技にしても……憧が、傷付いた顔をするのを見たくないというのもある。

 もう、あれから半年以上経ったが――――やっぱり。


京太郎「憧も、それでいいよな?」

憧「……うん」

憧「ありがと、京太郎」

京太郎「いや、まあな」



 ……で。



憩「なら、先生……夜の診察始めるん……?」


 『ナースと、出来てる医者』――ジョーカー。


胡桃「だ、駄目っ! 駄目だから、お兄ちゃん!」


 『妹(弟)と、兄(姉)の禁断の恋愛関係』――ジョーカー。


塞「す、須賀先生……ここ、給湯室」


 『教え子と教師の禁断の恋愛関係』――ジョーカー。


和「えー、では、被告人は前に」


 『裁判官と被告人』――ジョーカー。


白望「京、ほら……今月の分、早く」


 『ヒモと貢ぐ側』――ジョーカー。


京太郎「……」


 『お節介でうっとおしい相手』――ジャック。


憧「ううう……」


 『長年の幼馴染み』――ジョーカー。


憧(いいカード引いたのに、なんでなのよっ!)


 オーケー、整理しよう。

 とりあえず、須賀京太郎は医者だ。教え子がいるということは――多分、インターンを連れてる。

 で、看護婦に手を出した。

 次に、教え子に手を出した。

 それから、実は妹とヤることやってた。

 で、女の子に貢いでる。

 更には、何かの裁判沙汰に発展してる。

 で、幼馴染みがうっとおしい相手――――と。

 ……こいつ、ゲスだ。まごうことなきゲスだ。ゲスの極みだ。


憧「ね、ねぇ……京太郎?」

憧「やっぱり、胡桃さんとのは良くないわよ。そんなの、絶対」

憧「あたしは、黙ってるけど……でも――」

京太郎「――憧には関係ないから、黙ってろよ。そのまま」

憧「……ぁ」

憧(これは演技これは演技これは演技これは演技これは演技これは演技これは演技これは演技)

憧(これは演技なんだから大丈夫、これは演技なんだから大丈夫、これは演技なんだから大丈夫、これは演技なんだから大丈夫)


白望「ほら、早く…………私に痴漢した分」

和「示談金の支払いですから、ちゃんとやりましょう」

白望「まぁ…………あれから痴漢以上のこと、してるけど。京はスキモノだから」

憧「――」


憩「今日は、どこに京くんのお注射してくれるんー?」

憧「――」

憩「京くん、触診大好きやもんなーぁ」


胡桃「京太郎お兄ちゃん、私の裸が好きって……」

憧「――」

胡桃「胡桃も喜んでるって……う、うるさいそこっ!」


塞「先生、産婦人科はまだだって……!」

塞「あ、安産型って……」

憧「――」


京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……え、なんでこれ性的な絡みばっかなんだよ)


 恋愛絡みというか、九割恋愛でしか構成されてない。

 子宮でものを考えるというか、死球受けてもの考えられなくなってるというか。

 下半身で恋愛というか、過半数が恋愛というか……。

 なんか、酷すぎるのしかない。


京太郎「荒川先輩」

憩「もーぅ、今は先生の夜の看護婦の憩やーん」

京太郎「……」

京太郎「……これ、他に誰が手伝ったんですか?」

憩「えーぇ?」

憩「えっとなぁ……んーと、憧ちゃんやねー」


 おい。

 自業自得じゃねーか。


憧「……」


 見付けたよ、世界の歪み。

 あれが発生源だったんだね。

 というか、なんだよこのシチュエーション。イメクラかよ。

 やっぱり憧、男を知ったのか……大した奴だ……。


 いや、でもまだこのにこにこ看護婦さんがブッ込んだ可能性がある。

 さっきからやけに乗り気だし、普段からナース服着てる以上、コスプレとかイメクラプレイ好きそう(偏見)。

 絶対ノリノリでやりそう(願望)。


京太郎「……」

京太郎「……先輩は、どんなの入れたんですか?」

憩「んー?」

憩「うちはなーぁ……。幼馴染みだったりーぃ、昔からの友達だったりーぃ、喧嘩中だったりーぃ、ヒーローだったりーぃ」

憩「色んなの書いたよーぅ」

京太郎「……」

京太郎「……恋愛絡みは?」

憩「あんま入れとらんよーぅ」

京太郎「……」

憧「……」


 おい。

 世界の歪み(イメクラ)、見付けたぞ。

 なんなの? なんでそんな動物みたいなことしてるの? 動物なの? 動物好きじゃなくて、動物みたいなこと好きなの?

 …………いやある意味、この上なく人間的だけどね、イメクラ。


 ……うん、なら遠慮は要らないということだ。

 というかこれ、こちらが苦しんでいるのの大半は憧の所為なんじゃないだろうか。

 というか、紛れもなく憧の所為だ。

 飲み会の王様ゲームでの無茶ぶりめいたパワー=ワーズを書いた、アコ=サンが悪い。

 やる側だって羞恥心が半端ないし、やられる側だって同じぐらい落ち着かない。


京太郎(……よし、次は俺も乗り気で行くかな)


 ――そして。


塞「……いやー、これって」

胡桃「うーん……何?」

和「……ブランクカードのようなものですか」

憩「んー、一応作っとったんやけど……皆、引くなんてなぁ」

白望「……ダル」


 臼沢塞、鹿倉胡桃、原村和、荒川憩、小瀬川白望――『普段通りの関係』。

 そして、新子憧――


憧「……ぁ」


 ――『初々しいカップル』。

 ――対象:『ジョーカー』。



憧(こここ、これでやっと、そ、その、きょ、京太郎と――)

憧(長かった……長かったわよね、随分と)

憧(……っていうか)

憧(憩が「ちょっと過激なの入れといてもええかもなーぁ」って言うからあんなの書いただけであって、別にあたしはえっちでも恋愛脳でもないんだからっ!)

憧(そりゃ……思い付かなくて、あの、その、ちょっと大人向けの少女漫画とかレディコミとか参考にしちゃったけど)

憧(第一、全体の十分の一もないのに! なんで皆引いてるのよっ! それがおかしいんだってば!)

憧(しかも、悉く皆引くカード引くカードがジョーカー対象だし――――ジョーカーにガン牌でもしてるんじゃないの?)

憧(うー)

憧(で、でもこれで――そ、そのー、あのー)

憧(きょきょきょ、きょ、京太郎とカップルなのよね? ……うん)

憧(え、演技っていうのは判ってるけどさ。……でも、演技にしても、京太郎が恋人な訳だし)

憧(こんな機会ぐらい、京太郎に甘えても……別に、いいよね?)

憧(……うん)

憧(っていうか、自分で言ってて悲しくなるんだけど。何よこれ)


 そして、運命のカードが引かれる。


京太郎「あー、恋人が――」


憧(こ、恋人っ!?)

憧(きょ、京太郎も恋人ってことは……あああ、あたしと完全に両思いのカップル!?)

憧(い、今までの過激具合だとすると……う、初々しいカップルなのに、その、興味津々とか……)

憧(京太郎が同級生だったり、先輩だったり、お兄ちゃん――はちょっとパス――、新婚さんだったり、一途でラブラブだったり)

憧(~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!?)

憧(ふきゅっ)


京太郎「恋人が――浮気してるのを目してしまったあと、か」


憧「――」

憧「――」

憧「――」


京太郎「トランプ引きましたけど……荒川先輩、これってどうするんですか?」

憩「んー?」

京太郎「これ、俺が浮気側なんですか? それとも、トランプで引いた相手が恋人で浮気してるんですか? それとも、引いた相手が浮気相手?」

憩「……どうしよっか?」

京太郎「決めといてくださいよ」

憧「――」


京太郎「えーっと……」

京太郎「正直俺、これ以上ゲスいの堪えられないんですけど」

憩「えぇー、愛ってそういうもんやないん?」

憩「愛があるからすれ違ったり、愛があるから殺しあったり、愛があるから死んだ娘のことをいつまでも思ったり……」

京太郎「それは世紀末限定っス」

憩「愛故に人は悲しまねばならん、って」

京太郎「それは世紀末限定っス」

憩「お前も蝋人形にしてやろうか、ってぇ」

京太郎「それは聖飢魔II限定っス」


 やだこの人ナチュラルに怖い。

 他意はない――というのは普段から明らかであるが、笑顔はポーカーフェイスという言葉が想起される。

 というか、デーモン閣下好きなんだ。かなり意外。


憩「あとなぁー、Iron Maidenとかも好きなんよーぅ」

京太郎「アッハイ」


 荒川憩が、何故ナース服を着ているか知っているか?

 怪我人と一緒に居ても不振がられない為だよ。

 ――――なんて言葉が思い付くぐらい意外な趣味だ。なんか、野球とかやったらこの人選手壊しそう。


憧「――」

憧「――」

憧「――」


京太郎「……で、いい加減に俺がクズってシチュエーション嫌なんですけど」

憩「んー?」

憩「なら、他の娘を浮気した恋人とか浮気相手にするんはええのー?」

京太郎「うぐっ」


 ずるい。

 それはずるい。

 男である以上、意地があるのだ。

 まさか我が身可愛さに女を差し出し、自分だけ平然と善人顔――――なんて選択肢は選べない。


京太郎「……でも、そういうルールのゲームですよね」

憩「もぅー、京くんのいけずー」

京太郎「いや……」

塞「鬼畜!」

胡桃「真面目すぎ!」

和「鈍感!」

白望「ダルい」

京太郎「なんで俺が袋叩きに!?」


憩「京くん、女の子に罵倒されるのが好きかなーって」

京太郎「いや、ないない。ないですから」

塞「ご、ごめん……ちょっと悪乗りしちゃった」

京太郎「あー……まぁ……」

胡桃「事実でしょ」

京太郎「え、そうですか?」

和「胸に手を当てて、考えてみたらどうでしょうか?」

京太郎「む、胸………………あ、ああ、そうだな」

和「?」

白望「胸触りたい……って?」

京太郎「……勘弁して下さい、いや、本当」


憧「――」

憧「――」

憧「――」


 ……さて。

 そろそろ午前中が終わるので、決着を付けなくてはならない。

 正直このままなんとなく流れに身を任せてたら、終わりそうである。

 流れに身を任せて同化するのだ。

 ……いや、流れに身を任せてたら頭がどうかするかもしれない。エイプリル“フール”だけに。

 どうでもいいけど、ザ・フールのデザインは格好いい。ザ・フールVSペットショップはベストバウトだ。

 他に決めるとしたら――


憩「京くん、続きやるよーぅ」


 ――はい、思考に没頭して然り気無く終わらせるという手法は失敗。

 流石は荒川憩。鉄壁だ。

 ……決して、どこか身体的な部位がどうこうという話ではなく。


憩「もう、京くん…………一本いっとく?」

京太郎「……何をですか?」


 腕とか、足とかじゃないよね。

 ……いや、小指とかかもしれない。――――ってこれは、辻垣内智葉だ。

 とにかく、二つあるから一つはいらないよね……みたいな言い方はやめて欲しい。


憩「んー、命の蝋燭?」

京太郎「一本しかねーよ!? ないですからね、それ」

憩「九本くらい、あったりしないん?」

京太郎「俺、猫じゃないです」

白望「……意外とタチ」

京太郎「さ、塞さん!」

塞「もう塞いでる!」

胡桃「ちょっと!? なに、耳にいきなり!?」


 ……ストッパー不在。

 そう考えると、弘世菫は実に偉大な先輩である。……自分の身を犠牲に、会話にオチをつけてたのだから。

 というか、こういうときにわりと冷静な奴の声がしないのだが……。


京太郎「……憧?」

憧「あ、あたし浮気なんてしないわよ! そんなの、絶対するわけないでしょ!」

京太郎「アッハイ」


 うーん。

 ここまで必死に言われると、なんだか悪い気がしてきた。

 だがそれは間接的に――――須賀京太郎なら浮気しても不思議ではない、と言いたいのか。

 どんな風に見られてるのか、気にせざるを得ない――というのが京太郎の素直な感想。


憧「うぅ……」

憧「だ、だって京太郎……その、あんたは何だかんだ優しいでしょ?」

憧「だからふと言った言葉が誰かの胸に残って、思い出になってたり――」


 ないない。


憧「あとはあんた、一応、世話焼きだから……」

憧「何だかんだ、世話焼きついでに仲良くなって相手をからかいながら一緒にいるんだけど……」

憧「普段怒らないのに、その娘を馬鹿にされたときだけ凄い怒って――――無意識なのに、その相手の事を凄く大事にしてたり」


 ないない。


憧「格好つけしいで、……で、ときどき何だかんだと決める場面があるから」

憧「ひょっとしたら、京太郎が麻雀とかで劇的に勝っちゃったりしたら、相手が京太郎のことを意識し始めたりするかもしれないし――」


 ないない。


 何とも、意外な高評価である。

 これに関しては素直に嬉しいと言わざるを得ないが、既に京太郎と憧の付き合いは五年に達する。そう考えると、納得だ。

 パッと思い付く限りでも、京太郎としても憧の美点を即座に上げる事が可能な以上、やはり年数相応の付き合いというのはある。

 ……というかこれ、何だか初々しい恋人のようだ。

 ナチュラルに演じられるとは――或いは意識してかもしれないが――流石は憧、大した奴だ。

 酔うと痴女というのは伊達じゃない。素質があるのかもしれない。

 ……何の素質かはともかくとして。


京太郎「まぁ、憧もあり得るんじゃないか?」

憧「……あたしが?」

憧「……っ、な、なんでよ!」


 酔うと痴女だから。


 ……というのはまぁ、京太郎が抱くある種本音に近いにせよ、ともかくとして。


京太郎「だってお前、普通にお洒落だもんなー。気を遣ってるって判るし、普通に男なら放っとかないだろ」

憧「……へぅ?」

京太郎「で……気が利くし、付き合いがいいし、明るいし、話してて飽きないし」

憧「……ふ、きゅ」

京太郎「さっぱりしてそうだし……いや、ちゃっかりと要領いいって言うのか? 仕事とか、色んなことをテキパキやりそうで頼りになる」

憧「……ふゅぅぅぅ」

京太郎「でもさ、結構情に篤くて優しいとこあるよな。そういうのって大事だよなー、うんうん」

憧「……ぅぅぅう」

京太郎「で、何だかんだ最近料理も美味いし……これは女子力高いだろ。弁当作ったり」

憧「……ふっ、きゅっ」

京太郎「だから――(流石に寝るとかはセクハラで言えないから)――まぁ、憧と付き合いたいと思う奴は多いって感じつーのかな?」

憧「……ぅ、ぅぅぅ、ぅう、う」

京太郎「とにかく、憧は絶対にモテる。男が放っておく訳がない」

憧「……あ、あぅ、ぁぅ、ぁぅぅ」

京太郎「でも――――憧ってさ、ちゃんとそこら辺は考えてるから、一人に決めて一途そうだよな」

憧「……へ」

京太郎「だから、憧と付き合える奴は幸せで――まぁ、皆そうなりたいと思うって感じか」

憧「……きょ」

京太郎「ん?」

憧「きょ、きょ、京太郎は……?」

京太郎「勿論、俺もだけど」

憧「――」



憧(え、え、え、え…………ええええええええええええええええええええ!?)

憧(きょ、京太郎ってあたしのことそんな風に思ってたんだ!?)

憧(う、う、う、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ)

憧(って、っていうかこれもしかして告白!? 告白なの!? 和いるのに!? 憩いるのに!? 塞さんいるのに!? 胡桃先輩いるのに!?)

憧(お、俺の告白を聴けって!? そ、そこまで情熱的にあたしのこと!?)

憧(こ、これが噂のバーニングラブ!? バーニングラブって奴!? バーニングにラブいの!?)

憧(あ、あたしも京太郎にバーニングラブよ! 認める! 認めるわよ、ああそう! 京太郎にバーニングラブよ!)

憧(正直、京太郎はシズの元カレだから――――駄目だって、思ってたけど)

憧(京太郎、絶対シズのこと忘れてないから――――あたしが、ズルしちゃうの駄目だと思ってたけど)

憧(でも……でも、京太郎がここまで言ってくれたら……)

憧(ここまで思っててくれるんなら、あたしは――――京太郎と――――――!)

憧(きょ、京太郎……! こんな場所で告白するとか、もっとムード作ってよ! 作りなさいよ!)

憧(で、でもそんなとこ……器用貧乏なあんたらしいし、そんなとこも……いいかなって)

憧(……うん)

憧(あたし――――京太郎のことが、好き)

憧(京太郎……大好きよ、あんたのこと)

憧(だから――――――)


 ――なお。


憧「あ、あのね……!」

憧「京太郎……、あたしも……! あたしは……!」

憧「あたしは、あんたのことが――――――」


京太郎「なのに……!」

憧「へ」

京太郎「どうしてだよ……どうしてそんな、動物みたいなことするんだよ」

京太郎「なんで、浮気なんか……!」

京太郎「何でッ、だよ!」

憧「――」



 ――憧がフリーズしている間に、カードは引かれていたりする。










 ――某日、某所。



憩「あれ? うーん、あれは凄かったなぁー」

憩「私も柔道とサンボやっとるんやけど、あれはなーぁ」

憩「うん」

憩「信じられないかも知れんけど……事実なんよ?」

憩「こう……なんていうか、うん」

憩「うちも投げるから……まぁ、判るしやったこともあるんやけどなぁ……」

憩「よりにもよって、あんな……うーん」

憩「やっぱり、人体って凄いんやなぁ」

憩「んー…………だってな、人間の筋繊維って一平方センチあたり、十キロを支えられるんよ。本当は」

憩「だから、平均的な成人男性なら……片手で二百五十キロは持てるんよーぅ」

憩「これが所謂人間の全力……まぁ、骨折れちゃうんやけど」

憩「そう考えると、女の子って言っても……あれもおかしくないんかな?」

憩「それだけでは、片付けられんくらいやったけどなーぁ……こう、『ぐにゃー』って凄みというかオーラ感じるくらいやったし」

憩「え?」

憩「ん、何が――――って」

憩「んー」

憩「飛ぶんやね、人って…………あんな勢いで。しかも、大の男が、殴られただけで」









 この日京太郎は、実におよそ一年ぶりに憧に殴られた。

 なんやかんや古式ムエタイを修めた京太郎をしても、初めて完全に死を覚悟した――らしい。

 その顔は、まさに“鬼(オーガ)”だったとか――――。


                                 ――了


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【新子憧の好感度が上昇しました!】

【臼沢塞の好感度が上昇しました!】

【鹿倉胡桃の好感度が上昇しました!】

【荒川憩の好感度が上昇しました!】

【小瀬川白望の好感度が上昇しました!】

【原村和の好感度が上昇しました!】

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最終更新:2014年05月16日 02:16