【お前チョコいくつ貰ったって得意げに聞いてくる奴に限って実は義理チョコしか貰えてないんだけど、お前チョコいくつ貰った?】


――午前、四時。

 麻雀プロ。須賀京太郎の朝は早い。


京太郎「……よし」

京太郎「んじゃあ、ストレッチ……と」


 寝起きの体を起こすための、動的ストレッチ。

 筋温を上昇させるもの、神経系を刺激させるもの。それから、幾度かダッシュを行うことで心拍数を毎分180回以上にまで引き上げる。

 筋温の上昇の持続が約三十~四十五分。神経刺激が約二十分~二十五分。心拍数が約五~十五分。

 それぞれの持続時間を鑑みて、段階的に体のスイッチを入れていく。

 目覚めのタイミングでの運動は――いうまでもなく、パフォーマンスがもっとも低下しているが。

 そんな状況で行うからこそ、トレーニングになるのだと京太郎は考えていた。


 体の支度が完了した後、いつものように十キロコースを走る。

 ただし、十キロをフルに全力で走るわけではない。最初の二キロはウォームアップを兼ねて。次の一キロで心拍数を再度引き戻し、残る七キロをきちんと走る。

 そうして、戻ってきて――さらにタンブリング、ウェイトトレーニング、ストレッチにクールダウンを重ねて。

 須賀京太郎、仕事の時間である。


智紀「おはよう」

京太郎「おはようございます、智紀さん」

智紀「……あと、これ。バレンタインだから」

京太郎「マジっすか?」

京太郎「さっそく――」


京太郎「――」


京太郎「……」

京太郎「……」

京太郎「……」

京太郎「……これ、なんですか?」

智紀「特性萩原さんチョコ。16分の1スケール」

京太郎「……」

智紀「ちなみに萩原さんには、京太郎君チョコを……」

京太郎「……」


智紀「ちゃんと、型を作った自信作だから」

京太郎「……そっすか」

京太郎「……」

智紀「……」

京太郎「……」

智紀「……」


智紀「まあ、冗談としてこっちにちゃんと――」

京太郎「――ハギヨシさん」

京太郎「その、俺……今から、あの……」

京太郎「ハギヨシさんのこと、食べちゃおうと……思います」

京太郎「なんていうか……緊張するな……」

智紀「――」

京太郎「――なーんて、冗談ですけどね。智紀さん?」

智紀「――」

京太郎「智紀さん?」

智紀「――」 ボダボダボダボダ


京太郎「……チョコ食ってないのに、鼻血ださないでくださいよ」

智紀「京太郎君の言動に問題があると思う」

京太郎「たまには仕返しがしたくなっただけなんで、深い意味はないですから」

京太郎「それにしても……大丈夫ですか、鼻血?」

智紀「うん」

智紀(……仕返しになってないんだよなぁ)

智紀(……)

智紀(脳内HDDに百万回保存した)


智紀「京太郎君」

京太郎「はい?」

智紀「今ので、ホワイトデーはいらないから」

京太郎「アッハイ」


智紀「――で、今日のスケジュールはこんな感じ」

京太郎「了解っす」

京太郎「はぁ……バレンタインって気が重いんですよね」

智紀「どうして?」

京太郎「俺……今まで、本命チョコとか貰ったことなくて」


 元カノ二人とも、バレンタイン前に分かれているのだ。

 高鴨穏乃は一応、出会ってから二月を跨いでいたけど――そのときは彼氏彼女ではなかったのでノーカウント。

 出会ってから――告白して、別れて、高校一年の冬から二年の夏頃とはなんとも短い。

 鷺森灼とは、大学二年の夏の間。

 思えば、恋人との季節ごとのイベントは碌に過ごした事がないのだ。畜生。

 代わりに、友人である新子憧となんかは色々イベントに行ったけど――。


智紀「じゃあ、本命にしてあげてもいいけど……?」

京太郎「そんな、後付ってのはちょっと……」

智紀「……そう。まあ、して欲しいって言われても困るけど」


 適度に笑って、書類に目を落とす。

 申し訳ないが、“これ”も――この時期を憂鬱にさせる原因の一つである。

 幸いにして、沢村智紀がいてくれる以上、かなり負担は減ったことになるんだけど……。


智紀「あ、雪」

京太郎「ホワイトバレンタインデーですか……」

智紀「それじゃあ、ホワイトデーと見分けがつかなくなる」

京太郎「……確かに」


京太郎「ところで智紀さん、雪の日の運転ってのは――」

智紀「……大丈夫」

京太郎「ですよね。長野だったら、雪は……」

智紀「ゲームでやった」

京太郎「ちょっとォ!?」

智紀「言い換えるなら……バーンアウトでやった」

京太郎「クラッシュさせる気満々じゃないですかソレェ!?」


 勿論、冗談……といつもどおりの平然とした顔で呟く沢村智紀。

 意外にお茶目であるが、実に心臓に悪い。

 ……あと、ホモネタとか。


 ◇ ◆ ◇


京太郎(……さて、この時期の憂鬱なもの)

京太郎(団体事務所に送られてくるチョコレートとレターメッセージだ)

京太郎(さすがにチョコレートは、色々問題があるので受け取るわけにはいかないけど……)

京太郎(その分、お便りにはちゃんと応えてあげたい)

京太郎(だから――送られてくるお便りを読んで、簡単なメッセージ付きで返すのが、このときの恒例行事なんだよな)

京太郎(正直、数が数だから一苦労だ)

京太郎(去年は――ギリギリ、ホワイトデーには間に合うかってぐらいだったし)


 収録の空き時間。

 短時間ながらも意識を集中させて、ダンボールに詰まれた手紙を読む。

 打ち出すのは沢村智紀にやってもらうし、半分ぐらい分担して内容を教えてもらうが――返信を考えるのは京太郎だ。

 無駄かもしれないし手間だと思う。相手に、京太郎が返していると思われないかもしれないとも知っている。

 だけど、一応、受け取れないし返せないので……せめて真心だけは返したい。


 なんて思って、去年は軽く後悔したが。

 今年は、智紀がいるので大丈夫だと思いたい。


京太郎「……」

数絵「……おはよう、京太郎」

京太郎「……」

京太郎(……『須賀プロはどうしてミンチになるんですか?』)

京太郎(知るか)

京太郎(『でも、そうなっても立ち上がる須賀プロを応援しています。受験でくじけそうになったときは、須賀プロのことを思い返します』)

京太郎(なるほど。高校受験か……大学受験か?)



数絵「……って、ああ、それですか」

数絵「じゃあこれ、ここに置いておきますので。あまり根を詰めないように」

数絵「あと、お祖父様がたまには顔を出して欲しいって」

京太郎「……」

京太郎(『どうしたら須賀プロみたいに強くなれますか? 最後の空手の大会で負けてしまいまして、残念です』)

京太郎(……おおう。これは、格闘技やってる娘か)

京太郎(うーん)

京太郎(殺されたり死んだりするつもりでやってたら、間合いの把握や見切りがうまくなるって教える訳にもいかないし……)



竜華「おはよう、京太郎君ー」

竜華「なあなあ、これ、バレンタインのチョコなんやけど……怜と一緒に――」

京太郎「……」

京太郎(『これは不幸の手紙だ。明日までに十通出さないと不幸になるぞ』)

京太郎(……不幸になるって言われてもなぁ)

京太郎(ただでさえ運は、ほかに比べて殆どないから――いっそもうちょっと不運になったほうが、使いやすかったりしないか?)

京太郎(まあいいや、これは無視しとこう。次)

京太郎(『あなたの闘牌は最高です。一日に十回は見直します』)

京太郎(うわ……お世辞だとしても嬉しいぞ、これ)



竜華「……って、集中してるんか」

竜華「あとで感想聞かせてなー。どっちのチョコがおいしかったとか」

竜華「うちの方を当てられたら、ハワイにプレゼント……とかゆーてみたりするかも?」

竜華「なーんてな」

京太郎(『いい気になってるんじゃねーぞ、ぼけ!』)

京太郎(……うーん、何が原因なんだ?)

京太郎(って、俺宛てじゃないのか……ビックリした。心臓に悪いぞ、これ)


京太郎(――っと、今、ここに置いとくって)

京太郎(チョコが3つか……)

京太郎(あとでお礼を言っておかないとな……あと、ホワイトデーのお返しも考えないと)

京太郎(カロリーの分、運動しなきゃいけないし……困ったな)

京太郎(さて、次行くか……)



やえ「……お、おはよう。京太郎」

やえ「一応だけど、これ、あんたに――」

京太郎「……」

やえ「――って、そういえばそうだったわね」

やえ「ま、頑張んなさいな。あと、本業忘れないこと」

京太郎(えっと……)

京太郎(『この手紙に入っている紙に、チョコの中の判子を押して元の住所に届けてね☆』)

京太郎(婚姻届……)

京太郎(すっげえ悪戯……ちょっと、背筋が寒くなるってコレ)


やえ「あ、ホワイトデーのお返しとかいらないから」

やえ「どうせなら――そうね。白星で返してくれると、いいんじゃないの?」

やえ「それが一番ってもんだし……まあ、お互いに一番嬉しいでしょ」

やえ「じゃ、後で」

京太郎(『この間、友人と打っていたらこんな状況になったのですが、須賀プロならどうしますか?』)

京太郎(うーん)

京太郎(場が見えたり、相手が見えたりしないと確定的な事はいえないし……どうすりゃいいんだ)

京太郎(とりあえず、セオリー。あとは考慮するとこと、打牌ミスについて触れとくか)

京太郎(頑張って欲しい――)


京太郎(――って、チョコの感想か? うーん)

京太郎(これは、ますます全部食べなきゃ駄目だな。いつの間にか、一つ増えてるし……)

京太郎(まあ、義理でも貰えるだけありがたいよな)

京太郎(陽介とか古市に言ったら、ブン殴られそうだよな。ははは)



菫「おはよう、京太郎」

菫「何なんだ、この雪は……ちょっと寒すぎるぞ」

菫「なんだ。暖房の温度が低いままじゃないか……上げるか?」

京太郎「……」

菫「あと、これ……すまん。ゴミ箱に捨ててもらってもいいだろうか?」

京太郎「……」

菫「――って、ああ。今それをやってるのか」

京太郎「……」

京太郎(……『実家暮らしがつらくて、バレンタインデーは女の子が渡す日なのにお母さんから貰います』)

京太郎(『一応渡す相手……というか配る相手はいますが、本命を渡す機会が生まれてこの方ありません』)

京太郎(『どうしたらいいでしょうか?』)

京太郎(……うーん。ヘビィすぎる)


菫「あと、これはチョコレートだが……その、我ながら旨いものを見繕ったつもりだ」

菫「正直バレンタインデーとは言え、ただで渡すのが惜しいんだが……お前はどう返してくれるんだ?」

菫「なあ、京太郎」

京太郎「――――白星で」

菫「――」

菫「はは、言うじゃないかオカルトスレイヤー。それでこそ、私の後輩だ」

菫「うんうん、いい心がけだ。チームメイトとして、実に頼りがいがあって嬉しい」

京太郎「……」

菫「……あ、ところで」

菫「弁当だけどお前はいらなかったよな?」

菫「……うん。いらないみたいだな」

菫「それじゃあ、頑張れよ。時間が空いたら、後で私も手伝ってやるからな」


京太郎(白星がお返しかぁ……なんとも、無茶な話だよな)

京太郎(まあ、そう言われたら――やる気を出さざるをえないって感じだけどさ)

京太郎(よし、頑張ろう!)



淡「~♪」

淡(我ながら、かーなーり、うまく出来ちゃいましたー!)

淡(テルとー、菫先輩とー、たかみ先輩とー、亦野先輩に渡すとしてー)

淡(して――――)

淡(……)

淡(あまりに美味く出来ちゃったし、なんていうか……その、美味く出来ちゃったから……)

淡(ついでに須賀なんかに食べさせて、ギャフンと言わせちゃおうかなーって!)

淡(あんまりにもおいしいから『もっと作ってー』とかー、感激して私の前に平伏しちゃうかもね!)

淡(なーんて!)


淡「こんにあわあわー」

淡「って、あれ、須賀しかいないの?」

京太郎「……」

淡「……」

京太郎「……」

淡「……」


淡「と、ところでさ……須賀。今日はなんの日か知ってるー?」

淡「なーんと今日は、ただでお菓子が貰える日なんだよね! ハロウィンと一緒でさ!」

淡「……」

京太郎「……」

淡「……で、でねっ」

淡「ここに、美味しそうなチョコレートがあるんだけど……須賀がどーしてもっていうなら、上げてもいいんだけどさっ」

淡「どうする――」

京太郎「――お願いします」


淡「――」

淡「――」

淡「――」


淡「そ、そっか……じゃ、じゃあコレを上げよう!」

淡「実はコレね、結構自信作で――」

京太郎「――ほいっと」 スリーポイント

淡「――」

淡「へ」

淡「えっ」

淡「えっ……」


淡「な、なんでゴミ箱に捨てちゃうの! いくら冗談にしたって、こんなの――」

京太郎「――いらないんで」

淡「――」



             7;;;;7;;;;;;/;;;;;;;;;;;;,;∥イ;;;;;;;ハ;;;;;;;;;;;;;;;i;;i;;i;;{;;;;;;;;;;;,X:::::ハ;;;;;;;ヘヘ;;;;;;;ハ;;;;;;;;_!
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             .{;;;{;;;;;;;{;;{;;;;;;;;;川;;;ハ;;;;;ヘ、:::ヘ;;;;;;;;;;;;'i;;i;;iY:::::::::::::::j::::}-‐ニ'二冂ニ;;、_!
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            .{;;;;;;{;;;;;;;;ハ;;;;;;;;;;{川-‐ヘ::{‐、、;::::::ヘ\;;;;;゛、ヘ"〃フ¨V//´ .,、 `V `ゝ} !
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: :ヽ    \ : :!丶   ̄     Vイ:ハ |\:i       ;'⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ 、_
.: : 丶    \゙、        `> リ  `      /
ヽ: : :`┬ 、  ヾ          /       o  (  さっきからなんか寒いと思ったら暖房の温度か……
  i: ;ィノ          ,....-ィ /        O  )
,,:‐レリ    _       ̄ /            (  我ながら今のシュートは綺麗に決まったな。ちょっとはモモを見返せるかも
゛=!_    \ `ー-、_  _/             )
::::::゛== 、 \   / ̄ヽ、              (  飯は……こういうとこの店屋物って、ちょっとカロリーのバランスがな……
::::::::::::::::::::::゛===-、    >             )
                             ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒~


照「……こんにちは。京ちゃん、いる?」

京太郎「……」

淡「ううっ、ぐすっ、ひぐっ……」

照「……」

京太郎「……」

京太郎(『いやー、年下の子ってどこまでが守備範囲なんだろうかねぃ』)

京太郎(『ちょっと、年下の子でいいなーって思う子がいるんだけど……変にがっついてると思われたらアレなんだよねぃ』)

京太郎(『そこらへんわっかんねーから、よければ須賀プロの意見を参考までに聞かせてくれない?』)

京太郎(俺の意見かぁ……)

淡「……あ」

照「……」


照「……淡?」

淡「て、テルー!?」

照「どうしたの……一体、何があったの……?」

淡「な、なんでもない! なんでもないよ、テルー!」

照「……だって、淡、泣いて」

淡「ち、違うよ? これはその、あの、ちょっと寒くてくしゃみが出ちゃっただけで――」

照「――ゴミ箱」

淡「へっ」

照「……大体判った。淡は下がってて」

淡「違っ、テル、これは――」


京太郎(『口下手で、いっつも怒ってると思われちゃうせいで中々異性と話ができないんだけど、どうしたらいいんだろう』)

京太郎(『やっぱり、明るくおしゃべりできるほうが一緒にいて楽しいよね? でも、どうしても緊張しちゃって……』)

京太郎(『須賀プロは、そういう女のことをどう思うのか教えてください。異性の意見が欲しいです』)

京太郎(俺の意見……うーん。聞いてきてくれるんだし、相談に乗ってあげたいよな)

照「……京ちゃん」

照「いくら京ちゃんでも……許せることと、許せないことがある」

照「でも……本当に、淡の言うとおり誤解があったのかもしれないから……」

照「申し開きがあるなら……聞くから」

照「答えて」


京太郎(――って、美味しそうなチョコレートか)

京太郎(うーん。チョコレートはもうお腹いっぱいだけど……もらえるなら欲しいよなぁ)

京太郎(それにしても、やっぱり社会人になると数とかすごい増えるのな……って、大学生のころからそうだったっけ)


京太郎「――チョコください」

照「――」

京太郎「どうしても、ください」


照「……そう。判った」

照「雪の結晶――ちょうどいいか。回すのが完全球じゃないけど……」

照「……チョコ、いくつ欲しい? 甘いの二つ? それとも三つ?」

照「いいや――」


京太郎「……あれ?」

京太郎「照さんに大星、どうしてこんなところに?」

京太郎「すみません、気づかなくて……とにかく手紙が馬鹿みたいに多くて、去年とか一万通とか着ちゃったんで集中してて」

京太郎「今、お茶入れますね」

照「――バレンタインデーというのは、聖ウァレンティヌスが恋人たちを結びつけて、代わりに礫を受けて死んだ日が元になっている」

京太郎「え?」

京太郎「何の話ですか? っていうか大星、お前どうしたんだ!?」

京太郎「何かあった――」



照「――――あげるのは1000個。京ちゃんは磔刑だ」


京太郎「へ?」








京太郎「ヤッダァァァアバァァァァアァァァァア――――――――!?」


 ドゥゥゥゥゥ――――――z_______ン!!!


                                   リタイヤ
 須賀京太郎『オカルトスレイヤー』――→『再起不能』 『しばらくチョコとか見たくない』





※おまけ※


憧「よ、よし……今年こそはうまくいったわ。手作りチョコ」

憧「学生のときはなんだかんだと理由をつけて、出来合いのものしか渡せなかったけど――」

憧「――うん、絶対美味しく出来た。美味しいはずだから!」

憧「……」

憧「……よし」

憧「しずと京太郎は……ちゃんと、わだかまりが解けたみたいだし……こっから、あたしが参加しても公平よね?」

憧「……うん。こんなチャンス、絶対逃がさないから!」

憧「……」

憧「……そろそろ、届いてるかな? 京太郎のとこに」

憧「うん……多分、大丈夫なはず。で、あいつだったらきっともう食べてくれてる」

憧「……」

憧「……よし、電話するわよ」

憧「自信作だから、感想言って欲しいし……電話越しはちょっと駄目かもだけど、こんな機会だから押していかないと……!」


憧「も、もしもし……京太郎? その、チョコなんだけど――」

京太郎『……ああ、憧か。悪いんだけどさ』

憧「えっ、な、なに……?」

京太郎『……なんか、チョコを見ると震えが止まらなくて。お前から貰ったチョコ、まだ、食べれてないんだ』

憧「――」

憧「――」

憧「――」

京太郎『なんか……その、ごめんな……?』

憧「――」

憧「い、いいのよ別に! ど、どうせほら義理だし!」

憧「あんたも社会人付き合いとかで貰う機会が多いもんね? あー、そりゃ、飽きちゃうかー」

憧「ここは、甘いもの以外にしておいた方がよかった? あはは、あははは」

京太郎『……いや、ホント悪い。ごめんな』

京太郎『でも俺、ちゃんと食べるから……ちょっと感想待っててくれるか?』

憧「いーわよ、別に。どうせ義理なんだからさ。うんうん」

憧「無理しないでいいって! あんたの体が一番だし……ほら、無理に食べてくれても困るだけだからね? どうせ義理なんだし」

憧「だから、変に気を使わなくていいから! それじゃ!」


京太郎『あ、おい、憧――』

憧「じゃあね! ホワイトデーのお返しとか、いらないから!」

京太郎『ちょ、おい――』

憧「あ、ごめん! ちょっと生徒に呼び出されちゃったから! それじゃ!」

京太郎『なあ、憧――――』 ブツッ


憧「……」

憧「……」

憧「……」

憧「……あぁぁぁぁ、またやっちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁ」

憧「……」

憧「……」

憧「……」

憧「……はぁ」

憧「……」

憧「……」

憧「……」

憧「しずに、何を送ったか聞きにいって……ついでにチョコでも食べあおうっと」



※RESULT※

高鴨穏乃――→『京太郎が好きだった柚子系の和菓子を送る』

鷺森灼――→『ちくわ明太子を送る』『痛まないかちょっと心配だった』

新子憧――→『今年もまた義理チョコって言ってしまった』『来年こそはちゃんと言いたい』

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最終更新:2014年04月05日 19:39