【彼女いるのに、同窓会に行って初恋の女の子と出会ったら、
 これもしかしたらワンチャンあるんじゃね……って思ってしまうのはなんなんだろうねあれ】

略して

【彼に同行、女の子……って、なんなんだろう】




菫「……ふう」

菫「思ったより手間がかかった」

菫「誰かが『外で飲むとかダル……』なんて言い出さなきゃな」

白望「……誰だろうね」

菫「お前なぁ……!」


智葉「……落ち着け」

智葉「それで決まったんだから、仕方ないんじゃないか」

菫「……あー」

菫「判るさ。判るよ。判るとも」

菫「でもな……」

智葉「……」


智葉「『当てにしてた須賀が来ないから、思ったよりも大変だった』と」

菫「……そうなんだよ」

智葉「……」

智葉「……はぁ」

智葉「なあ、弘世」

智葉「あいつはああも色々できるが、年下の後輩だろ」

智葉「先輩が頼ってどうする?」

菫「ぐ……」

菫「言われなくても判ってる」

菫「ただ、こういうオフのときなら……ちょっとぐらいはいいんじゃないか?」

菫「別に、深刻に頼るわけじゃないんだから」

智葉「……」


智葉「仕事で頼るのは、仕事である以上必要だが……」

智葉「こういうオフの日ほど、アイツを休ませてやろうと思わないのか?」

菫「……」

菫「半分は思うが、もう半分は違うな」

菫「須賀は手を抜くのが壊滅的に下手だ」

菫「仕事で頼ったら、それこそどうなるか知れたものじゃない」


智葉「そこはアイツも、プロだろ」

智葉「アイツの責任じゃないのか?」

菫「……いいや」

菫「仮にそうだとしても、違うな」

菫「倒れると判ってる病人を、むざむざ見過ごす方がおかしい」

菫「それよりは……実をとるべきだ」

菫「私はそう思う」


智葉「……」

菫「……」

智葉「お前とは、意見が合わないな」

菫「それは私の台詞だ」


白望(……この二人)

白望(似てるようで違うし、違うようで似てるな……)

白望(どっちにしても、京太郎を可愛い後輩だと思ってる)

白望(……)

白望(仲良さそうで意見が合わないし、仲悪そうで変なぐらい同じ意見になる)

白望(凸凹コンビなんだよなぁ)

白望(……)

白望(私を入れて、トリオって考えるのはやめてほしいけど)


白望(……お)

白望(京太郎からメールだ)

白望(『ちょっと遅れるけど、行きます』)

白望(『シロさんはハーゲンダッツ何味がいいですか?』)

白望(……)

白望(ういやつ)

白望(『京太郎が食べさせてくれるなら、なんでもいいよ。今日は苺の気分』)

白望(送信……っと)


和「弘世元部長も、辻垣内先輩も落ち着いてください」

和「それよりは、早く準備を進めましょう」

智葉「……そうだな」

菫「楽しい、同窓会だからな」

智葉「やるぞ」

菫「判ってる」


白望(後輩に怒られてる)

白望(……ん、何々?)

白望(『食べさせろって……』)

白望(『そんなだらしないこと言うと、口移しで食べさせますよ?』)

白望(……)

白望(ういやつ)

白望(反撃のつもりなんだろうなぁ)

白望(京太郎……可愛いやつめ)

白望(そんなこと言っても、逆効果なんだけどな。これは判ってない)

白望(『いいよ』)

白望(『久しぶりに京太郎の味も楽しみたいから、ちょうどいい』)

白望(送信)


和「ほら、小瀬川先輩も……」

和「携帯電話を弄ってないで、お願いします」

白望「……」

白望「場所提供ってことじゃ、駄目……?」

和「駄目ですね」

和「ほら、立ってください」

白望「ダルいなぁ……」



菫「まて、〆はうどんだろう」

智葉「雑炊に決まってる」

菫「いいや、うどんだね!」

智葉「悪いが江戸っ子はうどんなんて小麦粉だけのものは好かない」

菫「お前、香川県を馬鹿にしたな?」

智葉「うどんでダムを干上がらせる連中がどうしたんだ?」

菫「殺されるぞ」

智葉「返り討ちだ。江戸っ子を嘗めるな」

和「……待ってください」


和「鍋なんですか?」

和「夏なのに?」

菫「なーに、冷房を最大限に使えばいい」

菫「白望の奴、相当いいものを持ってるしな」

智葉「夏に鍋を囲むのも……乙で、粋じゃないか?」

智葉「冷房はなくても構わんがな」

和「……」

和「……地球温暖化って言葉、ご存知ですか?」


白望(『そんな人聞きの悪いこと、言わんでください!』)

白望(『一体いつ、俺とあなたはそんな関係になりましたか!』)

白望(『この間も、あのあと大変だったんですよ!』)

白望(……)

白望(ういやつ。何度目かわからないけど、ういやつ)

白望(近くにいたら、押し倒してた)

白望(『間接キスで、京太郎の味は知ってる』)

白望(『京太郎エキスが不足してる。注いで欲しい』)

白望(『濃いの、頂戴』)

白望(送信)



菫「まあいい」

菫「酒はちゃんと買ってあるよな?」

智葉「飲み会で、忘れるわけないだろう」

智葉「ああ、弱いお前はあんまり飲まないでいいからな」

菫「……むっ」

菫「私は、弱くないだろう」

菫「私は普通で、お前が異常に強いだけだ!」

智葉「……やれやれ。甘いな、弘世」

智葉「麻雀プロなんだ。一升飲もうが普段通り打てなくてどうする」

菫「いや、それはおかしいだろ」

菫「……明らかに異常だろ、どう考えても」

智葉「須賀はやっていたけどな」

菫「……」

菫「なにやってるんだ、アイツ」

智葉「それは……」

智葉「私もそう思う」


白望(『俺が悪かったですから、やめてください』)

白望(……)

白望(慌てている京太郎が目に浮かぶ)

白望(やはり、ういやつ)

白望(……)

白望(いかんなぁ)

白望(京太郎が可愛すぎるから、駄目だと思ってもやりすぎちゃうな)

白望(天性の誘い受けなんだ……京太郎は)

白望(『ごめん』)

白望(『京太郎が可愛いすぎたからやりすぎた』)

白望(送信)



憧「お邪魔しまーす……と」

憧「遅れたけど、まだ始まってないよね」

菫「お、いいところに来たな」

憧「……あ、菫部長」

菫「元部長だよ」

菫「まだ準備中なんだ。手伝ってくれ」

憧「了解でーす」


憧「あ、これはお土産です」

菫「相変わらず、気が利くな」

憧「いえいえ、そんなー」

菫「いや、できる後輩を持って私も嬉しいよ……ホント」

菫(大星とチェンジして欲しいくらいだ)


菫「ところで……」

菫「須賀は一緒じゃないのか?」

憧「ふきゅっ」

憧「なな、なんで……!?」

菫「なんでって、そりゃあ……学生の頃、ずっと一緒にいただろ?」

菫「私はてっきり――」

菫「ひでぶっ」

智葉「――悪いな。手が滑った」


菫「なにするんだ、お前……!」

智葉「……お前が悪い。そこにいたことも含めてな」


憧「あ、和」

憧「元気? あと、また綺麗になってる」

和「ありがとうございます、そういう憧も元気そうで……また美人になりました?」

和「最近、そちらはどうですか?」

憧「あたしの方はまあ、ぼちぼち」

憧「大人になって判るけどさ、やっぱ学生って実際スゴイわね」

憧「圧倒されるわ……若さに」

和「……自分も若いでしょう」

憧「いやー、まあそれでもやっぱり歳の差感じるわよ」

憧「そっちは仕事どう?」

和「やりがいはありますね。やはり、勝負ですから勝つと嬉しいですよ」

和「こちらの想定した落とし処に落ち着かせたときなんて、それはもう……」

憧「負けず嫌いなのは知ってたけど、アグレッシブね……」


憧「……ところでさ」

和「なんでしょうか」

憧「京太郎の奴、どう……?」

和「連絡、とってないんですか?」

憧「んー……まあ」

憧「あいつ、忙しそうだから……さ」

和「……」

和「私も、そう思って連絡をとっていませんが……」

憧「……でも、会う機会あったんでしょ?」

和「ええ、はい」

和「染谷先輩のところで、麻雀教室をしていて……」

和「……」

和「あれ? どうして私が、麻雀教室に顔を出したって……」

憧「うぐ」

憧「そ、それはあれよ!」

憧「和なら、そういう機会には同窓会ついで……みたいに顔を出すかな、って!」

和「……ああ、なるほど」


菫「おい、何故私が殴られなきゃいけないんだ……!」

智葉「……そういうところだ、そういう」

菫「ちゃんと理由を言え……!」

智葉「……。……駄目だな、こりゃ」


白望(『可愛いって言われて、喜ぶ男はいません』)

白望(……ういやつ。ちょっと不貞腐れてる京太郎が目に浮かぶ)

白望(なら……)

白望(『うん、かっこよくもなった。学生の頃よりも、もっと』)

白望(『早く生で見たい。生、楽しみでしょうがない』)



和「そうですね……」

憧「……う、うん」

和「元気そうでしたよ。子供たちになつかれて、楽しそうでした」

憧「ふ、ふーん」

憧「……そ、それで?」

和「えっ」

憧「えっ」

和「それぐらいですが……」

憧「えっ」

憧「いや、もっと他にあるでしょ!」

憧「かっこよくなったとか! 麻雀強くなったとか! 最近の生活どうかとか!」

和「は、はあ……」


和「顔は……そうですね」

和「正直、見慣れてしまったのでなんとも思わないです」

和「近況についても、特には……」

憧「ああ……はい」

憧(そういえば、和はこういうところドライだったわ……)

和「麻雀は……強くなってましたね。昔よりも、もっと」

憧「今戦って、勝てる?」

和「場合によりますが……」

和「トータルなら、確実に須賀くんが上かと」

憧「そっかぁ……」

憧「……頑張ってるんだ、京太郎」

和「それと……」

憧「なになに!?」


和「――小学生から、キスされていましたね」


憧「――」

和「麻雀で、須賀くんが勝ったんですが……」

憧「――」

和「その勝ち方が、あまりに劇的だったので……」

憧「――」

和「どうやら、魅せられてしまったみたいですね」

憧「――」

和「私から見ても、あれは素晴らしかったです」

憧「――」

和「やはりプロとなったら違うし、須賀くんも強くなったんだな……と」

和「彼と友人であることを、本当に誇らしく思います」

和「……」

和「……聞いてますか?」



智葉「真面目なのに肝心なところで気が回らない」

智葉「自立してそうでどこか子供っぽい」

智葉「ところどころ残念な奴かと思えば、自分で抱え込んで一人で解決しようとする」

智葉「そんなお前に察しろってのが、無理だった」

智葉「すまん」

菫「……お前に言われたくないな」

菫「真面目そうで、ところどころ呑気で」

菫「気さくかと思えば、やけに気難しく厳しいところがある」

菫「飄々とした風に見えて、内面色々青臭い」

菫「それに――」


菫「生まれ持った贈り物を、自らの手でフイにするようなお前に……!」


智葉「黙ってろ、PAD長」

白望「負けるな、PAD長」

智葉「めげるな、PAD長」

白望「泣かないで、PAD長」

菫「お前ら――――――ッ!」


白望(『俺も、シロさんに会いたくて仕方なかったです』)

白望(『早く、シロさんのところに行きたいですよ』)

白望(――)

白望(えっ)

白望(いや、えっ)

白望(えっ)

白望(……)

白望(落ち着け、私)

白望(京太郎はこっからスカすのが得意技だ。須賀だけに)

白望(ん)

白望(……続きが来た)


白望(『シロさんが野垂れ死んでないか、心配で心配でならねーんすよね(笑)』)

白望(『あれだけ掃除したのが、今どうなってるのか気になって気になって……』)

白望(『それに今、大星の奴に付きまとわれてて……(苦笑)』)

白望(『なーんて。どうです? 前のメールに引っかかりました?』)

白望(……やっぱり、こうなるか)

白望(……)

白望(……ん?)

白望(『でも……』)

白望(『シロさんに会いたいのは本当ですし、元気にしてるか心配なのも本当です』)

白望(――)


白望(……やられた。京太郎め)



憧(え? え? え?)

憧(キスって、えっ!?)

憧(えっ、小学生と京太郎がキス?)

憧(あはは、どうせ頬っぺたかなんかにだよね)

憧(ノーカン、ノーカン)

憧(さすがに口はあり得ないって。小学生だしさ!)

憧(うんうん。そうに決まってるでしょ! うん!)

憧(……)

憧(でも京太郎、かっこいいし……優しいし……)

憧(最近の小学生は進んでるって聞くから……)

憧(し、舌……入れちゃったりして)

憧(京太郎の首に腕を回して、髪の毛撫でながら……)

憧(貪るように、何度も唾液を送りながら……舌を絡めて……)


憧(~~~~~~~~~~~~~~~~!?)


憧(あ、あたし今なに考えてたの!?)

憧(の、ノーカン! ノーカン!)

憧(や、やだもう……なんて想像してるのよ……)

憧(な、なんか映像浮かんだし……)

憧(それに、か、感触まできたし……)

憧(ふきゅっ)


憧(あたし、こんなにスケベじゃないわよ!)

憧(こ、これはあんまりにも衝撃的だったから……仕方なく……)

憧(小学生とキスとか聞いたら、誰でも驚くってば……!)

憧(もう……)

憧(……)

憧(それにしても、やけにリアルな感じだったぁ……)

憧(……いや、やったことないけど)

憧(ないよね?)


和「あの……そこまで考え込まなくても」

和「キスと言っても、頬っぺたでしたし」

和「須賀くんも、大人としてあしらい方はわかってるでしょうから……」

憧「……」

和「……憧?」

憧「ぅひゃい!?」

和「……大丈夫ですか?」

憧「大丈夫、大丈夫! 今日は大丈夫だから!」

和「……今日は?」

憧「ふゅぇ」



菫「ところで、仁美の奴は?」

智葉「ああ、遅れてくるって」

菫「そうか」

菫「あいつも……25歳で最年少市長だもんな」

菫「正直、就職活動でひーこら言ってたのを考えると、信じられない」

智葉「ああ」

智葉「須賀に愚痴を溢してたな」


智葉「『日銀のインフレ警戒は度が過ぎてる』」

智葉「『多少インフレ傾向だった方が経済はよく回る』」

智葉「『将来への希望が生まれるから、生活にも活気が生まれる』」

智葉「『成長するって判ってれば、企業の海外投資も減る』」

智葉「『つまり私が就職できないのはなんもかんも政治が悪い』」


菫「……懐かしいな」

智葉「ツッコミどころも多いけどな」

菫「そうなのか?」

智葉「色々おいといて……儲かったからって、企業が即座に還元はしないだろうな」

智葉「政治でできる対策は、たかが知れてる」

菫「流石、経済学部だな」

白望「……どやぁ」

菫「お前を褒めてはいない」

白望「どやぁ」

菫「胸を強調するのはやめろ! 当て付けのつもりか!」

菫「……市長か」

菫「忙しいんだろうな、色々」

智葉「……私がいる場に、呼んでもよかったのか?」

智葉「市長と、黒い繋がりだの……噂されなきゃいいんだけどな」

菫「……辻垣内」

菫「私たちは仲間だ。それ以上でも、以下でもない」

菫「そういう言い方は、よせ」

智葉「……そうだな」

智葉「私らしく、なかったか」

菫「ああ」

菫「お前がプロとしてやれてる時点で、そこらへんは大丈夫だろ」

智葉「……そうだな」


菫「もしも……」

菫「私たちの友人関係に……」

菫「ハイエナじみた外野風情がどーのこーの言うなら、叩き潰す」

菫「物理的にも、社会的にもな」

菫「それだけの話だ」

智葉「……」

智葉「ときどき、頼りになるな。弘世は」

菫「そりゃあ……曲者だらけの麻雀部で、仮にも部長だったからな」


白望「よ、PAD長」

智葉「かっこいいぞ、PAD長」

白望「やるときゃやる、PAD長」

智葉「たまにはクールな、PAD長」

菫「いい加減にしろォ――――!」



憧「仲いいわね、あの人たち」

和「本当……相変わらずですね」

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最終更新:2013年10月07日 11:10